お住まい拝見
2017年9月29日更新
海と共存 島の暮らし|(株)クレールアーキラボ
[お住まい拝見・[宮古島編③]壁でガード 台風対策も重視]池間島に移住して約15年。ことし、惚れ込んだこの島に家を建てたMさん。LDKは水平線まで見渡せ、それ以外の空間は外壁でガード。眺望と共に台風対策も重視した。
海を望むMさん宅。眺望にこだわり、敷地の一番高い場所に家を建てた。掃き出し窓の内側がLDK。台風対策のため、この掃き出し窓にはアルミ製の雨戸を設置している
停電への備えも
Mさん宅
RC造/自由設計/夫婦+猫
紺碧の海、流れる雲、生命力あふれる緑。Mさん宅のLDKから180度広がる島の風景だ。
キッチンに立っているときも、ダイニングで食事をするときも、リビングで愛猫とくつろぐときも。惚れ込んだ景色がそばにある幸せを、「いくら見ていても飽きない」とかみ締める。
夫妻は15年ほど前に池間島に移住。漁師を生業としてきた。借家に住んでいたが、念願だった海と接する土地を購入。「デザイン性が私たち好みだった」建築士に、眺望を堪能できる家を要望した。
眺望と同等に重視したのが、台風対策。「今まで、何度も大きな台風を経験したから。暴風で窓ガラスがたわんだり、停電で復旧に3日以上かかったこともあった」と話す。
LDKの掃き出し窓に雨戸を設けたのはもちろん、非常時用の自家発電機も設置した。「冷蔵庫と寝室のクーラー、トイレは停電しても自家発電から電力を確保できるようにしている」。島で暮らす喜びと覚悟を新居に詰め込んだ。
LDKが特等席。伊良部島や伊良部大橋も見える。季節によっては水平線に沈むサンセットを見ることができるそう
リビング・ダイニングと作業場の間にある夫人の書斎。収納の一部をデスクとして活用している。奥の扉は寝室へ続く/写真左。愛猫用の入り口を設けたトイレ。「以前は猫用トイレを室内に置いていたので臭いが気になった。今は快適」と語る/写真右
外から直接浴室へ
海に面したLDKが表座なら、寝室や仕事道具が並ぶ作業場、浴室などは裏座。裏座へは駐車場から直接出入りできる。室内を汚すことなく砂や潮を洗い流せ、道具を片付けられる。「駐車場や物干し場は四方が壁で囲まれているので、雨天時にも活用できて助かっている」。壁で閉じた造りは、洗濯物や車の塩害対策にもなっている。
Mさん宅のキーワードは「海」。海がもたらす苦楽すべてを受け止める、おおらかさを感じた。
ここがポイント
駐車場や倉庫の壁
台風時には家守る
宮古島の美しい海に面した約240坪もの土地。景色を遮る建物もない。「素晴らしい立地だが、かなり厳しい環境でもある」と、Mさん宅を手掛けた建築士・クレールアーキラボの畠山武史さんは話す。
眺望を堪能するには「開いた家」に、台風や塩害の影響を抑えるには「閉じた家」にするのが基本。畠山さんは、その両方をMさん宅に落としこんだ。
「開いた」のは、暮らしの中心部であるLDK。「広い敷地の中で、一番高い場所に建物を置いた。さらにその中でも、最も景色のいい場所にLDKを持ってきた」ことで、だんらんを絶景で彩る。LDKの大開口部には雨戸を設置し、台風に備える。
「閉じた」のは、寝室や作業場、浴室など。「作業場や浴室は、台風の影響を受けにくくすることに加え、外部からの出入りを考えて海と反対側に配している」。
建物の周囲に半屋外空間を配置したのも、台風対策を考えてのこと。「駐車場や物干し場、倉庫などは普段の利便性を考えて壁で囲った。この壁でぐるりと建物を囲むことで台風時には家を守る機能も併せ持つ」。台風時は、雨戸と駐車場入り口に設置した防風スクリーンを下ろせば、家全体を閉じることができる。
「総工事費用における台風対策のためのコストバランスも考慮した」結果の設計となった。
外観正面。大きく開いた空間はこの面だけ。残り三方は壁で囲まれている。駐車場(写真左側)の上部にある防風スクリーンとLDKの雨戸を閉じれは、家全体を閉じることができる
対面式のアイランドキッチン。オープンな造りだが、収納でしっかり手元を隠しているから、スッキリして見える
作業場には、漁師をするMさんの仕事道具を置いている。室内を通らず、物干し場から直接出入りすることができる
作業場の外にある物干し場。晴雨問わず洗濯物が干せるよう設けられた壁が、台風時には家を守る
[DATA]
家族構成 :夫婦、愛猫
敷地面積 :790.351平方メートル(約239.08坪)
1階床面積:140.30平方メートル(約42.44坪)
建ぺい率 :24.36%(許容70%)
容 積 率:17.75%(許容200%)
用途地域 :無指定
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計 :(株)クレールアーキラボ 畠山武史
構 造 :(有)建築設計 庵
施 工 :(株)久仲工建
電 気 :東光電気(株)
水 道 :(有)松宮開発
[問い合わせ]
(株)クレールアーキラボ
098-955-1823
http://www.clairarchilab.com/
写真/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1656号・2017年9月29日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。