9月1日は防災の日「家を見直す」|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

巻頭特集・企画

2017年9月1日更新

9月1日は防災の日「家を見直す」

地震や台風、土砂崩れなど、いつ、どこで起きるか分からない災害。9月1日の「防災の日」を機会に、いま一度、家族で防災について話し合い、わが家を見直してみよう。

9月1日は防災の日
防災の日を機に、わが家を見直してみよう。家を支える地盤を調べることで、起こる恐れのある災害リスクを知ることができる。また、県による簡易診断で耐震性をチェックしたり、大きな被害を防ぐためのセルフチェックも有効だ。
 

地盤を見直す

危険は足元に潜む 把握と対策を




地盤安心マップ®で豊崎の地歴をチェック
地盤ネットが提供する「地盤安心マップ®」は、住所を入力すれば、その場所の約35年前の航空写真や約80年前の旧版地形図などを見ることができる。写真は豊見城市豊崎周辺。上は現在、右は1974年~78年ごろ。写真左側は埋立地であることが分かる。埋立地は地震が起きた時に揺れやすいほか、浸水や液状化にも注意が必要


まずウェブで調べる

災害に負けない家づくりにも、今住んでいる場所がどんな災害に弱いかを把握するにも、肝になるのは足元の地盤を知ること。
地盤の調査や解析をする地盤ネット沖縄中央店の羽地万寿雄さんは、「地震が起こったときの揺れやすさ、土砂災害が発生する恐れなどは地盤を調べれば分かる。知れば防災に生かすことができる」と力を込める。
地盤を見極めるポイントは、「①強度(どれだけの重さに耐えられるか)②土質③土地の成り立ち④地歴(表参考)」と語るのは同社の宮里寿巳さん。
 

地盤を見極める四つのポイント
地盤の強度 その土地がどれだけの重量を支えられるか(地耐力)。
地盤の土質 住宅が沈んだり、傾いたりしないかどうか判断するカギ。砂質だと液状化、粘土質だと圧密沈下が起こりやすいなど、土質で検討すべき現象が変わる。
地盤の成り立ち 一般的に低地や川や池の周辺は、流されてきた砂や泥などが堆積してできた地層で軟弱であることが多いなど、地形ごとに地盤の特徴がある。
地歴 過去にどのような地盤であったか、土地の歴史のこと。現在は宅地でも昔は水田・川・池だった地盤は軟弱である。
参考/地盤安心住宅をつくる方法(エクスナレッジ発行)


これらは、ウェブでも調べられる。地盤ネットが提供する無料の「地盤安心マップ®」は、住所を入力すれば、その場所に潜む災害リスクや地歴などが分かる=上写真。独立行政法人・産業技術総合研究所の「地質図Navi」は、土質も知ることができる。
宮里さんは「地盤安心マップ R は、昔の航空写真を見ることもできる。今は宅地として整備されている土地も、以前は川や水田だったりする場合は、地震のときに揺れやすかったり、液状化などの危険が高い」と話す。

詳細は現場調査で

ただし、ウェブの情報では住んでいる場所の地盤情報をピンポイントで知るのは難しい。詳細に知りたい場合は、現場での地盤調査が必要。基本的に家を建てる際は、地盤調査が必須。
最近、注目を集めている地盤調査がある。地盤ネットが提供を開始した「微動探査」だ。土を掘ることなく、置くだけで地震発生時の、その場所の地盤の揺れやすさを評価する。
羽地さんは「家を建てる前、土地を購入するときに地盤の良しあしを考慮してほしい」と話す。
すでに家が建っていても、地盤を知ることには大きな意味がある。「土砂災害リスクが高いなら、早めに自主避難をする。地震時に揺れやすいことが分かったなら、耐震補強をするなどの手もある」と呼びかけた。
 

現場で行う地盤調査

現場で行う地盤調査には、大きく二つの方法がある。ボーリング調査とスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)だ。羽地さんは、「一般の一戸建て住宅なら安価で手軽なSWS試験で十分」と話す。


また、最近注目を集めているのが「微動探査」だ。ことし4月にNHKで取り上げられ、話題となった。同機器=写真=は、川の流れなど体感できないほどわずかに振動している地盤の動き(微動)を高精度で観測。調査地点の地震による揺れやすさなどが正確に分かる。本土では9月から同機器による一般向けの調査が始まったが沖縄ではまだ未定。羽地さんは「既存の公共施設などの耐震化の促進検討材料にも有効。だが費用もかかるので、できれば行政の力も借りたい」と語った。微動探査の問い合わせは地盤ネット沖縄中央店(電話=098-833-5601)。
 



簡易診断の様子。小型ハンマーや打診棒を使って壁や柱、軒下、窓周りをチェックしたり=下写真、クラックスケールでひび割れ幅を計測=上写真。所要時間は半日~2日。鉄筋コンクリート造の本格的な耐震診断が4カ月で約90万円であることを考えると経済的負担も少ない

 

建物を見直す

わが家の耐震状況 簡易診断

築36年以上は注意

住まいの防災対策を考えるには、まずわが家の耐震状況を知ることから。その際、判断材料の一つになるのが建築基準法が改正された1981年6月より前に建てられた旧耐震基準の建物かどうかだ。旧耐震基準の建物は大規模地震で倒壊するおそれがあり、県の耐震改修促進計画では、「耐震診断を実施し、耐震性が不足するものについて耐震改修・建て替え等を進めることが必要」とする。戸建て・共同住宅を含む県内住宅約54万戸のうち4分の1の約14万戸は耐震診断が必要と推測されている=円グラフ。

2013年の住宅・土地統計調査によると総戸数約54万戸に対し、1981年以前の住宅は約14万戸(外円赤部)。そのうち耐震診断によって「耐震性なし」と判断される住宅は8万戸余(内円赤部)と推測されるという。(沖縄県耐震改修促進計画より)

そこで活用したいのが、県が実施する住まいの「簡易診断」だ。これは簡易診断技術者(県主催の技術者講習会を終了した1級、2級建築士)が、住宅の形やコンクリートの劣化状況を目視で調査し、おおよその耐震性を診断するもの。「危険性は低い」「耐震性にやや疑問あり」「危険性が高い」の3段階で評価。所有者へその結果を報告する=上表。対象は1981年5月以前に着工された住宅。

費用は1万円

県土木建築部建築指導課指導班の上地賢主任技師は「今年で2年目。募集開始時期は調整中だがすでに問い合わせがあり、関心が広がりつつあると感じる。簡易診断でわが家の耐震状況を知り、本格的な耐震診断調査に進んだ方がいいのか、建て替えを計画するかの検討に生かしてほしい」と呼びかける。
昨年は100件以上の問い合わせがあり45件に実施。「耐震性にやや疑問あり」が43件、「危険性が高い」住宅はなかった。アンケートでは「思ったより詳しい調査で建物の状態が分かり、補修計画を検討できる」「問題点がどこにあるのかよく分かった」などの声が寄せられ、回答者すべてが簡易診断を受けて「大変良かった・良かった」と回答した。
国の補助事業を活用しているため所有者負担は1万円(税別)で、50件に達し次第締め切る。詳細は下記へ。

参考資料/沖縄県土木建築部建築指導課、NPO沖縄県建築設計サポートセンター「住まいの簡易診断を行います」


◆募集条件 以下の全てを満たすこと。
①1981年5月31日以前に着工された住宅。
②構造は鉄筋コンクリート造、補強 コンクリートブロック造(以下CB)、鉄骨造。
③規模は3階建て延べ床面積300㎡以下。CBは2階建て
④建物の所在地は沖縄県内。
⑤簡易診断の申請者は診断を実施する住宅の所有者。

◆申し込み・問い合わせ
県建築設計サポートセンター
098-879-1020(平日9時~17時)まで


 

自分で見直す

早めの補修で躯体の耐力維持

地震や風水害などが起きたとき、身を守ってくれる建物。既存住宅現況検査技術者の資格を持つ、アーキテクトラボ・ハロームの新里尚次郎さんに、建物の劣化を見逃さないためのセルフチェックポイントを聞いた。

「建物の劣化が軽いうちに補修しておくことで、地震などから身を守るための強度を維持できる」と話す新里尚次郎さんは、「劣化を見落とさないためにも、日ごろからセルフチェックを」と呼び掛ける。
その際、ポイントとなるのは「建物の骨組みに水分を浸入させないこと」。鉄筋コンクリート造(RC造)であれば、水分が内部の鉄筋のさびやコンクリートの中性化の要因に、木造であれば木材の腐食などの要因になるためだ。設計時の構造計算で問題がなくても、劣化が進むと地震の揺れに建物が耐えられなくなり、大きな被害へとつながる。
例えば、RC造の場合、水分が浸入する要因として、まず挙げられるのが外壁の「ひび」。窓枠や建具の四隅など、角部分に起こりやすい。コンクリートが剥がれ落ちて鉄筋がむき出しになっているような部分はもちろんだが、小さなひびでも水は浸入する。
特に台風の多い沖縄では、強風が塩分を含んだ雨水をひびの奥へと押し込んでいき、鉄筋のさびや塗装の劣化も早めてしまう。「劣化予防のため、台風後には必ず真水で水洗いをして」。
補修の目安については、「コピー用紙の厚さが入るか入らないかという程度のひびなら大丈夫。名刺の厚さが余裕で入る大きさであれば要警戒」。
また、ひどい劣化は専門業者による補修が必要になるが、軽い劣化なら市販の補修材を使って自分で補修できる部分もあるという。
新里さんは「人も軽い傷ならばんそうこうで十分だが、放っておいて傷が悪化すると手術が必要になるのと同じ。傷みがひどくなる前に対応していくことで、長く安心して住める家になる」と訴えた。


こんな状態なら早めの対処を

外壁にひび

水の浸入路となる亀裂。乾燥によるコンクリートの収縮など、人が感じないほどのわずかなねじれなどが要因。角部分に発生しやすい。小さなひびならホームセンターに売っている補修材などで直せる(写真はいずれも新里さん提供)


水や土がたまる

勾配不良などで、水や土ぼこりがたまっている。鳥のふんに含まれていた種が発芽し、伸びた根がひびを大きくすることもある。定期的な掃除でごみをためないようにするのがカギ


チョーキング

塩害や紫外線によって塗装が風化し、触るとチョークのような白い粉が付く。塗装劣化の目安となる


コーキング劣化

サッシ周りや外壁パネルのつなぎ目などに使われているコーキングが、紫外線や潮風の影響で硬くなりひび割れてしまっている。水が浸入する要因になる。押したときに少し跳ね返る程度、消しゴムほどの弾力があると良い


アルミの腐食

サッシやベランダの手すりなどのアルミ部分が腐食している。台風時に強風で飛ばされ、二次災害を起こす危険性がある


水ジミ

結露や雨漏り、配管からの漏水などによる室内の水ジミ。原因を突き止めてからの補修が必要


膨れ

塗装の内側に水がたまっている状態。躯体のひびなど、原因を突き止めてからの補修が必要



しんざと・しょうじろう
アーキテクトラボ・ハローム、二級建築士、既存住宅現況検査技術者
 


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1652号・2017年9月1日紙面から掲載

巻頭特集・企画

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2115

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る