吹き抜けに集う|カネトモ設計【建築当時】|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい再拝見

2015年12月4日更新

吹き抜けに集う|カネトモ設計【建築当時】

沖縄本島中部、西原町の金城さん(64)宅は築27年。琉球ガラスのカラフルな光差し込む吹き抜けのリビングが印象的だ。黒い床や建具、白とグレーの壁がシックな雰囲気を漂わせる。今も嫁いだ娘や孫たちが集い、にぎやかな声と笑顔あふれる住まいで、満足して暮らしている。

鮮やかな光差す

金城さん宅(第222号・1989年10月27日掲載)築27年

 


金城さんが孫たちや娘とくつろぐ1階リビング。天井の高さは最大7・8メートルもあり、窓の周りには収納を造り付け、スペースを有効利用した。幾つかの窓はオペレーターで開閉できるようになっている
 

 

緑が残る閑静な住宅地で、コンクリートの打ち放しの外観が目を引く。2階建ての住まいは、1階がLDKと和室、水回り、2階は寝室を含む3室の個室になっている。金城さんと夫人(62)の二人が暮らす。
4色の琉球ガラスがはめ込まれた玄関ドアを開け、室内へ。アーチ状に設けた窓から光がふんだんに入る吹き抜けのリビングに圧倒される。玄関ドアと同じく、天井にも琉球ガラスがはめ込まれ、時間とともに壁や光にカラフルな光を落とす。
金城さんは「リビングが、ダイニング・キッチンや和室ともつながっていて、家のどこに居ても家族の様子が分かるのがいい。風も良く抜けるし、快適ですよ」と優しくほほ笑む。嫁いだ二人の娘の家族、親せきが集まっては、にぎやかな声が響く。これまでも同僚や娘の友だちと酒を酌み交わすこともあった。
床や建具は、金城さんの希望で新築当初から黒い。「育った家の柱や小屋組みがすすで黒くなっていましてね。その印象を表現したかった」。白とグレーの壁と相まって、シックな雰囲気を醸し出している。
夫人お気に入りのキッチンは当初、北側の壁際にあったが、4年前にオール電化リフォームをした際、対面式に変えた。「私の希望でした。今は作業しながら、孫たちに目が届くので安心」と目を細める。

娘にも「大切な家」
かねてからマイホームを考えていた金城さん。土地勘のある地域に住みたいと、土地は姉が住む地域で探した。幸い、築40年ほどのセメント瓦の家が付いた土地が見つかり、購入。4年ほど住んでいたが、老朽化が著しくなり、27年前に今の家に建て替えた。設計は妻の義弟に頼んだ。
この家は、長女(37)と次女(32)にとっても大切だ。「子どものころに見た、琉球ガラスの光の移ろいが心に残っています。私は2階でエレクトーン、妹は1階でピアノを弾くのが楽しかった」と長女。宴会で金城さんが娘たちに演奏を頼むと、2階の廊下が即席のステージになった。
「こうすれば良かった点は?」とあえて聞くと「和室の障子が片付けられる戸袋があった方が便利だったかも」と金城さん。
今後は、外壁の塗装と床の張り替えを予定。「今の造りのままで暮らしたい」と金城さん。二人の娘もそう願っている。


1階リビングから見たダイニング・キッチン。ダイニングテーブル奥の造り付け収納は新築当時からの物


黒い格子の天井が上品な雰囲気を醸す1階和室。障子は以前、赤と白の琉球紙だったが、近年、白に張り替えた


敷地南側から見た外観。10年前に外壁のクリア塗装、屋根の防水塗装をした

シックな室内に
家のどこに居ても家族の様子が分かるように―。金城さんのリクエストからできたのが、家の顔ともいえる吹き抜けのリビング。南からの光と風をふんだんに取り込むのに一役買っている。一方、カラフルな琉球ガラスを使うことで、シックな空間にアクセントを付けるインテリアの工夫も光る。


1階リビングの天井。琉球ガラスと照明は取材当時のまま


玄関とトイレのドアにも、琉球ガラスを使用。「室内のアクセントにしたかった」と設計者の兼城さん
 

設計者・兼城朝和さんに聞く
飽きない空間を重視

28年前に金城さん宅を設計したのは、現在、(株)屋島組で原価統括部部長を務める兼城朝和さん(61)。「家のどこにいても家族の気配が分かる造り」という金城さんの希望に応えるべく、兼城さんはワンルームのLDK、吹き抜けのリビングを提案した。
アーチ状に設けた窓について「南からの光と風を取り込みつつ、周囲の住宅からの目隠しにしたかった」と説明する。庭を広く取る方が、室内に光と風を取り込みやすくなるため、建物はコンパクトに。南北に接道した敷地条件を生かして南に庭を取り、北側に車庫を置いた。
「インテリアのバランスも気を使った」と兼城さん。琉球ガラスを、モノトーンの空間でアクセントになるよう使った。壁は塗装で仕上げてコストも抑えた。「シンプルにつくり、飽きのこない空間を目指した」。
昨年、家に招かれたという兼城さん。「設計当時の雰囲気のまま、大切に住んでいるのを感じた。今も気に入ってくれているようで、とてもうれしい」と顔をほろこばせた。


和室側から見た庭。「ヌレエンに座ってビールを飲むのが最高」と金城さん

[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:194.1㎡(約58.7坪)
床面積:1階 69.3㎡(約20.8坪) 2階 60.5㎡(約18.3坪)
建ぺい率:41.3%(許容50%) 容積率:67%(許容100%)
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:兼城朝和(カネトモ設計、建築当時)
施 工:(有)山徳組(建築当時)
完成時期:1988年8月
写 真/比嘉秀明撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1561号・2015年12月4日紙面から掲載

お住まい再拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2128

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る