築25年 今も新鮮|(株)バウ設計集団|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい再拝見

2015年8月7日更新

築25年 今も新鮮|(株)バウ設計集団

建築士の内田栄司さん(66)=浦添市宮城=が、事務所を併設した自宅を設計したのは、25年前。大きな窓が印象的な3階リビング・ダイニングでは、年季の入った家具や雑貨が映える。改装や模様替えを重ね、「今も新鮮な気持ちになれる」と、シンプルな空間で豊かに暮らす。

シンプルな空間 コツコツと改装

内田栄司さん宅(第275号1990年11月9日掲載) 築25年


南向きの大きな窓があり、明るい3階リビング。家具が映えるよう壁を白く塗った

内田さん宅は4階建て。1・2階が設計事務所、3階がLDKや水回り、4階が夫妻の寝室(主寝室)になっている。内田さんと妻のひとみさん(66)、愛犬のそらが暮らしている。
夫妻で過ごす時間の長い3階リビング・ダイニングは、24畳と広々。午後になると、壁の幅いっぱいに設けられた南側の窓から光が入り、住宅密集地と思えないほどの開放感を呼ぶ。「空の色や雲の形が変わるさまや、近所の子どもたちの成長が窓越しに見えて楽しいんです」と内田さんは目を細める。
居心地をより良くしたいと、築20年ごろから年30万円程度の改装を続けてきた。リビングやキッチン、4階洗面室の壁を一部塗装したり、玄関や照明も一新。「改装も一気にするより、小出しにする方が、部屋の変化を長く楽しめると思うんです」と夫妻は口をそろえる。外壁の補修や塗装も、きちんとしてきた。
30年以上使っている愛着のある家具も多く、室内に豊かさをもたらす。ダイニングにあるYチェアやフリッツハンセン社の楕円形テーブル、リビングにある組み立て式のオリジナル棚がそれだ。ひとみさんはYチェアの肘掛けをさすりながら、「色あせや手あかも、わが家の大切な思い出。“味”ですね」と語る。
物を増やさない心掛け、色や質感をそろえた雑貨の飾り方など、住みこなしの技も光る。

工夫のしがいがある
子どもが同じ校区で通えるよう浦添市内で土地を探し、購入。1990年3月、職住一体の住まいを建てた。当時は内田さん夫妻に、中学1年の長女、小学4年の長男の4人暮らし。
住み始めて、すぐに改装したのが4階子ども室。ワンルームを収納で仕切る予定だったが「思春期の姉弟が同じ部屋で過ごすのは難しかったみたい。結局二部屋に仕切りました」と苦笑いする内田さん。
60歳半ばを過ぎ、駐車場のある1階と3階を外階段で行き来するのは正直大変と言うが、「足腰を鍛えるいい運動になっていると思えば」と前向きだ。
「予算がなくてシンプルに造りましたが、暮らし方で工夫のしがいがあります。いつでも新鮮な気持ちになれますしね」。わが家の変化を楽しみながら、長く住み続けたいと思っている。


3階リビングから見たダイニング。「テーブルの位置を変えるだけでも、いつもと違って見えます」と話す内田さん。左側のパソコンコーナーは2年前に設けたばかり。白い壁には、夫妻が撮影した野鳥の写真が飾られている


ダイニング隣の3階キッチン。10年ほど前に壁の一部を黄色く塗り、明るく仕上げた。近々リフォームをする予定


4階洗面室。15年ほど前、壁を白く塗装し、洗面台を取り換えた。オレンジのトイレの扉がアクセントになっている


内田さん宅は、建物を4階建てにすることで34坪の敷地をフル活用した。南側にワイドな開口部を取るなど、住宅密集地でも外の様子が感じられる工夫も光る。一方、建物の規模に制約がある中でも「ホームエレベーターの設置スペースは確保しておけば良かった」と、内田さんは話す。


内田さんがデザインした組み立て式の棚。リビングにあり、35年ほど使っている


ひとみさんお気に入りの、Yチェア。こちらも30年以上使っている愛着の一品


南側から見た外観。建物正面のデザインに統一感を持たせるため、リビング・ダイニングのある3階も、事務所のある2階と同じ開口部に仕上げている


設計者・内田栄司さんに聞く

​住居を上に 窓で開放感

敷地は、南側に道路があり、東側と北側は住宅やアパートが建っていました。西側も空き地でしたが、将来的に住宅ができる可能性はありました。
自宅だけでなく事務所や2台分の駐車場も併設することから、建物は4階建てとし、建ぺい率・容積率ともいっぱいで建てました。
居住スペースを周囲の建物の影響が少ない3・4階にし、リビング・ダイニングは大きな窓を設けることで、住宅密集地でも、外の様子を身近に感じられるよう工夫しました。容積率の関係でバルコニーを設けるのが難しかったため、その代わりでもありました。窓ガラスは、熱線を反射する特殊な製品を使い、ブラインドと組み合わせることで熱が入るのを抑えています。
敷地が狭く、建物の規模が限られたとはいえ、こうすれば良かったと思うのは、ホームエレベーターの設置スペースの確保。いざというときは、外階段に階段昇降機を設置することになると思います。子ども室は、子どもの数や歳の差、男女の違いも踏まえて、仕切ったりつないだりできる造りを考えたいものです。


[DATA]
家族構成:夫婦、愛犬1匹
敷地面積:112㎡(約34坪)
床面積:3階 67㎡(約20坪) 4階 55㎡(約17坪)
建ぺい率:59.8%(許容60%) 容積率:196%(許容200%)
用途地域:第二種住居専用地域(建築当時)
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設 計:(株)バウ設計集団 内田栄司
施 工:(有)山徳組
完成時期:1990年3月

[設計・問い合わせ先]
(株)バウ設計集団
098-875-2620
http://bau‐arc.co.jp
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1544号・2015年8月7日紙面から掲載

お住まい再拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2122

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る