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2015年1月30日更新

明るく居心地のよい 現代版ウチナーヤー|(株)琉球住樂

「ウチナーヤーに憧れていた」というKさん(40)が沖縄市に建てたのは、赤瓦屋根の木造住宅。深い軒や一番座・二番座を思わせる畳間など、昔ながらの造りを取り入れつつ、家の中心部には自然光を効率よく取り込む太陽光照明を導入。機能性を加えた“現代版ウチナーヤー”で快適に過ごす。

心和む木の香りや質感

Kさん宅(家族3人 自由設計 木造)


玄関からリビング、キッチン、和室を見る。リビングの一部は畳間になっている。奥の和室と合わせて、ウチナーヤーの一番座・二番座のようなイメージで作ってもらった

キッチン作業台が重宝
玄関に入ると、爽やかなスギの香りが広がるKさん宅。木造の平屋建てで、手塗りの漆喰壁や、サラリとして足触りのよい宮崎県産の飫肥スギの床に心和む。
沖縄県沖縄市の高台にあり、敷地の東側と北側からは、緑豊かな町並みや太平洋が望める。
室内は眺めのいい東側に大きな開口部を設けている。開口部に隣接するのは和室と、リビングの畳間。和室、リビング、キッチンは床の高さがそろっていて一体的に使える。やんちゃ盛りの1歳の長男が縦横無尽に走り回る。「家に居る時はだいたいリビング付近で過ごしています。夏場は窓をオープンにして風通しよく、冬場は玄関とリビングの間のふすまを閉めて、室内の熱を逃がさないようにして過ごしています」とKさん。
木の優しい雰囲気と眺望の良さが相まって、来客がついつい長居するというのもうなずける。夫人(34)は、「お客さんがいても家族が気兼ねなく過ごせるよう、寝室や水回りは、リビングや和室から見えにくい場所にまとめてもらいました」と話す。
夫人のお気に入りは、飫肥スギを使った造り付けのキッチン。中央にはアイランド型の作業台を設けた。「もう少し子どもが大きくなったらパンやお菓子作りにフル活用したいです。作業台にも収納をたくさん設けてもらったから片付けやすい」と笑顔で語る。

補修しやすい木造に
Kさんの生まれ育った沖縄市に土地を購入。新居を建てるにあたり、木造を選んだのは、「ウチナーヤーに憧れがあったし、木なら傷んだ所だけ切って取り換えられる。長く住むことを考えて、補修しやすい木造にした」と話す。
夫人は当初、乗り気ではなかったそう。「シロアリや台風が心配だったんです。だけど、木造住宅の完成見学会で建築士さんに対策法を丁寧に説明してもらって納得しました」と、話を聞いた建築士に設計を依頼した。
Kさんは、「木造にして正解だった。外気の影響を受けにくく、室内は年中サラッとしていて居心地がいい」と満足げに語る。
引き渡し日に、長男が生まれ、「この家には運命的なものを感じる」と夫人。「息子の成長とともに、家も味が出てくるのでしょうね。楽しく時を積み重ねていきたい」と目を細めた。 


リビングからキッチンを見る。飫肥スギを使った落ち着いた風合いのキッチンは夫人のお気に入り。中央には作業台も設けた。「ダイニングテーブルのように使うこともある」と話す


ここがポイント
昔の様式を基本に建材や間取り工夫

Kさんの要望は「現代版ウチナーヤー」。伊良皆盛栄一級建築士は、昔ながらの造りを取り入れつつ、①木造の利点を高める ②現代生活での不便を解消する ③現代生活に合う間取りのアレンジ-を提案した。
①については、熱を伝えにくい木造の性質をさらに生かすため、「屋根から壁まで、すっぽりと断熱材で覆った。夏場は外からの熱を遮断し、冬場は室内の熱を逃さない」と話す。開口部のサッシは、気密性が高い樹脂製。窓ガラスは遮熱性の高いペアガラスを採用している。
次に②。昔ながらのウチナーヤーは、強い日差しを避けるため深い軒を建物の南側に設けることが多く、家の中心が暗くなりがち。そこで家の中心部にあるリビングの天井に、自然光を効率よく取り込む太陽光照明を導入した(下写真)。「普通の天窓と異なり、反射率の高いアルミチューブを通して光を入れるから、室内の広い範囲に光を拡散できる」。
最後に③。人をもてなし、家族がくつろぐ空間は一番座・二番座を思わせる造りにした。一番座は和室だが、「二番座はリビングの一部を畳間にして設けた。あえて独立した居室にせず、和室の延長にもリビングの延長にも使えるようにした」。
和室やリビングなどは東側に、水回りや寝室などは西側にと、東西で公私の空間をきっちり分けた造りは、家族も客も過ごしやすい上、西日対策にもひと役買っている。
ウチナーヤーの様式に現代の技術を取り入れ、Kさんの要望に応えた。


赤瓦屋根と深い軒が印象的な外観。道路に接する敷地の南側は、東側へ向かって低くなってくため、建物は平らな北西側へ配置。勾配のある東側には琉球石灰岩でアプローチを設けた


脱衣室前の廊下からリビングを見る。水回りの扉はすべて引き戸。「開けておけば、リビング側(南東)から水回り(北側)へと風が通り湿気を外へ逃がしてくれる」とKさん


台風時には、大きく開いた東側をトランポリンに使用されている素材でできたスクリーンで覆い、飛来物による破損を防ぐ(琉球住樂提供)


リビングの畳間。Kさんたっての要望で、掘りごたつにもなる


リビングの天井に設けた太陽光照明。電気を使わないため、省エネにもなる

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:724.39㎡(約219.12坪) 1階床面積:101.83㎡(約30.80坪)
建ぺい率:18.47%(許容50%) 容積率:14.06%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:木造
設 計:(株)琉球住樂一級建築士事務所
伊良皆盛栄、嶺井典子
施 工:(株)琉球住樂
大 工: 内部=大友内装、外部=孝技建
屋 根:(有)八幡瓦、(有)島シングル工業
建 具:内建具=(有)照屋木工所
外建具=(株)エクセルシャノン
水 道:(有)海西工業
電 気:テルヤ電業
左 官:(有)仲松左官工業
外 構:金勢造園

[設計・問い合わせ先]
(株)琉球住樂
098-852-6936    
http://10raku.co.jp
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/東江菜穂

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1517号・2015年1月30日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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