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2025年12月5日更新

[お住まい拝見]弧を描く花ブロックの外観 両親にはそれぞれ趣味の部屋 息子世帯と心地よい距離感で暮らす、沖縄の2世帯住宅(株)東設計工房 

[角地に建つ2世帯住宅]
30代の息子一家と共に、2階建ての2世帯住宅を新築した60代のGさん。1階のGさん世帯は、夫婦それぞれの趣味を楽しむ空間が特徴。親子2世帯が心地よい距離で暮らす。

1階のLDKと茶室。ひと続きになっているため、テーブルでお茶を楽しむ立礼式で、友人たちをもてなすことも。障子を閉めれば、茶室は独立。茶を身近に楽しめる

家族交流と趣味満喫

毎日が充実
Gさん宅
 RC造/自由設計/家族7人 
 
1階の茶室とLDは庭に面しているため、掃き出し窓を開け放つと開放感たっぷり。時間帯によって変化する空、那覇の街並みを眺めるのもGさん一家の楽しみ

弧を描く花ブロックの外壁が印象的なGさん宅。1階にGさん世帯、2階に息子世帯が暮らす部分共有型の2世帯住宅だ。家族の気配を感じられるよう玄関は共用。「2年ほど一緒に暮らしているので、互いの生活ペースも分かる。玄関が一つだと広く、ゆったり使えていい」と夫人。
 
西側の外観。角を曲線にして積み上げた花ブロックの目隠し壁が、存在感を放つ。写真右奥が地下駐車場の出入り
 
1階のLDKは庭に向かって開かれ、遠くにモノレールの軌道が見える。空や街の移ろいを眺めるのが、夫人の楽しみ。「早朝に、1人でコーヒーを飲みながら月を眺め、鳥の声を聴いているうちにモノレールが動き始め、家族の1日もスタートします」。

夫婦それぞれの趣味の部屋も設けた。クラシック好きのGさんは、防音仕様のオーディオルームで音に浸り、夫人はリビング横の茶室でおけいこや友人との茶会を楽しむ。もう一つ、夫人が気に入っているのが浴室。「植物と夕日のコントラストを楽しみながら入るお風呂は幸せ」と話す。

2階はアイランドキッチンを中心に、LDや小上がりの和室へ目が届き、家事・育児がしやすい間取りだ。
 
Gさんの寝室兼オーディオルームは防音仕様。安全対策として中の様子が外からも分かるよう、ドアの一部をガラスにした
 
浴室。坪庭の三友花を眺めつつ1日の疲れをとる癒やしの空間に

触れ合いが活力に

Gさん夫妻は、那覇市内の住宅分譲地で30年前に建てた家で暮らしていた。息子一家の希望で同居がスタート。孫が増え、2世帯住宅への新築を決めた。

敷地は、将来子どもたちが家を建てられるよう、同じ分譲地内に準備していた土地。「設計は、同僚たちの家を手掛け、風致地区での建築経験が豊富な建築士事務所に依頼しました」とGさん。

以前の家では、光熱費の高さが悩みの一つだった。新居はオール電化にし、太陽光発電と蓄電池を無料設置できるサービスを活用。「光熱費が3分の1になり、災害時にも電気が使えて安心」と喜ぶ。

4歳、2歳の孫を預かることもしばしば。家族との触れ合いと、趣味や自然を楽しむ暮らしが、Gさん夫妻の大きな活力になっている。
 


ここがポイント
眺め重視、高低差生かす
 
敷地は、西と北が道路に接する角地。南には那覇の街並みが広がる。建築できる範囲や高さ、色彩にも制限があるエリア。設計では「敷地の特性を十二分に引き出し、見晴らしを生かして、予算を圧縮する視点」を大切にした。

設計の出発点は、駐車場と庭の配置。西側道路はなだらかな坂で、敷地の南北で最大約3メートルの高低差がある。この差を生かして道路側から地盤を掘り込み、地下に3台分の駐車場を計画。上部を庭とすることで、住宅の外と内のつながりが生まれた。雨でも移動が楽なようにと希望のあった「ホームエレベーターの位置を起点に、2世帯が程よい距離で関われる間取りを考えました」と建築家の山城東雄さんは説明する。
 
玄関。右手の引き戸の奥が階段室

玄関は、北側道路に面して配置。玄関を入ってすぐの場所に2階への出入り口を設け、両世帯の動線を分けた。眺望を生かすため、1階も2階もLDKは南側に配置。1階は茶室を隣接。年を重ねても楽しめるよう、立位で準備・片付けができる水屋も造作した。水回りは西側にまとめ、道路からの視線と西日をやわらげるため、外壁には沖縄らしい花ブロックを採用。「風が抜け、湿気がこもらず、景観にもなじむ。予算面も踏まえ提案しました」。
 
2階のLDKと小上がりになった和室。オープンキッチンの背後、アーチ開口の奥に水回りがある
 
階段室。ガラスブロックで光を取り込む

屋根には太陽光パネルを載せ、省エネ性能の第三者機関による評価制度「BELS」で、ZEH水準とネット・ゼロ・エネルギーの両評価を獲得。エネルギー面でも負担を減らしている。
 
雪見窓から見える露路庭も美しい茶室。床柱はアカマツ、床の間はリュウキュウマツ、天井は網代屋根にサクラの組み合わせ。多彩な木の個性を生かしてしつらえた。写真左端の障子の脇に水屋がある


[DATA]
家族構成:親世帯 夫婦
     子世帯 夫婦、子ども3人
敷地面積:330.80平方メートル(約100.06坪)
地下階床面積:98.66平方メートル(約29.84坪)
1階床面積:117.11平方メートル(約35.42坪)
2階床面積:120.11平方メートル(約36.33坪)
建ぺい率:39.90%(許容40%)
容 積 率 :79.18%(許容80%)
用途地域:第1種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設  計:(株)東設計工房
     山城東雄、仲村知也、久高多美子(元職員)
構造:(株)東設計工房
施工:(株)徳里産業
電気:(有)中原電設
水道:(株)共立技研

問い合わせ
(株)東設計工房
電話=098・917・5000
https://azumas.com/

撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2083号・2025年12月5日紙面から掲載

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