[お住まい拝見]機能充実 カフェ風の家|(株)建築工房ibox|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

第10回こども絵画コンクール

お住まい拝見

お住まい拝見

2025年9月12日更新

[お住まい拝見]機能充実 カフェ風の家|(株)建築工房ibox

[天井や床に高低付けメリハリ]
「家族に目届く造り」「カフェ風の内装」などを希望したKさん夫妻。壁で仕切らず床や天井の高さを変えてメリハリを付け、キッチンの下がり天井は木風クロスでおしゃれに仕上げた。ZEH水準もクリアし補助金も得ながら理想の家をかなえた。


内装は木と黒をベースにし、落ち着いたカフェ風に。キッチンはほかより天井高を20センチ下げ、ダイニングは逆に約1メートルほど上げてメリハリを付けた。左側のアーチ壁の向こうには洗面・脱衣室や浴室、寝室などプライベートスペースがまとまる

横並びのLDK 水回りは回遊式
Kさん宅
 RC造/自由設計/家族3人 


リビングからキッチン・和室側を見る。高窓や和室の地窓、テラスに面した掃き出し窓から光がたっぷり入る。しっくい壁も明るさを強調する

持ち家のハードルは年々高くなっているが、「私は昔から“持ち家願望”が強かった。子育てをするなら、絶対に平屋の一戸建てがいい」と夫人は思い描いていた。

結婚を機に、まずは土地探し。希望の立地は、名護市の人気エリアだったため「予算や条件に合う土地がなかなか見つからなかった」と話す。そんな中、「父の知人に実家近くの旗ざお地を紹介してもらえた。予算をオーバーしていたけど両親に背中を押されて購入した」。

そこに理想の家を建てるべく、インスタグラムなどで「好みの空間や内装を調べまくった」と話す。「外観はスタイリッシュな打ち放し、室内は木+ブラックをベースにして、スターバックスみたいな落ち着いた雰囲気にしたい」とイメージを固めた。建築会社は「雑誌でデザイン性が好みの会社を見つけて依頼した」 


コンクリート打ち放しの外観。80万円の補助金は植栽などの外構費にまわしたそう

和室のみ対面に

完成したのは、キッチンの下がり天井が印象的な約28坪の平屋。ダイニングより約1メートル20センチ下げた天井は、木風クロスで仕上げた。モスグリーンのキッチンやペンダントライト、天井の隙間に仕込まれた間接照明などもマッチして、念願のカフェ風に。


キッチン上部はオープン収納にして、おしゃれな食器や食品もディスプレーすることで“カフェ”感の演出に一役買う

横並びのLDKは最近、はやりのスタイルだ。配膳しやすく、家族との距離も近い。建築士からは和室まで直線上に並べる提案をされたが「和室だけは対面にしたかった。家事をしていても、寝かせている娘に目が届くから」と夫人。

夫は「僕の要望はただ一つ。ソファの後ろを人が歩くと落ち着かないので壁付けにしてほしい、ということ。しっかり実現してもらえて、満足している」と笑う。

西側には、寝室、ウォークスルークローゼット、洗面・脱衣室、浴室が一直線に並び、移動しながら身支度ができる。キッチン側とダイニング側の2カ所から出入りできる回遊式の動線で「すごく家事がしやすい」と夫婦声をそろえる。特に家作りの主体となった夫人は「家中、使い勝手も見た目も大満足」と目を細めた。


手前の洗面・脱衣室からウォークスルークローゼット、寝室まで直線上に並ぶ。広めの洗面台は家族並んで身支度ができる。天窓から光が注ぎ、昼間は照明要らずだ

 
ここがポイント
ギャップで広さ ZEHで補助金

「Kさんは、住空間についてよく勉強なさっていて『カフェ風の内装』『回遊型の動線』『建具・収納は最小限に』『小上がりの和室』など、やりたいことが明確だった。それを予算とすりあわせながら、プランを組み立てていった」と設計を手掛けた一級建築士の比嘉功さんは話す。

LDKは仕切らず横並びにしたいとの要望を受け、天井や床の高さを変えてメリハリを付けた。家の中央に位置するダイニングの天井高は、ほかより1メートルほど上げて約3メートル50センチに。「天井を上げたことで、高窓を設けることができた。採光にかなり役立っている=下写真」と話す。


ダイニングとリビングの半分まで1メートルほど天井を上げた。2カ所の高窓から光が入り、明るい

逆にキッチンは約20センチ下げて約2メートル20センチに。「コストを考えて不燃の木風クロスで仕上げた」。濃いめの色の木風クロスはモスグリーンのキッチンとも調和している。少し重ための雰囲気を演出して“おこもり感”のあるキッチンと、漆喰(しっくい)壁がさわやかなリビング・ダイニングとのギャップをつくり、互いの特長を引き立たせた。


既存キッチンにモスグリーンの腰壁を付けた。落ち着いた色合いが家のアクセントとなっている

和室は「夫人の要望から南側に配したが、採光に適した方角でもあるため、壁で閉じてしまうのはもったいない。収納を浮かせて地窓を設けた」と説明する。


和室は南側にあり「採光を確保するため、地窓を設けて光を取り入れた」と建築士

土地で予算をオーバーした分、建築費の削減も大命題だった。「子育てエコホーム支援事業による80万円の補助金を得られたことも大きかった」と比嘉さん。39歳以下の若者夫婦で、ZEH水準をクリアすると補助金が交付される。「庇(ひさし)を伸ばしたり、断熱材を厚めに入れたりして、省エネ性能を高めた」。日々の光熱費も抑えられ、家計にも優しい。

そのほか、扉や襖(ふすま)などの建具を最小限にしたり、収納も棚だけのオープンな造りにしたこともコスト削減につながっている。「扉を省いた場所は、アーチ壁にしてアクセントを付けた」。

削るだけでなく、デザイン性も付加したことで満足度の高い住まいになった。


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:348.81平方メートル(約105.51坪)
1階床面積:91.58坪(約27.7坪)
建ぺい率:27.71%(許容60%)
容 積 率 :26.25坪(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式造構造
設  計:(株)建築工房ibox 比嘉功
コーディネート:(株)建築工房ibox 新里綾乃
構  造:(株)建築工房ibox 
施  工:(株)建築工房ibox 
電気・水道:宮里電化
省エネ計算:智・空間

問い合わせ
(株)建築工房ibox
電話=0980・59・6987
https://www.okinawa-ibox.com/
撮影/比嘉秀明 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2071号・2025年9月12日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2711

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る