お住まい拝見
2025年2月28日更新
[お住まい拝見]光あふれる2階リビング|(有)武一建設
[カーテンなしで開放的]
城跡のほど近く、人や車の行き交う通り沿いに佇むKさん宅。2階のリビングは、窓から光が差し込み明るい。夫人は「カーテンなしで明るい空間にしてほしい、という希望通りです」と柔らかな笑みを浮かべる。

どこを見てもかわいい
Kさん宅
RC造/自由設計
一家は、夫婦と3人の子どもたち(6歳から17歳)と愛猫1匹。夫婦が思い描いたのは、「家族が和気あいあいと過ごせる家」だった。
2階のリビングとダイニングキッチン=上写真=は、やわらかな曲線を描くアール壁でゆるやかに仕切られ、つながりを感じられる。収納は造り付けにし、家具を必要最小限に抑えることで、すっきりとした暮らしをかなえた。
家づくりのきっかけは、「子どもたちに個室を与え、将来の財産となる家を持ちたい」という思いからだった。理想の土地を見つけるまでに3年。「実家に近く、子どもたちの通学区域内で探し続けたものの、予算内で条件を満たす土地はなかなか見つからなくて。そんな中、以前見学した土地の価格が下がったと連絡を受け、迷わず購入を決めました」。家造りは、温もりのあるデザインと女性建築士の柔らかな雰囲気に引かれ、建築事務所に依頼した。
家事ラクでゆとり
「家が変わると、こんなに快適になるんですね」と夫人。住み心地の良さのポイントは、メリハリのある間取りにある。1階に家事や収納スペースがまとまっていて、2階は家族がくつろぐ場に。「以前は家事に追われて常に動き回っていたけれど、今は家事室のドアを閉めれば『なかったこと』にできる。ちょっと座って休もう、と思えるようになって、気持ちにゆとりができました」
暮らしやすさを支えているのは、家事のしやすさ。段差や仕切りが少ないため、ホコリが溜まりにくく、ロボット掃除機もスムーズに動く。1階の家事動線はコンパクトで無駄がない。「洗濯物が多いので、天気を気にせず干せる室内物干し場が本当に便利。取り込んだらすぐ畳んで、そのまま収納できます」。また、漆喰の壁は調湿効果があり、家全体の空気がサラリと心地よい。「子どもが風邪をひきにくくなりました」

キッチン。高窓やパントリー=写真奥=の窓から光が差し込み、明るい。パントリーには、冷蔵庫や食材を納めている

アイアンの装飾が施されたアンティーク調の扉が重厚感のある玄関。備え付けのベンチは、腰掛けたり物を置いたりするのに便利

優美なデザインの階段の手すりは、職人が造ったオリジナル。キャットステップの先に設けた出窓は、愛猫のお気に入りのスポットだ

ステンドグラスが印象的な玄関ポーチ。収納や洗面所の扉を閉めれば、突然の来客時にも安心
曲線を描く階段の手すり、クラシックなデザインの照明、窓辺…。「家中どこを見てもかわいい」と話す夫人。特にお気に入りは、ステンドグラスの窓辺だ。「仕事から帰宅しステンドグラスからもれる明かりを見ると、わが家に帰ってきたとホッとします」。夫は「植栽の手入れをしたい」と家にいる時間が増え、夫婦の会話も増えた。子どもたちは、ちょくちょく近くの公民館へ遊びに行き、地域の人から声をかけられる。「毎日楽しそうに帰ってきます」。心地よい住まいで、家族の絆と地域とのつながりが、豊かに育まれている。
ここがポイント
動線分けメリハリ
傾斜地で、通りや隣家より低い土地に建つKさん宅。擁壁を設けるか、一定の距離を確保する必要があった。設計した末松渚さんは「予算を抑えるため一定の距離を確保することに。開放的な空間を造るには、2階リビングが最適でした」と説明する。
設計で重視しているのが、家事のしやすさ。そのカギとなるのが、プライベートゾーンとパブリックゾーンの明確な切り分けだ。Kさん宅は、視線が気になる1階を家事室や収納などプライベートゾーンとし、2階をパブリックゾーンとした。「スッキリとした空間が一つあると、心が落ち着きます」


家事を楽にする工夫も随所に。買い物帰りの負担を軽減するため、階段の先にキッチンを配置。1階はぐるりと回遊できる動線とし、廊下に収納スペースを設けて移動しながら物をしまえるようにした。さらに、2階のランドリーシューターは1階の洗濯機横へ直結。脱ぎ捨てがちな靴下を、ワンアクションで片付けられる。「毎日のことだからこそ、工夫が大切。ストレスが減り、ゆとりが生まれます」。細やかな工夫が、家族の毎日を優しく支えている。

家族構成 :夫婦、子ども3人
敷地面積 :270.71平方メートル(約82.03坪)
建ぺい率 :25.70%(許容60%)
1階床面積:65.65平方メートル(約19.89坪)
2階床面積:65.81平方メートル(約19.90坪)
容 積 率:47.46%(許容70%)
用途地域 :指定なし
躯体構造 :RC構造
設 計:(有)武一建設 末松渚
施 工:(有)武一建設
◆問い合わせ
(有)武一建設
電話=098・965・3001
https://www.takeichikensetsu.com/
撮影/泉公・ララフィルム 文/栄野川里奈子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2043号・2025年2月28日紙面から掲載