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2024年10月11日更新

[お住まい拝見]五つの箱と隙間の家|(株)GAB

[四方に視線抜け眺望楽しむ]
八重瀬町の高台に建つH邸は、五つの箱(個室)がリビングの周りに配されている。箱と箱との間から外へ視線が抜け、東側の稜線(りょうせん)も西側の街並みも堪能できる。

キッチンや水回り、寝室など、五つの箱(個室)の中央にリビングがある。箱と箱の間にはダイニングやワークスペース、猫部屋があり、個室にも隙間にも家族の居場所がいっぱい。「猫がいるので掃除がしやすいように床はタイル張りにした」と夫人(泉公・ララフィルム撮影)
 

保養所としても利用

Hさん宅
 RC造/自由設計/家族4人+猫2匹 

H邸の空間構成は、とてもユニーク。台形の建物中央にリビングがあり、その周りに五つの箱(個室)が配されている。五つの箱は①トイレ&シューズクローゼット②キッチン③水回り(洗面・浴室など)④子ども室⑤寝室だ。箱と箱の間の外壁はガラス窓になっているため、四方どこを向いても視線が外に抜ける。「猫を飼っているので、キッチンなどに入れないよう個室にしたい、と依頼した。そしたらこんな面白い家になった」と夫人は笑う。


玄関からリビングを見る。ソファと対面しているのは、浴室やファミリークローゼットなどがある「水回り箱」。その壁をプロジェクタースクリーンとして利用している。コンクリート打ち放しの天井には、照明などを極力付けなかった。エアコンは箱の中に設置し、リビングへ風を吹き出すようにしている


ダイニングは、キッチン箱と水回りの箱の間にある。角のカーブの窓はHさんのこだわり。2面の大開口で開放的な空間だ。外のテラスにはコンクリートのカウンターがあり、景色を見ながら料理やお酒を楽しめる


Hさんは「高台の眺望をフルに生かしてくれた。僕は稜線が見える東側=下写真=の眺めが好き。購入前は雑木林みたいな土地だったから、こんな眺望が広がっているとは思わなかった」とうれしそうに話す。

土地探しの段階から親戚の建築家に相談。希望する地域で「景色が良く、地盤も悪くない」とお墨付きをもらい、約134坪の土地を購入した。


東側は街の向こうに稜線が見える。芝庭と相まって自然を感じられる


白壁をスクリーンに

中央のリビングは、水回り箱の壁をプロジェクタースクリーンとして利用している。テレビはあえて設置せず、広々としたテレビボードでは息子が宿題にいそしむ。

愛猫たちの部屋は、寝室と水回り箱の間にある。木のルーバーとアクリル板で仕切っていて「声が聞こえ、姿が見える安心感がある」と夫人。寝室と猫部屋の間もガラス窓になっていて、いつでも様子がうかがえる。

水回りとキッチン箱の間にあるダイニングは、カーブ窓にこだわった。「曲線がウチの雰囲気に合っている」と満足げだ。

夫人のお気に入りは洗濯動線。洗濯機のある脱衣室とファミリークローゼットが一つの箱にまとまっていて「すごく時短になっている」と話す。

箱と隙間から成る家は、家族の居場所やお気に入りがいっぱいだった。


猫部屋。木ルーバーで声や空調を通す。「ルーバーの間隔は施主と緻密に調整し、3センチ以下にした」と建築士。上部には透明のアクリル板が入っている


寝室だけは内壁まで木にし、落ち着く雰囲気に。はめ込み式の窓の向こうは猫部屋がある


ここがポイント
箱で西日や視線対策


高台に建ち、道路側(西)は街並みが広がり、芝庭側(東側)は自然豊かな景色を楽しめるH邸。外観は、曲線的な庇(ひさし)と、さまざまな高さで突き出た箱がアクセントになっている


西側は眼下に街並みが広がり、東側は緑の稜線が望める。「東西で趣の違う眺望をどう取り込むか、その際の西日対策を考えた。さらに、猫の自由性と管理性も重要なポイントだった」と(株)GABの建築士・濱元宏さんは話す。

カギとなったのが五つの箱(個室)だ。施主の要望から、猫が入れないようキッチンなどを個室にした。箱と箱との間は隙間をあけて東西に抜けを造り、両方の景色を堪能できるようにした。

五つの箱のうち、キッチンとトイレの箱は西側に配して西日対策に利用。「給排水管が必要な場所は、道路側に配置すると効率的。H邸は道路が西側にあるので、それも考慮した」と、同社の豊崎孟史さん。この二つの箱が道路からの視線も遮る。


キッチン。「猫が入れないようにしたい」という施主の要望から個室にした


キッチンとトイレの箱の間にあるスタディースペース。キッチンの窓から顔が見える


猫部屋は、寝室と水回りの箱の隙間に設置。二つの箱と猫部屋の間には、開閉できないガラス窓を設けて猫の様子が分かるようにしている。猫部屋の間仕切りは木ルーバーとアクリル板。空調や声・気配は伝えつつ、脱走を防ぐ。

また、5箱の天井高は3メートルから3メートル90センチとバラバラ。「各部屋に設置するエアコンの収まりを考えて決めた。業務用のカセットエアコンを設置した水回り・ファミリークローゼットの箱は3メートル90センチとした」。高さを利用し、各箱にはロフトなどの収納スペースが設けられている。リビングやダイニングなど箱の外の空間は「既製サッシの最高2メートル40センチに合わせ、2メートル45センチにした」。外から見ると、突き出した5箱の屋根が屋根上に置かれたエアコン室外機を隠し、外からの見え方にも配慮した。


水回りとファミリークロゼットの箱。ここが一番天井が高く、3メートル90センチ。それぞれの箱の天井高は設置するエアコンの収まりを考慮して決めている。「ここが一番涼しく、乾燥するから衣類の状態もいい」と夫人


西側は、既存の琉球石灰岩の石垣を生かした


[DATA]
家族構成:夫婦、子2人、猫2匹
敷地面積:443.12平方メートル(約134坪)
1階床面積:153.68平方メートル(約46.5坪)
建ぺい率:34.6%(許容50%)
容積率:34.6%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用
構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:(株)GAB 濱元宏、豊崎孟史
施工:(株)GAB
電気:ma電工 金城武道
水道:(有)ライフ工業 我喜屋奨

問い合わせ
(株)GAB
電話=098-987-7331
https://gab.okinawa/


撮影/泉公・ララフィルム 文/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2023号・2024年10月11日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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