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2020年1月17日更新

良い距離感で3世帯同居|(株)GAB

[お住まい拝見|玄関共用する3階建て]Iさん(30)家族と両親、祖父が初めて同居する家。約55坪の敷地に4台分の駐車場と伸びやかな家を希望した。玄関を共用する3階建てで、階で各世帯のプライバシーを分ける。

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祖父と親世帯は1・2階。写真は1階のLDK。2階天井までの吹き抜けが開放的。1階奥に祖父の寝室や浴室などの水回りが、2階に親世帯の寝室がある。Iさん世帯は3階
 

寝室は階で分け

Iさん宅
RC+鉄骨造/自由設計/家族6人

祖父の家の建て替えを機に、初めて同居することになったIさん家族と、その両親と祖父。

敷地面積は約55坪。3世帯が住むには決して広くない。しかも4台分の駐車場も必要だった。ハウスメーカーに相談したところ、2階建てで外階段を設けた完全分離型の2世帯住宅を提案された。だが、室内が窮屈なのが気になった。

そこで知り合いの建築士に依頼。その建築士は親と同居した経験があり、「玄関は共用して互いの顔が見えつつ、各世帯のプライベート空間は別階に」と玄関を共用する3階建てを提案した。Iさんたちは吹き抜けなど伸びやかな造りを気に入り、その建築士に依頼した。


外塀は設けず木のスクリーンと植栽で目隠し。駐車場は敷地の両端に設けられている。玄関も2カ所ありどちらの駐車場からもすぐ家に入れる


▲1階LDK 1階LDK1階リビングから階段を見る。東側の玄関から入ればすぐに階段があり、気を使わず出入りできる


家族の顔見え安心
家は敷地のど真ん中に建ち、駐車場は両端にある。どちら側に車を止めても出入りしやすいよう玄関も二つ、両側に設けられている。

1階には祖父と親世帯のLDKがある。2階までの吹き抜け空間や南側一面に設けられた窓の効果で、もはや住宅を越えてホテルのロビーのような開放感だ。白を基調にした造りも相まって明るく、さわやかな印象。

▲1階LDK 階段から1階LDKを見下ろす。南側は天井いっぱいまで全面が窓。光が降り注ぎ、非常に開放的で明るい

寝室や浴室などプライベートスペースは北側にまとまっている。祖父の寝室は1階、両親の寝室は2階。2階にもトイレやシャワー室が設けられている。

3階がIさん世帯。1階とはガラリと変わり、床や天井に木を用いた温かみのある空間だ。共通しているのは明るさ。南東側二面が窓になっていて光りが燦々(さんさん)と差しこむ。

同居してからはIさんの両親が長男のSくん(1)を保育園から迎える。妻のMさん(29)は「仕事を終えて玄関を開けるとすぐにおじいちゃん、おばあちゃんと遊んでいる奏太の姿が目に飛び込んでくる。これがすごくうれしいんですよね」と話す。最初は玄関を共用することに戸惑いもあったが、結果的に「この造りで良かった」と笑顔で話した。


▲3階LDK 3階、Iさん世帯のLDK。木を多用した温かみのある空間。写真左側の窓は外側に少し傾いている。設計した濱元さんは「目の前にある電線の印象を和らげるため」と説明

ここがポイント
明るく開放的 地域に開く家
3階建てにすることで3世帯のプライバシー空間を階層で分けることができた。Iさんは「周囲の住宅は平屋か2階建てなので、3階建てが建てられると思わなかった」と話す。

設計・施工を手掛けた(株)GABの濱元宏さんは「第一種低層住居専用地域でも、各階の天井高を低めにすることで3階建ても可能。ただし道路斜線や北側斜線などの制限に留意する必要があった」と説明する。

道路や北側隣地の日当たりを確保するため建築物の高さを規制した法律にのっとり、3階は勾配天井にして制限ギリギリまで高さを確保。一番高くできる場所にLDKを配した。最高3.4メートル、低いところは1.8メートルだが、窓の効果も相まって窮屈さは無い。斜めのデザインも個性として生かした。

3階建ての住宅をいくつも手がけてきた濱元さん。「境界線から離して建てれば斜線制限が緩和される。道路側と北側は1.5メートルほどセットバックして建てている」など経験が生きる。


道路から見たIさん宅。ブロック塀が多く、暗い道でひときわ明るく輝く

開放感や明るさも糸数邸の特徴。南側の大きな窓は地域にも明るさをもたらす。実施設計を手がけた豊崎孟史さんは「暗い住宅街を照らす提灯(ちょうちん)のような建築」と言う。道路側は外塀は設けず木と鉄パイプ製のスクリーンを設置。植物を這(は)わせてグリーンカーテンで緩く目隠しする。

スクリーンと住居との間には水盤を設けた=下写真。スクリーンの鉄パイプは雨どいの機能も持つ。雨水が循環する水盤で金魚が泳ぎ室内外に涼を運ぶ。

南側のスクリーン内側には水盤がある。スクリーンの縦側を構成する鉄パイプは雨どいになっていて、雨水がこの水盤に流れ込む仕組み



▲3階テラス 3階リビングからテラスを見る。テラスの天井居室と同じ木が張られ、室内との一体感を演出。テラスでは太樹さんがDIYをしたり、ペットが日なたぼっこを楽しむ



▲3階寝室 3階北側にある寝室は、北側斜線制限にかかるため、勾配天井になっている




[DATA]
家 族 構 成:夫婦+子ども1人
      祖父、両親
敷 地 面 積:180平方メートル(54.5坪)
1階床面積:73.5平方メートル(22.2坪)
2階床面積:36.0平方メートル(10.81坪)
3階床面積:71.7平方メートル(21.49坪)
建 ぺ い 率:42.58%(許容50%)
容 積 率:100%(許容100%)
用 途 地 域:第一種低層住居専用
躯 体 構 造:鉄筋コンクリート壁式造 +鉄骨造
設計・施工:(株)GAB(濱元宏建築設 計事務所) 
      濱元宏、豊崎孟史
構   造:SSK 坂本憲太郎
電   気:五光電工 
      玉那覇五太、大城祐介
水   道:ライフ工業 我喜屋獎


[問い合わせ先]
(株)GAB
098-987-7331
http://gab.okinawa


撮影/比嘉秀明 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1776号・2020年1月17日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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