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2017年10月6日更新

椅子やデスクも社屋に合わせ|フランク・ロイド・ライトの家具[06]

遠藤さんがアテンドしたフランク・ロイド・ライトの建物を巡る「ライトツアー2017」編・第3弾。今回は、「ジョンソンワックス社」の話です。建物はもちろん、デスクやオフィスチェアまでライトが手掛けています。このオフィスチェアには面白い逸話も残っています。

ライトの建築を巡るツアーから「ジョンソンワックス社」

天井に円形の「ハスの葉」

ライトツアー3日目はジョンソンワックス社を訪れました。
3層吹き抜けのオフィスの天井は、まるでハスの葉のように上部が円形に広がった列柱に支えられていて、その隙間のトップライトから外光があふれ出し、明るく室内を照らしています。
現役の社屋なので、残念ながら内部の撮影は禁じられていますが、このオフィスで使用されている家具をご紹介したいと思います。


オフィスビルエントランスの列柱。これが高く伸びたものが室内にある


三脚だった 椅子の逸話

天井のハスの葉の形に合わせて、家具も正円がモチーフになっていて、椅子の座面も背もたれも丸くデザインされています。
キャスターの付いた脚の数は四脚ですが、当初は三脚で作られていました。
それについてはこんなエピソードが伝わっています。
三脚の椅子はデザインとしてはとても美しいものでしたが、安定性に欠けていて、社員たちは床に落としたペンを拾おうとするたびにバランスを失い、椅子ごとひっくり返っていました。
吹き抜けの上にある社長室からその様子を毎日眺めていた社長は、ライトに椅子のデザインを改良してくれるように懇願しましたが、ライトの返事は「椅子に姿勢良く座るように社員を教育しなさい」というものでした。
一計を案じた社長はある日、用件を作ってライトを社長室に招きます。
会話の最中に社長の手からペンが床にすべり落ちてライトの足元へ。社長はそれを拾ってくれるようにライトに頼みました。
その後何が起きたかはご想像の通りで、今日では四脚のオフィスチェアが現場で活躍しています。
このお話が事実かどうかは分かりませんが、ライトと施主の関係性を物語るなんともほほ笑ましいエピソードです。
椅子の脚の数はさておき、デスクも正円を引き伸ばした形状で、棚板や引き出し、くずカゴまでが機能的に配置されています。デスクトップが三段になっているのは、建物が三階建てであることに合わせたデザインです。
このデスクと椅子もまた、建物と一体となる美しいライトの家具のひとつです。



ジョンソンワックス社のビジターセンターに置かれたオフィスデスクと椅子


ジョンソンワックス社の研究棟。同棟の窓はガラスパイプを積み上げて作られている



[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。


『週刊タイムス住宅新聞』フランク・ロイド・ライトの家具<06>
第1657号 2017年10月6日掲載

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