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2020年1月3日更新

特集|建築関係者11人が語る 私たちの首里城〈識者〉

2019年10月31日、沖縄観光の要である首里城正殿などが焼失した。首里城とかかわりの深い建築関係者ら11人に、首里城にまつわる思い出や建築的・文化的意義、再建のアイデアを寄せてもらった。

本物志向で確証追求し復元

琉球大学名誉教授
NPO沖縄の風景を愛(かな)さする会 理事長
池田孝之さん


今から約30年前、首里城の復元を念頭にそれを囲む城郭の範囲を国営公園とする構想が始まった。その元になったのは古都首里の歴史的風土保全の方向性を示した「首里杜(すいむい)構想」である。

首里城は北東側と南西側の河川・湧水等の水系に囲まれた高台の頂点にあり、その立地や方位は風水にかなったものでもあった。城郭内は御庭(うなー)と呼ばれる格式高い広場を囲みながら、正殿をはじめとする各種建造物や庭園などがあり、まさに首里城は地域のランドマークとなるものであった。首里城公園は首里城を中心とした城郭内を国営公園とし、それを県営公園で囲む二重構造の大公園となっている。

首里城の復元にあたっては、文化財資料の発掘と再現に相当な苦労をしている。戦災で失われた城郭、建物、調度品等の資料収集から、具体的な設計図の再現まで、歴史関係者や技術者の方々は長年の努力を重ねてその再現を果たした。それは何と言っても「本物志向」であり、文化財の価値を再現すべく、すべての要素に確証を求めた。

プロセス常に伝えて
今後の再建に向けては、おそらく10~20年かかる取り組みとなるに違いない。文化財としての本物志向は今後も求めていかなければならないし、資材調達や伝統技術職人の集約にも困難が予想される。

全国、世界からも集まった熱い思いの寄付金をどう役立てるかも熟慮が必要である。建物自体は国の財産であり再建の費用は国費で賄われる。寄付者のほとんどは寄付金が建物再建に直接使われることを期待していると思われるが、その活用の考え方を早くまとめ、寄付者の思いに応える必要があろう。再建・寄付金活用プロセスを県民はもとより観光客も含めて、常に公開していくことと、その見せ方を工夫することが必要である。


モノレール車内から見えるライトアップされた首里城


池田孝之さん
1946年神奈川県出身。87年から琉球大学工学部教授を務め、2011年に同大名誉教授。11~14年には美ら島財団理事長を務めた

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