特集・企画
2019年11月22日更新
ミンサー柄でお出迎え 上質なモノトーン空間|HOTELに習う空間づくり[7]
当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。
カリーコンド美ら海(本部町)
空間コンセプト「和モダン」
▲(写真1)スタンダード(最大定員9人、53平方メートル)の客室。窓サッシや建具などの黒いラインがシックな雰囲気を演出している。中央の松の壁紙も相まってコンセプトの「和モダン」を印象付ける
生活感隠す工夫随所に
サッシや建具などは黒。水平や垂直、まっすぐ延びる黒いラインがインテリア(装飾)代わり。壁面に描かれた琉球松と相まってシックな雰囲気を醸す。シンプルな空間だからこそ、空間コンセプトである「和モダン」が引き立つ。ことし10月、本部町に開業したコンドミニアム「カリーコンド美ら海」のスタンダードルームだ=写真1。
5階建て全25室のうち、23室がこのスタンダードルームになっている。低層階からは生命力あふれるやんばるの木々を間近に楽しめ、高層階からは豊かな緑越しに東シナ海が望める=2。
カリー観光が初めて開業した宿泊施設。同社の代表取締役・鹿川幸正さんは「客室は約50平方メートル以上あり、最大で9人泊まることができる。家族や友達とともに、上質でゆったりとした空間でくつろいでほしい」と話す。洗面台やトイレ、浴室は二つずつあり、グループでの宿泊に適している。
コンドミニアムとホテルとの大きな違いは、キッチンや洗濯機などの生活設備が備えられていること。もちろん同施設にも備えられているが、うまく隠されている=3。
設計を手掛けた松田・伸設計の赤嶺洋一さんは「オーナーは、高級感のある空間を希望していたので、生活感を表に出さないように〝間取りパズル〟を繰り返した」と話す。例えば、小さな洗濯室を設けてそこに洗濯・乾燥機を収納。さらに、この洗濯室で和室の奥にあるキッチンを目隠ししている=下の図面参照。
▲.ベッドルームのほか、畳間に布団を敷いたり、ソファベッドを使えば最大9人が宿泊できる。現在、オープン記念プランを提供。3月末までは、1室1万6000円(税別)で宿泊できる。問い合わせは同ホテル(電話=0980-48-2838)
アクセスはカリー観光が運行しているバス「美ら海ライナー」を利用すると便利。那覇や北谷を経由して本部へ行く。
▲2.南側は一面が窓。室内にいてもやんばるの豊かな自然が堪能できる
▲3リビングからは見えないが、和室の奥にはキッチンが備え付けられている。冷蔵庫やレンジ、食器なども用意されている
ギャップで伸びやかさ演出
広々として開放感たっぷりの客室だが、天井高は最高で2.5メートル。景観条例の関係で、リゾートホテルにしてはやや低めにとどめなければならなかった。それでも伸びやかに感じるのは、南側全面に設けられた窓と「ギャップの効果」だと赤嶺さんは説明する。「あえて玄関前の天井高は2.1メートルと低めにし、さらに黒い仕上げ材を用いた。玄関を開けると、この引き締まった空間からブワッと南側の大開口へ視線が抜けていく。そのギャップで開放感を強調している」
同ホテルには、あちこちにカリー観光のトレードマークであるミンサー柄が用いられている。圧巻なのは北側の外観=4。ミンサー柄のアルミ板が5階から2階まで貫くようにして並んでいる。同社の執行役員・鹿川幸一郎さんは「海外や県外のお客さまへ、ミンサー柄に込められた『いつ(五つ)の世(四つ)までも末永く』との意味を説明すると感心される。コミュニケーションの糸口にもなっている」と顔をほころばせる。
実は、客室の壁面に描かれた松にも意味がある。水墨画の琉球松のほかに紅型のイメージでデザインされた「松文」(まつもん)の部屋=7=もある。いずれも「幸せが『まつ』、大自然が『まつ』場所」という、デザイナーの思いが込められている。
鹿川代表は「暑さが和らぎ、散歩しやすい季節になってきた。1月には八重岳桜まつりもある。県内の方にも当施設を利用していただきながら、やんばるの自然を堪能してほしい」と話した。
▲4.北側外観。ミンサー柄のデザインがインパクト大。廊下を目隠ししつつ、光や風は通す。デザイン性と機能性を両立している
▲5.スタンダードルームのバルコニー。直線的にせず、弧を描くように設けることで「隣との距離を離し、プライバシーを確保した」と設計した赤嶺さんは説明する
▲6.リビング・ダイニングに隣接するベッドルーム。障子を開ければワンルームに、閉めれば個室になる
▲7.壁紙は、写真1の水墨画調の松と、この紅型調の「松文」の2種がある
空間コンセプト「和モダン」
▲(写真1)スタンダード(最大定員9人、53平方メートル)の客室。窓サッシや建具などの黒いラインがシックな雰囲気を演出している。中央の松の壁紙も相まってコンセプトの「和モダン」を印象付ける
生活感隠す工夫随所に
サッシや建具などは黒。水平や垂直、まっすぐ延びる黒いラインがインテリア(装飾)代わり。壁面に描かれた琉球松と相まってシックな雰囲気を醸す。シンプルな空間だからこそ、空間コンセプトである「和モダン」が引き立つ。ことし10月、本部町に開業したコンドミニアム「カリーコンド美ら海」のスタンダードルームだ=写真1。
5階建て全25室のうち、23室がこのスタンダードルームになっている。低層階からは生命力あふれるやんばるの木々を間近に楽しめ、高層階からは豊かな緑越しに東シナ海が望める=2。
カリー観光が初めて開業した宿泊施設。同社の代表取締役・鹿川幸正さんは「客室は約50平方メートル以上あり、最大で9人泊まることができる。家族や友達とともに、上質でゆったりとした空間でくつろいでほしい」と話す。洗面台やトイレ、浴室は二つずつあり、グループでの宿泊に適している。
コンドミニアムとホテルとの大きな違いは、キッチンや洗濯機などの生活設備が備えられていること。もちろん同施設にも備えられているが、うまく隠されている=3。
設計を手掛けた松田・伸設計の赤嶺洋一さんは「オーナーは、高級感のある空間を希望していたので、生活感を表に出さないように〝間取りパズル〟を繰り返した」と話す。例えば、小さな洗濯室を設けてそこに洗濯・乾燥機を収納。さらに、この洗濯室で和室の奥にあるキッチンを目隠ししている=下の図面参照。
▲.ベッドルームのほか、畳間に布団を敷いたり、ソファベッドを使えば最大9人が宿泊できる。現在、オープン記念プランを提供。3月末までは、1室1万6000円(税別)で宿泊できる。問い合わせは同ホテル(電話=0980-48-2838)
アクセスはカリー観光が運行しているバス「美ら海ライナー」を利用すると便利。那覇や北谷を経由して本部へ行く。
▲2.南側は一面が窓。室内にいてもやんばるの豊かな自然が堪能できる
▲3リビングからは見えないが、和室の奥にはキッチンが備え付けられている。冷蔵庫やレンジ、食器なども用意されている
ギャップで伸びやかさ演出
広々として開放感たっぷりの客室だが、天井高は最高で2.5メートル。景観条例の関係で、リゾートホテルにしてはやや低めにとどめなければならなかった。それでも伸びやかに感じるのは、南側全面に設けられた窓と「ギャップの効果」だと赤嶺さんは説明する。「あえて玄関前の天井高は2.1メートルと低めにし、さらに黒い仕上げ材を用いた。玄関を開けると、この引き締まった空間からブワッと南側の大開口へ視線が抜けていく。そのギャップで開放感を強調している」
同ホテルには、あちこちにカリー観光のトレードマークであるミンサー柄が用いられている。圧巻なのは北側の外観=4。ミンサー柄のアルミ板が5階から2階まで貫くようにして並んでいる。同社の執行役員・鹿川幸一郎さんは「海外や県外のお客さまへ、ミンサー柄に込められた『いつ(五つ)の世(四つ)までも末永く』との意味を説明すると感心される。コミュニケーションの糸口にもなっている」と顔をほころばせる。
実は、客室の壁面に描かれた松にも意味がある。水墨画の琉球松のほかに紅型のイメージでデザインされた「松文」(まつもん)の部屋=7=もある。いずれも「幸せが『まつ』、大自然が『まつ』場所」という、デザイナーの思いが込められている。
鹿川代表は「暑さが和らぎ、散歩しやすい季節になってきた。1月には八重岳桜まつりもある。県内の方にも当施設を利用していただきながら、やんばるの自然を堪能してほしい」と話した。
▲4.北側外観。ミンサー柄のデザインがインパクト大。廊下を目隠ししつつ、光や風は通す。デザイン性と機能性を両立している
▲5.スタンダードルームのバルコニー。直線的にせず、弧を描くように設けることで「隣との距離を離し、プライバシーを確保した」と設計した赤嶺さんは説明する
▲6.リビング・ダイニングに隣接するベッドルーム。障子を開ければワンルームに、閉めれば個室になる
▲7.壁紙は、写真1の水墨画調の松と、この紅型調の「松文」の2種がある
取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1768号・2019年11月22日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
これまでに書いた記事:351
編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。