スクラップの町 閑静な住宅街へ[南城市佐敷 津波古地区]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

地域情報(街・人・文化)

2018年9月7日更新

スクラップの町 閑静な住宅街へ[南城市佐敷 津波古地区]

[歩いて見つけた!地域の住み心地ー24ー]「馬天」という地名でよく知られる南城市津波古地区は、戦後のスクラップブームで発展してきた地区だ。本島・離島から働き口を求めてきた人々でにぎわっていたが、現在では閑静な住宅街になっている。南城市内では珍しく用途地域が定められ、住環境整備が計画的に進められている。南城市役所の移設、国道331号の拡幅で今後の発展に期待がかかる。

地域情報(街・人・文化)

タグから記事を探す

道路拡幅で発展期待

働き口求め離島からも
与那原町に隣接する南城市佐敷の津波古地区。馬天小学校のふもとの平地に広がる碁盤目状の集落が津波古地区の本集落だが、戦後、米軍に接収された。家に戻れない住民たちは、津波古交差点から東側、馬天港桟橋通り周辺に暮らし始めた。いつからか「馬天」と呼ばれるようになったが、その理由は定かではないという。

「戦後は働き口があり、人が集まる場所がたくさんあったよ」と話してくれたのは、津波古自治会の高江洲順達会長(66)。馬天港には、沈船などの鉄くずを集める英国籍のサルベージ会社があり、現在の馬天自動車学校もスクラップの集積場だったそう。大東島などの離島航路が馬天港にあったため、働き口を求めて本島内だけでなく離島からも人が流入し、1950年代には爆発的に人口が増えたという。

現在の馬天児童公園から国道331号につながる通りは商店や旅館、銭湯などもあり、にぎやかな通りだったという。「今では大きな働き口はなくなり、閑静な住宅街に変わってしまったね」と高江洲会長は少し寂しげな表情を見せた。


計画的に住宅街へ
津波古地区の人口は現在も微増しているという。2012年に完了した区画整理以降、病院やスーパーができて住み心地は良さそうだ。周辺にはまだ建てたばかりというような建物が多い。㈱南新物産の担当者が「特殊な地域」と話すとおり、同地区は市内では珍しく住居系や商業系の用途が定められ、計画的な住環境整備がなされている。

一方で東海岸という立地上、那覇などの都心部から離れ、沖縄自動車道ICも遠いため、物件を探しに来る人は少なめ。担当者は「3~5年前からアパート建設は盛んだが入居希望が少なく、供給過多状態」と話す。

地区内の病院の単身従業者など向けだろうか、賃貸物件では「ワンルームや1Kが多く、家賃は4万円程度。2LDKだと5万円台、3LDKだと7万円台」。駐車場ありの物件がほとんど。

土地の相場は「国道沿道は坪当たり20万円程度、内側では15~18万円程度」。与那原町東浜より手ごろで、建売住宅もすぐに売れるという。

ことし5月下旬に南城市役所が佐敷新里に移設。今後は、国道331号が右左折帯がある2車線道路に拡幅される計画もあり、「これから発展していく地域になりそう」と担当者は期待を込めた。



【1】ことし5月に佐敷新里に移転した南城市役所新庁舎近辺から、津波古地区を望む。中央に見える高い建物が沖縄メディカル病院。それ以外で高い建物はぽつぽつとある程度で、ほとんどが低層の住宅やアパートだ


【2】区画整理された場所には、新築の一戸建て住宅が並ぶ。売買が始まったのは東日本大震災から約2年後で、当時はあまり売れなかったというが、現在では完売。ことし3月に自主防災委員会が立ち上がり、今後は津波避難訓練を開催する予定だという


【3】中層のアパートなどが建ち始めている。写真左手前や奥の建物は現在建築中

やーるん
ところどころにサトウキビ畑が見えるるん♪ 今では農業も減ってきているのだそう


エリアマップ


校区

津波古地区全域で、小学校は馬天小学校、中学校は佐敷中学校

家賃

単身者向けの1ルームや1Kは4万円程度。2LDKは5万円台。3LDKは7万円台。駐車場は無料または1台当たり3千円程度

土地の価格

国道331号沿道は坪当たり20万円程度。内側は15~18万円程度


津波古地区の賃貸物件
ひとりと一匹、新築1K




(株)南新物産の担当者が薦める物件は、ペット(小型犬のみ)可の1Kの物件だ。病院・スーパーも近く、「3階からは海が見える」という。ことし3月に完成した。家賃は月当たり3万6千円。別途、駐車代が3240円(税込)。敷金・礼金無し。問い合わせは同社南城支店(電話=098-945-0310)まで。

 

四つの伝統芸能保存会


津波古地区には、棒術、獅子舞、天人(あまんちゅー)、みるくの四つの保存会があり、それぞれ10~15人の継承者がいるという。旧盆ウークイ後に無縁仏をあの世へ送るために行われるヌーバレーなどで演じられる=写真(津波古自治会提供・17年)。「今では継承者も年配になってきていて、芸能文化の継承が課題」と高江洲会長は語った。

※やーるんは、タイムス住宅新聞社のゆるキャラ。


編集/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1705号・2018年9月7日紙面から掲載

地域情報(街・人・文化)

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る