建築
2018年2月16日更新
考えよう!沖縄の省エネ住宅[07]|肝は「実情を踏まえる」こと
文・松田まり子(NPO蒸暑地域住まいの研究会)
2020年に全建築物への義務化が予定されている建築物省エネ法(オレンジ色の概要)。そのポイントについて、「省エネ」を「ダイエット」にたとえ、漫画風にして分かりやすく紹介します。
建築物省エネ法 ダイエット例に紹介!
肝は「実情を踏まえる」こと
パリ協定で日本は2030年までに、2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減するという削減目標を宣言した。その目標達成に向け、国土交通省は住宅を含む全建築物を対象とし2020年をめどに、段階的に省エネ基準義務化を行うと発表した。また、ビルや住宅などの建築物におけるエネルギー消費に関わる「業務その他部門」と「家庭部門」の温室効果ガス排出削減目標を、それぞれ2030年度に2013年度比約40%減とすることとなっている。2015年7月8日には建築物省エネ法を公布し、寒冷地や、温暖地、蒸暑地など地域ごとに異なる省エネ基準を設定した。
実際に蒸暑地である沖縄の基準値の、外皮基準(平均日射熱取得率η値3.2)は、現況のほとんどの住宅が達成困難であることが予想される。このまま義務化に進むと、2007年の改正建築基準法による建設パニックのような事態になるのではないかと危惧される。沖縄県は今後基準に対する方向性等慎重に検討し声を上げていく予定である。
地球上で食料(エネルギー)の消費過剰が問題になっている。日本は世界に向けて2030年までに今より痩せます宣言をした。日本のダイエット作戦が始まった。
国土交通省は、もう工場さんたちにはダイエットを頑張ってもらっていて、これ以上規制しても食料(エネルギー)を減らせないところまで来ているからと、今まで手をつけていなかった家庭さんたちに頑張ってもらうことにした。ただダイエット義務化となると、多くの人の生活に影響が及ぶので慎重にダイエットメニューを設定しなければならない。たくさん食事(エネルギー)を取る寒冷地さんと、あまり取らない蒸暑地域さん(沖縄)と、地域で設定メニューを変えた。
メニューを見てみると、寒冷地さんのそれは、一見厳しいけれど、やり方も容易で健康にも良いし、光熱費も安くなるのが明らかである。「分かっていたことだけど。今がやるべき時期かもしれない。頑張るか!」という意見もある。
ところが蒸暑地域さんは、ダイエットメニューに対しては首をかしげている。「えー! 今までおやつも食べたくて普段の食事は食べ過ぎないよう調整していたのに、それは認められないの?」。ストレスがかかって反動が起こってしまったり、さらには逆に不健康になったりしそうな内容もある。蒸暑地域さんは、このダイエットメニューの内容をよく理解して、実情に合わせた内容へと精査し、国に相談していく予定である。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1675号・2018年2月16日紙面から掲載