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2017年3月24日更新

頭でっかちにはワケがある[Nさん邸(沖縄県南城市)]|愛しのわが家・まち

上が大きくて下が小さい“頭でっかち”な家。アンバランスにも思えるその形で家を建てたのはなぜなのか? 施主に遊び心があったから? それとも設計者が独創性を誇示したくて? 2軒の実例を取材して分かったのは、頭でっかちのワケはそのどちらでもないということだった。

眺望と広さにこだわって

Nさん邸(沖縄県南城市)

仕事しやすい場所求め

音楽家のNさん(70)のアトリエ兼住宅は、完成する前から周囲の関心を集めていた。
「皆さん、建設中が一番気になっていたみたいです。『施工ミスじゃないの? 大丈夫?』って心配されないように、『これ、設計通りなんです』、『決して施工で歪んだのではないんですよ』と私がいちいち説明するものだから大笑いされました」
自身も音楽家である妻のRさん(60)の笑い声が、東の窓から差し込む穏やかな光に満たされたダイニングルームに響く。
Nさん邸は、上に行くにつれて大きくなる頭でっかちな形。家というよりはまるで巨大な彫刻作品のような印象のその建物は、何も施主のNさんや設計をした建築家が奇をてらってこの形になったわけではない。Nさんの希望を「素直に」建物にしたらこうなった。
「僕はもともと北海道の生まれなんです。それも、人間よりも鹿や熊の方が多い道東(どうとう)。だから周りに自然環境がないと落ち着かないんですよね」
Nさん夫妻は那覇のマンション住まい。長年、Nさんは自宅近くに一軒家を借りて仕事場にしていたが、もっと自然豊かな場所で創作活動に打ち込みたいとかねて望んでいた。
土地を探し始めて数年、ようやく旧大里村に「静かで、高台で海も見えて、周辺を散歩しても楽しい」約40坪の土地を見つけた。設計は、知人に紹介された建築家の大嶺亮さんに依頼した。
「できるだけ仕事のしやすい場所をつくってくださいとお願いしました。見通しの良い広々とした部屋で仕事をしたいと。あとはお任せでしたね」

要望をそのまま形に

「見通しの良い」仕事場を望むNさんの希望をかなえるべく、大嶺さんは建物を3層構造にして、最上階に仕事場をつくることにした。その高さまで上げないと、中城湾と知念半島のダイナミックな眺望を十分に望めなかったからだ。
Nさんが出したもう一つの条件は、大嶺さんの頭を悩ませた。仕事場を「広々とした部屋」にするとなると、資料室をつくる予定の1階とダイニング兼ミーティングルームになる2階よりも、3階の方がボリューム的に大きくなってしまう。
「アトリエが最上階で、しかも一番広いので、どうしても頭でっかちになってしまう。そうならないようにいろいろと考えたのですが、ある時発見したというか思いついたのは、素直にこのままを形にすればいいということでした」
昨年秋に完成した、まるで未来都市のモニュメントのような形のアトリエで仕事をするようになってから、Nさんに変化が起きた。
「仕事の持続時間が圧倒的に長くなっています。気がつくと6時間ぐらいぶっ通しでやっている。持続時間が長いということは集中が深いということだから、仕事の質にも良い影響が出ているかもしれません」
仕事仲間も口々に、「落ち着くなぁ」と言ってうらやましがるというNさん邸。古くは城下町だったという閑静な住宅地にすてきな彩りを添えているその建物は、Nさんの望みが大嶺さんの手によって「素直に」形になったものだからこそ、テイラーメイドのスーツのように、Nさんにも彼の仕事にも、しっくりと馴染むのだろう。


「眺望が良くて広々とした仕事部屋が欲しい」というNさんの希望をかなえるために生まれた頭でっかちな家。閑静な住宅地に建つが、不思議なほど違和感がない


反対側から見たところ。「岩の塊みたいにも見えるこの形は、『ここで仕事をしていこう』というNさんの決意を表す形でもあると自分なりに解釈して、このデザインに決めました」と設計した建築設計事務所ファイブディメンジョン共同代表の大嶺亮さんは語る


3階(法規的には地下1階・地上2階建ての2階)の仕事部屋。窓の外には中城湾と知念半島の絶景が広がる。「集中できるのはこの窓が効いてるよね。ものを考える時って無意識に近くを見たり遠くを見たりするけれど、ここから外を見れば展望がだーっと広がるから」とNさん


アーティストなどと打ち合わせをする部屋。「こんな遠くまで来てくれるか心配だったけど、みんな来たがります。昨日来た舞踊家は住み着きそうなぐらい気に入っていたよ」


ピアノを弾いた時の音響を考えて、平行な壁をなるべくつくらないようにしたと大嶺さんは言う。「平行面があると、音が反響し過ぎてしまうんです」。天井をフラットにしなかったのも音響のためだ


「頭でっかちにはワケがある」もう一つのお家は、
施主の人柄からひらめいて[Iさん邸(沖縄県那覇市)]
 


ライター/馬渕和香
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1629号・2017年3月24日紙面から掲載

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