排除と貧困を生む車社会|みんなで考えよう!豊かなまち③|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

木立

スペシャルコンテンツ

地域情報(街・人・文化)

2016年6月17日更新

排除と貧困を生む車社会|みんなで考えよう!豊かなまち③

車依存社会と公共交通の未整備は、障がい者の社会参画を阻む上、新たな生活困窮者やリスクを生む。今回も、なは市民活動支援センターでアルバイトする沖縄国際大学生・田畑秋香さん(車いす利用者)と渡嘉敷初音さん(聴覚障がいサポート)に聞いた。

物理的バリア③ 車社会


車いす利用者にとってバスとの乗り換えが困難な古島駅

沖縄の都市部の人口密度は、首都圏の大都市とまったく同じレベルにある。さらに、沖縄県は1990年代後半からの自動車保有台数増加率が全国1位。軽自動車の増加率は15年前の2・75倍で、ダントツ1位だ。人も車も過密状態にある。一昨年報道された「那覇市の渋滞は全国最悪」は、当然の結果だ。どう考えても、一刻も早く車依存社会から公共交通中心の社会に変えるべきだ。
にもかかわらず、沖縄では車がないと生きていけない。これまで見てきたように、車いす利用者など障がい者が移動するにあたり、公共交通は非常に使いにくい。料金も高過ぎる。高くて使えないから、どんな貧困世帯も働くために借金をして車を買わざるをえない。車検や駐車場の費用もかかる。驚くのは、賃貸駐車場で車庫証明を取るのに5万円ほど取られることだ。他県では聞いたことがない。
経済的に苦しいながら大学に通う学生は、高くて時間通りに来ない公共交通を敬遠し、原付きバイクを使う。私のところで学ぶ女子学生は、昨年1年間に4回の事故に遭い、ケガをした。若者や女性がこんなリスクを背負わされる社会に、未来はあるのだろうか。
障がい者には、車に乗りたくても乗れない人がたくさんいる。公共交通頼みだが、インタビュー=左囲み=で田畑さんが話すように、社会は冷たい。古島駅では、車にひかれそうになりながら、雨にもぬれながら、それでも宜野湾からバスで来てゆいレールに乗り換えはできる。しかし、宜野湾行きバス停には、せっかくのエレベーターが使えない。モノレール駅からも1階ロータリーからも、車いすで行ける道は見つからなかった。
せっかくバリアフリー施設を造っても、「とりあえず作っておけばいいだろう」というまちの構造が、渡嘉敷さんが言うように「やさしいふりをして、実は投げやり」な人を増やすのではないか。
 

行けない場所が多過ぎる街
―車社会で困難なことは?
 田畑  初めてアルバイトをしてみて、車いす利用者が自力で行ける場所に限りがあることを改めて実感した。私は車の運転ができないので、ノンステップバスが行くところでないと移動できない。今後の就職活動にあたり、自分が勤務できる場所が極めて限られていることを知った。沖縄は、公共交通を使って自力で行けないところが多過ぎる。
 

-公共交通がよくなれば課題は減る?
 田畑  ハローワークが主催する障がい者向け会社説明会の場所が、実際は大学からバスで行けないところだったりする。やはりこの社会は、車を前提に作られている。会社説明会に行けたとしても、さらに大きなバリアがある。大学で行われるインターン説明会でさえ、混雑で入れない。どちらも、立っている人がたくさんいる後ろになり、しかも低い姿勢なので、話している人の声がまったく聞こえない。

-バリアフリーは交通や施設だけの問題ではない。
 渡嘉敷  やさしいフリをしていて、実は適当にあしらう人が多い。投げやりな感じさえする。秋香がノンステップバスに乗る際、後部扉ではなく前の狭いドアから無理やり乗せられることがある。4月から一緒に通勤するようになって3回あり、見ていてヒヤヒヤする。「とにかく乗せることができたら、何でもいいや」という感じ。
 田畑  まちの構造がそうなっている。宜野湾からバスで来て古島駅でモノレールに乗る際、エレベーターは道路の向こうでとても遠い。帰る時はエレベーターでバスが通る道路までは降りられても、肝心のバス停とつながっていないため、行けない。建物はバリアフリーでも、使えない。
 渡嘉敷  それと、まちなかで秋香と一緒にいると、ヘルパーだと思われてしまうことが多い。何か用事をする時、「付き添いですか?」と聞かれる。私は友人として一緒にいるので、質問があれば秋香に聞くよう促すことがしばしば。障がい者は常に介助者といなければならない、と思われているのかも。
 田畑  私と目も合っているのに、なぜ同伴者に聞くのかな。私に直接聞いてほしい。障がい者はいつも親やヘルパーが一緒だと勘違いされている。社会がそうさせている気がする。



なは市民活動支援センターでアルバイトする2人。「ここは完全バリアフリーで、車いす利用者にとって交通アクセスもよく、通勤できる」と田畑さん

文・稲垣 暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。なは市民活動支援センターで非常勤専門相談員。沖縄国際大学・沖縄大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組での講師を務める。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1589号・2016年6月17日紙面から掲載

地域情報(街・人・文化)

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:649

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る