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2024年11月1日更新
暖色系の光&陰影をつくってリラックス|照明を見直し居心地良い空間に|家と心理㉜
空間デザイン心理士Ⓡで、一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが空間を心理的に解析。今回は心や脳に大きく影響する「光」について。「リラックスしたい場所は暖色系、特にオレンジ色の照明がおすすめです」と話します。
暖色系の光&陰影をつくってリラックス
照明を見直し居心地良い空間に
だんだんと涼しくなってきました。模様替えなどをして、気分を変えたくなる季節じゃないでしょうか?
模様替えの方法として、「家具を買い替える」「ものの配置を変えてみる」「小物を新しく加える」「内装の色を変える」などがあります。
それでもなんだか物足りなさを感じたときは、「明かり(照明)」を見直すのも良いでしょう。明かりは、人の心に大きく影響するため、落ち着く居心地の良い部屋をつくるのに欠かせない要素の一つなんです。
外での仕事や学校生活は、脳を緊張させます。だからこそ、家では脳をリラックスさせる必要があります。例えば柔らかい光は、気持ちを落ち着かせてくれてリラックスしやすくなります。
今回は居心地の良い空間をつくるための、照明のポイントをご紹介します。
おすすめの照明は暖色系
暖色系、特にオレンジ色の光は目に優しくリラックスできます。また、人は夕方以降にオレンジ色の光を浴びることで生体リズムが整うとされています。そのため、書斎や子ども部屋など、文字をしっかり読む必要がある場所以外の照明は暖色系にするのがおすすめです
暖色系照明の部屋と白色系照明の部屋。
暖色系の部屋の方が優しく、落ち着く感じがしませんか?
①光の色は、暖色系(オレンジ)がおススメ
書斎や子ども部屋など、きっちり文字を読む必要がある場所以外、光の色は暖色系、特にオレンジ色をおススメします。
目から入る情報は、感覚の約8割を占めています。なので、目にとって「強い光」と感じる白い光よりも、優しいと感じられる暖色系の光の方がリラックスしやすいためです。
また、人は夕方以降に夕日のような暖色系の光を浴びることで、生体リズムが整いやすくなることが分かっています。昼間は、太陽光や会社・オフィスで明るい光を浴び、帰宅後はオレンジがかった暖色系の光を浴びると、生体リズムが整いやすくなるのです。
生体リズムとは、心拍数や呼吸、ホルモンなど、生命現象の周期的な変化のこと。生体リズムが乱れると、メタボリック症候群や糖尿病などの生活習慣病、がんやうつ病などの要因となることが多くの研究で明らかにされています。
部屋の照明を暖色系のものに変えるのが難しい場合は、リラックスしたいときだけ天井照明を消してしまって、暖色系のフロアライトやテーブルランプを使うと良いでしょう。
ビフォーは天井のみに照明を設置。直線的な配置は単調な印象になりがち。アフターは天井+フロアと高低差を付けることでリズム感のある空間、かつ陰影が生まれ光を柔らかく感じさせます
②多灯にする。照明の位置を工夫する
日本の家は、かなりの割合で最初から各部屋に照明がついていることが多いです。その照明は部屋全体を照らすだけのパワーがあるので、ほかの照明を利用することは少ないのでしょうか。
確かに、明るさだけならば、それで十分です。照明の本来の役目は物を見るためなのですが、「居心地のいい空間」を求めるなら、明かりをいくつか準備して夕方以降は、柔らかい光にするのがおススメです。
柔らかい光は、曲線でつくります。そのためには光源の位置が一直線にならないように心掛けましょう。例えば、「天井+フロア」照明にして、光源に高低差を付けてみましょう。その際、使用しやすいのが、フロアライトやテーブルランプです。
同じ高さに明かりが集まると陰影ができにくく、曲線のリズムは生まれなくなります。高低差をつけることで、明るいところと暗いところのメリハリが生まれ、そのグラデーションによって柔らかい光をつくることができます。
明かりを目線の高さに持ってくると落ち着く空間になります。寝室などにおすすめです。天井照明を消してしまって、フロアライトだけを使えば、周りの情報が目に入りにくくなり自分だけの空間になる
③明かりは、横に・自分のそばに置く
もう一つ、落ち着く空間をつくるポイントは明かりの位置を目線の高さにもってくることです。天井からの光は、周囲をすべてくっきり映し出すため、視界に入る情報が多くなり落ち着きません。
落ち着いたカフェやバーなどは、テーブル面を中心に柔らかな光で照らしていますが、天井部分の光はあまり強くないんじゃないでしょうか。
これを自宅でマネするなら、天井照明を消して、フロアライトだけを使ってみましょう。周りが暗くなり情報がある程度遮断され、自分だけの空間に早変わりします。読書を楽しみたいときなどは、集中力とリラックスを同時に高めてくれますよ。
いかがでしたでしたか? 照明も、人の脳と心にさまざまに影響します。ぜひ見直して「居心地の良い空間づくり」に役立ててくださいね。
[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。
http://ielie.net
第2026号・2024年11月01日紙面から掲載