2024年9月13日更新
[Okinawa Idea Design Contest 2024]学生がリノベで設計力競う| 総合資格学院 沖縄校
建築を学ぶ専門学生らによる「沖縄アイデアデザインコンテスト2024」(主催・総合資格学院沖縄校)が8月9日、那覇市の第一牧志公設市場で開かれた。今回の課題は、実際にあるお土産品店のリノベーションで、バーを併設したプランが最優秀賞を受賞した。
建築を学ぶ専門学生らによる「沖縄アイデアデザインコンテスト2024」(主催・総合資格学院沖縄校)が8月9日、那覇市の第一牧志公設市場で開かれた。今回の課題は、実際にあるお土産品店のリノベーションで、バーを併設したプランが最優秀賞を受賞した。
課題は実店舗のリノベ
同コンテストには、インターナショナルデザインアカデミー、サイ・テク・カレッジ美浜校、パシフィックテクノカレッジ、沖縄職業能力開発大学校の4校から22人の学生が参加。学校混合の5チームに分かれて、設計力や図面・模型の作製技術、プレゼン力などを競った。4回目となる今回は初めて、実際に建っている物件のリノベーションが課題となった。那覇市の市場中央通りに面した「おみやげ品店 照屋」=下写真=の課題を洗い出し、リノベーションで解決策を提案する。
鉄筋コンクリート造のちとせ商店街ビル1階にある「おみやげ品店 照屋」。市場アーケード通りにあり、写真右側は飲み屋の多い裏通りへ続く
課題は審査日の約1カ月前に通知された。学生たちは現地に足を運んで周辺環境や客層の調査、店主からの聞き取りをして、この場所で必要とされ継続できる空間のアイデアを固めた。審査前日は夜遅くまで模型や図面を作成し、最終日のプレゼンテーションに挑んだ。
審査前日の8日には那覇市の総合資格学院で模型や図面作成をした
最終日の9日には那覇市の第一牧志公設市場に移動し、審査員の前でプレゼンテーションを行った
最優秀賞は昼夜2面性
チーム「PTA」は「商店街にお土産品店はたくさんあるが、体験型の施設は少なかった」とし、沖縄の紅型や琉球ガラスなど伝統工芸の制作体験ができる施設を提案した。床をガラス張りにして下に砂を敷き見た目にも沖縄らしさを表現した。
チーム「モアイ」のプランは、洞窟のような休憩所。「店の表通りと裏通りでは明るさや客層が違う。それを近づけるために洞窟のような形にした。誰でもフラッと入れて地元の人と観光客の交流を生み出す場所にしたい」と説明した。
5チームの中から、最優秀賞に選ばれたのはチーム「うめまぐろ」。お土産品店を残しつつ、バーを併設して夜と昼の2面性を持たせた。居酒屋の多い裏通り側にはバーを配し、アーケード沿いはあえてセットバックしてベンチを置き、人を呼ぶ配置計画などが評価された。
同チームの石原愛華さんは「3年間出場し続けたが昨年までは2位だった。やっと1位になれてうれしい。他校の人とグループを組んだことで違う視点や、やりとりも勉強になった。審査員の先生方のコメントも将来に生かされると思う」と話した。
総合資格学院沖縄校の江崎功校長は「今回初めて学校混合のチーム編成にした。知らない人と一緒に建物を造っていくという過程は、これからの建築人生にも欠かせない。建築士の先生方の貴重な指摘も踏まえて己の力をブラッシュアップし、次のステップへ進んでもらいたい」と学生たちにエールを送った。
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『はじめまして夜の照屋さん』
作品全景
●インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科3年)翁長るみか、石原愛華
●パシフィックテクノカレッジ(建築学科1年)喜屋武恋柰、宮平萌乃夏
設計概要と評価ポイント
アーケード街と裏通りの角地に建つ「照屋」。アーケード沿いは店舗をセットバックし、ベンチなどを置いて人々の憩いの場所を造りながらお土産品店に客を呼び込む。裏通り側はバーにして、昼と夜の2極性を持たせ、明暗ある立地の面白さを強調した。
二つの空間は一部がガラス張りになったパーティションで仕切った。それにより互いの雰囲気が分かるようにし、集客面の相乗効果を狙う。
バーはお土産品店が閉まった夜しか営業せず、昼間は飲み屋街とお土産品店との緩衝空間としての機能を果たす。
審査委員からは「照屋さんが安心して営業を続けられる配慮がされている」「アーケード内には敷地ギリギリまで前に出ている店舗が多いが、あえてセットバックさせることで内外がよりあいまいになり、面白い空間になっている」などと評価された。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『ナミテラス』
●パシフィックテクノカレッジ(建築学科1年)砂川沙桜、田中健登
●沖縄職業能力開発大学校(住居環境科2年)眞栄里愛佳、長堂鈴
設計概要と評価ポイント
ガーブ川の上にできた商店街、という歴史を伝える資料館かつ、お茶を楽しめる休憩所。長い商店街の途中に休憩できる場所が少ないことから、ここで足を止めて歴史を学びつつ、人々と交流を楽しみ、その先の浮島通りなどに足を延ばすための拠点としてプランニングした。水盤に過去の商店街の写真を投影したり、曲線を描くベンチで人と人の距離を近づけるなど、建具や設備にまで工夫を凝らした。
「人を呼び込む仕掛けを徹底的に考えた跡が見える」「やりたいことが純粋に形になっている」「テーブルやベンチなど、ユニークなデザインがうまくまとまっている」と評価された。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『ゆんたく処』
●パシフィックテクノカレッジ(建築学科1年)山田航星
●インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科1年)新垣沙綾、與那覇太蔵、伊豆味航
●サイ・テク・カレッジ美浜(環境建築学科1年)仲宗根望
設計概要と評価ポイント
お土産品店にサーターアンダギー店を併設。アーケード沿いに調理場を設けて、揚げたての音や匂いで客を誘う。イートインスペースを設置し、食べ歩きにもゆったり座って食べたい人にも対応する。さまざまな人がさまざまな空間を共有しながらゆんたくを楽しめる商業施設をプランした。
審査員は「ちゃんと採算が取れそう。スケール感も良く、施主の照屋さんが立っている姿がイメージできる」「ゾーニングが良い」などと評価した。
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『伝統と革新の調和』
●パシフィックテクノカレッジ(建築学科2年)平和永、惣慶颯、田港翔人
●インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科1年)髙橋凛起、仲本正真
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『グラデーション』
●インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科3年)比嘉迅、石原昌輝/同校(同科1年)山本煌
●パシフィックテクノカレッジ(建築学科1年)渡真利大夢
仲本昌司審査委員長の総評
仲本審査委員長
まずは各チームとも2日間で模型と図面の作成、プレゼンまでこぎ着けたことを評価したい。
そして今回は、チーム内に知らない人もいる中で意見を出し合ったり、実在する「照屋」の立地や歴史など、いろいろな条件を鑑みながら形にしていくのは大変だったと思う。さらにそのプランを評価され、厳しい意見もあった。ただ、これは皆が挑戦したから得られた貴重な経験。実際の建築でも多様な人が絡み、いろいろな視点から意見が出る。意見を聞くことは大切だが、挑戦をすることも忘れず建築と向き合ってほしい。
最後に、どのプランも「やりたい」がストレートに形にできていて、気持ちが良かった。
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第2019号・2024年09月13日紙面から掲載