沖縄建築賞
2015年6月12日更新
【第1回沖縄建築賞】一般建築部門 正賞/「SOLA 沖縄保健医療工学院」(宜野湾市)/石川保氏(38)/かみもり設計
第1回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)の入賞作品がこのほど決まった。応募総数47件の中から、住宅建築部門は畠山武史氏(40)、一般建築部門は石川保氏(38)の作品が正賞に輝いた。入賞作品7点を紹介する。
第1回沖縄建築賞 入賞作品決まる
第1回沖縄建築賞には47件が応募(住宅建築部門26件、一般建築部門21件)。5月1日の書類審査で10件に絞り、同月19~21日に現地審査を行った。21日の最終審査で、審査委員長の古市徹雄氏を含む審査委員7人が議論を重ね、正賞に住宅部門は畠山氏、一般部門は石川氏の作品を選出した。住宅・一般両部門から正賞に次ぐ作品として「タイムス住宅新聞社賞」には、大城貢氏(54)の作品が選ばれた。40歳以下の若手建築士が対象の「新人賞」は該当者なし。「審査委員特別賞」は國場幸房氏(75)の作品を選出した。表彰式は6月8日(月)午後2時から、那覇市のタイムスギャラリーで開かれる。
正賞
一般建築部門 SOLA 沖縄保健医療工学院 【宜野湾市】石川保(38)
箱重ね外部空間つくる
医療系専修学校の5階建て校舎。「生徒が毎日通いたくなる学校」「教科の変更にも対応できる教室」という施主の要望を踏まえ、各教室をボックス型にし、平面的かつ立体的にスペースができるよう配置。教室の間を廊下や階段のブリッジでつなげている。
教室間のスペースは外部空間になっていて、いすやテーブルを置いておしゃべりしたり、弁当を食べたりと、生徒たちが思い思いに過ごせる。
審査では、「縦横につながる大胆な外部空間が開放感を生み、生徒の居場所をつくる提案」が評価された。倉庫や立体駐車場に囲まれた立地で、複数のボックスを組み合わせてモダンに仕上げることで、若者が校舎内に入りやすく楽しめる造りもポイントになった。
施主や、生徒のおかげで受賞できた。沖縄の温暖な気候だからこそできる開放的な空間を、これからも提案したい。(かみもり設計)
審査講評
外部空間を豊かに演出
●立体駐車場や倉庫に囲まれ、学校建築には不向きと思われる敷地で、ボリューム(ボックス型の教室)の間に作り出された、多様な外部テラスやブリッジ、吹き抜けなどがダイナミックな新しいキャンパス空間を作り出すことに寄与している。それらの空間は外と連続し、自然通風を取り入れる役割も果たしている。
●設計主旨にある「授業に出席しなくてもよいから毎日通学したくなるような学校」を、キューブ(ボックス型の教室)間の多様な隙間を用いて全体構成するという視点はユニーク。半戸外のテラスや通路をその隙間に配置することによって、亜熱帯沖縄ならではの新たな地域性の表現が展開している。上層階に見られる豊かな外部空間が1階に少なく、キューブの外に構造柱が露出している点は気になる。
●多くある吹き抜けは、雨の日には雨を、風の日には風を感じさせ、外界を身近なものにしている。廊下や階段などが外にあり、各教室につながるのだが、少しずらすことで複雑な構造を感じ、楽しげである。
●ローコストに徹し、建物の半分を占める外部空間を実現した設計者の熱意を高く評価したい。
●箱を無秩序の積み上げたようでいて、全体的にバランス感があり、段違いの教室、オープンスペースの配置、斜めやらせん状に走る階段が面白い空間を生んでいる。建物の中央の吹き抜けに面した廊下からは、階の違う教室ものぞけて、学生の特権である開放感、自由度を尊重しているようだ。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1534号・2015年5月29日紙面から掲載