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2024年3月22日更新

「1枚の布から明日の風景を」|アートを持ち帰ろう(36)

文/本村ひろみ

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「1枚の布から明日の風景を」

抽象的な図柄なのに懐かしさ

栄町に移転オープンしたKiyokawa Galleryの最初の展覧会「ふたたびの春」は紅型作家のグループ展だった。今まさに勢いのある作家から若手の斬新な感性までズラリと並ぶ展示で、見応えのある展覧会だった。

伝統の紅型に新風を吹き込む作家たち。そんな中、ある作品の前で足が止まった。潮の香りがする。橋口千佳代の作品「あたたかい海」。リズミカルで自由な線と爽やかな色彩に目が喜ぶ。抽象的な図柄なのに懐かしさを感じる。その隣には手鏡や櫛(くし)、リボンに化粧パウダー、香水に口紅などが柔らかいタッチで描かれた作品「わたしの宝物」。この作品たちを部屋に飾りたい! と思わせる輝きが作品からあふれていた。
 
「あたたかい海」
H580×W315mm 8万4000円(税込)
沖縄の北部の海をスケッチ。


記憶の中の風景 作品に

橋口の制作コンセプトは「一枚の布から、明日の風景をつくる」こと。広島出身の彼女は、小学生のころ首里城で見た「王家の紅型衣裳(いしょう)」に衝撃を受けたそうだ。多摩美で木版画を専攻し、卒業後に紅型作家になる決意で来県。紅型師・金城昌太郎氏に師事し古典紅型の基礎と精神を学んだという。「私がいつも表現したいと願うのは、誰しもが抱いている記憶の中の風景。それらの色や形を抽出し、配色し、すり込んでいくことで少しずつ作品として姿が現れていく。そうして出来上がった一枚の布が、また誰かの人生の一部となり、明日の風景となることが喜びである」と話してくれた。

「明日の風景」。まさにその言葉は私に深く響いた。この「アートを持ち帰ろう」も日々の生活が豊かなものになればと始めたコラム。新年度も心ときめく作品に出合えることを楽しみに展覧会へ足を運び、読者のみなさまにご紹介していきたいと思う。
 
「わたしの宝物」
H297×W210mm 3万1000円(税込)
子供の頃のお化粧道具でなりたいものになれた。全てが私の願いのままに。

 

紅型着物「生命の起源、私のこれから」
第27回全国染織作品展 佳賞受賞
価格は要相談


 

「サーカスの欠片(かけら)」
H283×W153mm 2万7000円(税込)

 
作家近況
アーティスト・橋口千佳代(はしぐちちかよ)
インスタグラムで制作風景など発信
http://www.instagram.com/chikayo_hashiguchi/
*Kiyokawa gallery常設スペースで作品を展示販売中

本村ひろみ
もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1994号・2024年3月22日紙面から掲載

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本村ひろみ

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ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

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