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2024年2月16日更新

ヴィンテージラグとの“めくり合い”|ラグの世界①

最近、注目を集めている海外製のラグ。特にイランやトルコなどの中東で手織りされた1点モノは人気が高い。制作されてから何十年も経過したヴィンテージラグもファンが増えている。そんな海外製のラグを扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のスタッフに、ラグの産地や制作風景、使い方などを紹介してもらう。今回はバイヤー・平井香さんが、ラグ最大の産地・イランでの買い付けの旅の様子を紹介する。

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エピソード① イランでの買い付け旅~前編~

2023年5月、イランの首都・テヘランへ。一人での買い付けは初めて。なんだか不思議な気分の中、深夜0時の便で羽田から出発した。

ドーハでの長いトランジットを経てテヘランに到着。現地を仕切るカーゼムさんと1年ぶりの再会。トレードマークのポッコリおなかが成長していてちょっと心配。

この日は空路でギャッベ(イランの遊牧民による伝統的なラグ)の故郷・シラーズに移動の予定だったけれど、乗るはずの飛行機が飛ばないとのこと。急きょ夜行バスで約1000㌔(東京から山口県の距離)を移動することになった。初めての夜行バスがイランになるとは思わなかったけどちょっと楽しみ。

バスはリクライニング機能はついているけれど、座席前の画面には何も映らないし、備え付けのUSBも電気がきていない。

シラーズへは10時間と聞いていたけれど結局15時間かけてホテルに到着。寝ていたから気づかなかったけれど、途中で故障して2時間以上止まっていたらしい。無事に着いてよかった。

バザールの中庭でラグを広げて、色やデザイン、サイズ、コンディションなどを1枚ずつ確認しながらセレクトしていく
バザールの中庭でラグを広げて、色やデザイン、サイズ、コンディションなどを1枚ずつ確認しながらセレクトしていく


心地良い「緩さ」

ホテルに着いたが、部屋のエアコンが動かない! フロントに連絡すると、別のリモコンを持ってきてくれた。原因がリモコンなのは拍子抜け。

この国は設備はあるのに動かなかったり、時間通りに物事が運ばなかったりしても「まぁ、しょうがないよね」という空気がある。日本から着いてすぐはちょっとモヤモヤするけれど、時間がたつにつれてその緩さが心地よくなってくる。

バザールに行くといつもの仲間が「また来たか! 寄ってけよ!」と笑顔であいさつしてくれる。「後でくるね!」と伝え、広場にあるいつものオープンカフェでくつろぐ。シラーズの青くて広い空の下、顔見知りの店員さんと言葉を交わし「帰ってきたなぁ」という感じ。

シラーズの街の中心にあるヴァ-キルバザールは歩いているだけでワクワクする
シラーズの街の中心にあるヴァ-キルバザールは歩いているだけでワクワクする


1点モノが山積み

最初の買い付けはLayoutを立ち上げてからずっとお世話になっているペイローおじさんのところ。もう8年のお付き合いになる。

ペイローさんの倉庫は大きくないが面白いモノが見つかる。イラン南西部のザグロス山脈付近に暮らすカシュガイやロリ、ハムセといった民族が制作したヴィンテージラグを中心に集めている。山積みのラグを見せてもらう。1枚1枚めくっていくと、経年で赤が優しい色に変化したもの、かなり使い込まれたものなどさまざま。やっぱりヴィンテージは変化も含めて面白い。

初日だからさらっと見せてもらうつもりだったが、70枚ほどセレクトしてしまった。どれも1点モノだけに、これを逃してしまったらもう出合えないかもしれないという気持ちは、お客さまも私たちも同じだ。



執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1 電話/098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1989号・2024年2月16日紙面から掲載

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