2023年10月27日更新
設備更新や効率運用がカギ|省エネ診断④
文・写真/名嘉光男(NPO法人 沖縄県環境管理技術センター)
設備更新や効率運用がカギ
中小企業のエネルギー使用状況を調査し、省エネの工夫を提案する「省エネお助け隊」。県内でお助け隊として活動するNPO法人・沖縄県環境管理技術センターの名嘉光男さんが実際の調査結果をもとに省エネのヒントを紹介する。
今回は、㈱那覇王冠の省エネ診断事例
同社は瓶の王冠や缶の製造販売、物流資材販売、機械販売などを行っている
電力の「見える化」を今回は、㈱那覇王冠の省エネ診断事例
同社は瓶の王冠や缶の製造販売、物流資材販売、機械販売などを行っている
今回の省エネ診断は、瓶などの王冠・製缶製造販売、物流資材販売、機械販売などを行っている㈱那覇王冠です。
本事業所は日頃から省エネ活動を行っていますが、エネルギー管理状況や使用状況の把握と、省エネに関する新たな知見を得たいと、省エネ診断の依頼がありました。
本事業所で使用しているエネルギーは電力が94%で、LPガスが6%です。そのため、電力消費量の削減が省エネのターゲットになります。
空調システムは業務用のパッケージエアコン+家庭用のルームエアコンを使っており、それぞれ個別で温度管理する方式です。空調機は順次、高効率型に更新しています。
照明設備のLED化はおおむね済んでいます。給湯設備は設置していませんでした。
また、電気の使用量を「見える化」して監視するデマンド監視装置は設置していませんでした。電力の使用状況を見える化すれば、最も消費電力が高い設備に着目して効率的に対策できますし、従業員の省エネ化に対する意識も高まります。
コンプレッサーに着目
本事業所では、エアコンプレッサー(空気圧縮機)で各生産機械の制御を行っています。産業分野では、利便性の高い動力源として圧縮空気が広く使用されています。一般的な製造工場では、電力消費量の20~25%がエアコンプレッサーと言われています。
具体的には、高効率設備への更新、吐出圧力の適正化、エアー漏れ対策、稼働台数の適正化や台数制御、配管の見直しなどがあります。
診断では空調設定温度の緩和、エアコンプレッサーの吐出圧力の低減、フィルター清掃などの提案をしました=右記。実施した際の予想削減金額は年間約112万円です。
◆那覇王冠の現状
エアコンプレッサー
生産分野の動力源として広く使われているエアコンプレッサーだが、消費電力も大きい。省エネには効率的な使用が重要。
多数の生産設備
そのほかにも多数の生産設備がある
◆省エネ診断による提案事項
運用改善
①事務室空調設定温度の緩和
②室内機のフィルター清掃(室外機フィン清掃含む)
③エアコンプレッサーの吐出圧力の低減
④エアコンプレッサーの吸込フィルターの清掃
⑤生産設備の不要時停止
投資改善として
⑥デマンド監視装置の導入
⑦エアコンプレッサーの高効率機器への更新
提案事項の実施における予想削減金額は112万2000円/年の見込み。
電力削減量は5.81kℓ/年
省エネ診断の補助事業(中小企業向け)
事業所のエネルギー使用状況を把握し、省エネできる項目の洗い出し、改善項目について提案するのが省エネお助け隊による「省エネ診断」。中小企業者は、国の補助(2023年度地域プラットフォーム構築事業)により1割負担で診断を受けられる。
1人での診断は1万120円、3人診断で2万2880円(いずれも税込み)。規模が大きい場合は2人、3人診断をすすめる。
▼詳細はこちらをクリック。
執筆者
なか・みつお/NPO法人沖縄県環境管理技術センター理事長、エネルギー管理士、一級管工事施工管理技士。電話=098・853・3739
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1973号・2023年10月27日紙面から掲載