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2023年8月18日更新

帰れる場所 心の支えに|こども環境学会2023年大会

「地域に生きるこども」をテーマに、こども環境学会2023年大会(沖縄)が7月7~9日、アイム・ユニバースてだこホールを主会場に開かれた。8日のシンポジウム内で行われたパネルディカッションでは、東京大学名誉教授の汐見稔幸さん、うるま市のみどり町児童センター館長の山城康代さん、沖縄大学教授の盛口満さん、琉球大学教授の清水肇さん、大妻女子大学教授の木下勇さんが登壇。地域や教育の在り方、子どもの居場所づくりの課題などについて意見を交わし、「子どもにとって、地域に帰って来られる場があることが心の支えになる」とパネリストらは話した。

盛口満さんが沖縄大学のこども文化学科の学生と取り組むワークショップの様子盛口満さんが沖縄大学のこども文化学科の学生と取り組むワークショップの様子


コーディネーターの清水肇さん(左)、コメンテーターの木下勇さん


シンポジウムで登壇したパネリスト。左から汐見稔幸さん、山城康代さん、盛口満さん
 

街づくりに子どもの声も

パネルディカッションでは地域と子どもの居場所について話し合われた。木下さんは専門である都市計画から「地域らしさがその土地への愛着を育むことにつながっていたが、戦後の都市計画によって全国的に同じような景観が生み出された。これにより、地域の関係性の変化に影響し、子どもの遊ぶ場所も限られていった」と指摘。それを受けて、汐見さんは街づくりの中で子どもの意見が反映されていないことを強調。「街づくりではどんな建物が必要か、どういうふうに道路を通すかなどが重視され、街で暮らす子どもがどうなるかが見過ごされる。子どもも参画した街づくりを行うべき」と提言した。

山城さんは児童館の子どもの様子について話した。「大学生になっても児童館を訪れたり、不登校でも児童館に来たりする子どももいる。学校以外にも子どもの居場所が地域の中にあることが大切」と強調。盛口さんは「子どもたちの成長過程で自分が帰って来られる場所があるという実感は、大人になっても心の支えにもつながるのでは」と付言した。ほかにも、山城さんは職員が子どもを継続的に支援するためには、今の労働体制では不十分と訴えた。

学校教育の在り方も話題に上った。汐見さんは「学びとは本来、分からないことに対して自分で模索し、自分なりの答えを出す。型にはまったような解き方を教える“正解主義”から教育を変革する必要がある」と持論を展開した。盛口さんは学生との会話などの例を上げつつ、「コスパやタイパといった価値観が蔓延しているのではないか。自分の労力をできるだけ最小限にして、社会の一員になろうとする雰囲気を感じた」と危機感を示した。

清水さんは「地域で生きることは人の違いを受け止め合い、多様な人が生きる環境を整えること。次世代のために地域が一体となって行動することで、沖縄では子どもの貧困を考える環境につながっている。また、自己責任論で個人に問題を切り分けていく風潮の中で、児童館のような子どもたちを受け止めてくる環境が地域の中にあることは大切」と話した。

編集/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1963号・2023年8月18日紙面から掲載

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