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2022年7月22日更新
詩情豊かな小浜島|朝ドラ「ちゅらさん」のこはぐら荘(小浜島)|絵になる風景④
「風土に根差した建築」を目指して設計活動を続ける山城東雄さんが、建築家の目で切り取った風景を絵と文章でつづります。(画・文・俳句/山城東雄)
「小浜島の夏」P10号:画/山城東雄
九つの有人島からなる竹富町。その中の小浜島で私は生を享(う)けた。幼少の頃、カエルやトンボを取り遊んだ私のふるさとである。石垣島からフェリーで約25分。西表島との間にはマンタが生息するヨナラ水道が走っており、ダイバーに人気のスポットでもある。
この小浜島は中央部に海抜100メートルの島のシンボル、うふだき(大岳)がそびえ立つ。四方の海や島の田畑を見下ろせる景色の良さから、“うふだきに登ていうし下し見りば”で始まる名曲「小浜節」が誕生している。そのせいか2001年に始まったNHK朝ドラ「ちゅらさん」の舞台に選ばれ一躍有名となり観光客も増え続けている。
また島では農耕を中心としたユンタやジラバなどが唄われ、伝統芸能が盛んで、お盆行事、秋の結願祭など、とりわけ結願祭は、奉納舞踊を幼い子から壮年まであでやかな衣装で踊り、歌舞音曲で島が一番華やぐ時である。
またもう一つの特徴に島で取れる竹は節が長く笛をつくるに最適で、島では幼少の時から笛を吹き習い、古典音楽でも島出身の横笛奏者が活躍している。
集落は今でも赤瓦屋根、石垣が多く残る。この絵は「ちゅらさん」の撮影に使われた仮の「こはぐら荘」=大盛家を描いたものである。大正の初めに建築されているが島で取れた大きめのトラバーチン(トラバーチンは国会議事堂建築にも供用されている)の、ひんぷんは、この家が村の篤農家で如何(いか)に裕福であったかを物語る。
笛の音と太鼓響けり島の夏
[執筆者]
やましろ・あずまお/1944年、竹富町小浜島出身。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て、34歳の時に東設計工房を設立して独立。一級建築士。JIA登録建築家。(株)東設計工房代表取締役。(一社)おきなわ離島応援団代表理事。著書に「沖縄の瓦はなぜ赤いのか」がある。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1907号・2022年7月22日紙面から掲載