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2022年5月20日更新

山での分かち合う暮らし|ウチナー建築家が見たアジアの暮らし②

写真・文/本竹功治
外はすでに薄暗く、トントントンとまな板を弾く音と女性たちの笑い声が道路に響きわたる。なんだろう、ハーブに魚かな? いい匂いを追いかけていくとポツンと電球が一つともった台所があった。

外はすでに薄暗く、トントントンとまな板を弾く音と女性たちの笑い声が道路に響きわたる。なんだろう、ハーブに魚かな? いい匂いを追いかけていくとポツンと電球が一つともった台所があった。道路に開けていて中の様子が丸見えだ。女性が6人ほど楽しそうに料理をしている。お店ではないので共同のキッチンなのか、それにしても薄暗いなか器用に作業をしてるなぁと思って眺めていた。

ここはタイ北部チェンマイ山岳の標高1300メートルにある集落。200年ほど前に珈琲(コーヒー)と茶畑の開拓をした人々が代々住んでいる。伝統的な高床式木造が山の斜面沿いに立ち並び、豊かな湿度に包まれた植物が敷地を覆いこむ。沖縄だと台風から守るため家同士がぎゅっと集まる風景を思い浮かべるが、ここでは山の傾斜に合わせてスキップフロアのように川の上や岩の上にも家が建っており、村全体が迷路のような不思議さを醸していた。
 
高床式木造の家が斜面に沿って立ち並ぶ。村からもう少し山を登っていくと茶畑が広がっていて、大きな滝が流れている
高床式木造の家が斜面に沿って立ち並ぶ。村からもう少し山を登っていくと茶畑が広がっていて、大きな滝が流れている


リゾートホテルに設計事務所

そもそもこの村に来たのはついでで、当初の目的はチェンマイに暮らすタイ人建築家に会いにきたのだ。以前、彼の設計した小さな宿に泊まったことがあり、土着的な感性に感銘を受け、話を伺いたいと事務所に電話をした。するとあっさりとNO(笑)。まぁ行けば会えるはずだと、チェンマイへ飛ぶ。

事務所兼リゾートホテルに到着しエントランスを抜けると、低く延びた軒先がぐるっと中庭を囲む。列柱がリズムよく空間を刻み、奥へ奥へと進むと、半屋外のレセプションに着く。

「サワディーカー(タイ語のあいさつ)、僕はカンボジアからやってきました。Mr.オンアーに会えますか」

「確認します。プライベート図書館でお待ちください」

素晴らしい蔵書がずらっ。目の前にはオフィスのドア。チムドンドン、さて何から話そう。すると、「ソーリーミスター、彼はものすごいシャイな方。対面は難しいです」

えええー!! 残念ながら会えず(泣)。けれど、彼の建築を体験したことがきっかけで山岳の集落に向かうことになったのだ。
 
リゾートホテル「ラチャマンカ」。タイ人建築家・オンアー氏の自邸兼事務所でもある
リゾートホテル「ラチャマンカ」。タイ人建築家・オンアー氏の自邸兼事務所でもある


山からの水で発電

話を集落へ戻そう。宿を探していると、青年が迎え入れてくれ、家に泊めてもらうこととなった。一通り村を案内してもらい、山の方へいくと立派な滝があった。話を聞くと、この村の電力は全て山からの水力発電でまかなっているそうだ。宿へ戻り、夕飯の支度をする。土間にかまど、薪をくべる。屋内で火をたくので屋根裏がすすで真っ黒だ。部屋には小さな電球が一つ、山からのエネルギーは皆で大切に使う。

カエルの声が響く頃、あたりは暗く、夜らしい時間が流れていた。豊かだな~、この先も変わらずあってほしい。電気を使うのを躊躇(ちゅうちょ)しつつ早めの寝床についた。



本竹功治
執筆者
もとたけ・こうじ/父は与那国、母は座間味。沖縄出身の、アジア各地を旅する建築家。2014年よりカンボジアを拠点に活動している。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1898号・2022年5月20
日紙面から掲載

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