特集・企画
2022年4月15日更新
[沖縄]心理学を基に空間整える|家と心理①
県内唯一の空間デザイン心理士®で、一級建築士、2児の母でもある前海佐季子さんが空間を心理学的に解析。居心地の良い家にするヒントを紹介する。
仕事、家事、育児の三重負担… 荒れた家が変わった!
初めまして! 私は、これまでに約120件の住宅に関わってきました。昨年起業してielie(イエリエ)を設立。「心と居場所をデザインする“建てない一級建築士”」として、心理学に基づいた住まいのコンサルティングをしています。
インテリアや家づくりの講座・ワークショップの開催や、ラジオやユーチューブで情報発信もしています。
家事動線を見直す
「あれ? ぜんぜん違う!ラクだ!」。私が初めて、住環境と人生が密接に関わっていることを実感したときの驚きです。
私の性格を一言で言うと超ズボラ(笑)。片付けが超苦手でした。しかし出産を機に、この性格を笑っていられなくなりました。仕事復帰と同時に管理職を任され、フルタイムで仕事・家事・育児のトリプル負担。夫も仕事が忙しく、部屋も荒れ放題。母としての自信もなくしつつあり、イライラの毎日。夫婦仲も最悪でした。
これはまずい! と、時短レシピや便利グッズを活用する中で、最も家事がラクになったのは「部屋の環境を整えた」時でした。生活・家事動線を見直し、自分たちに合わせた部屋づくりをすると、「面倒くさい!」が激減したのです。
私の「面倒くさい!」は平日、ヘトヘトになって帰ってきてからの夕食作り。そこで1アクションで物が取れるようキッチンの模様替えをしたことで、「ラク」と「時短」を手に入れました。
空間を整えることで良い習慣が身につき、夫との仲も良くなっていきました。
前海家のラクラク食卓
▲前海家の夕食
①洗い物を減らすため、使う食器を減らす
・ワンプレート皿で片付けラクに
・食器は白や無地などシンプルにするとオシャレ
②献立をルーティーン化
・献立は前もって決めておき、品数は1汁2菜のみで時短
・魚と肉は交互に、汁物にドバっと野菜を入れてラクに
空間が心に及ぼす作用
私が扱うテーマは「家と心理」です。
住まいに「心理学」を用いるきっかけになったのは1冊の本との出合いでした。「子供をゆがませる間取り/横山彰人著」という本で、凶悪犯の幼少期の家の間取りを建築家の視点で検証。「間取りや生活動線が夫婦や親子関係に影響を及ぼし、子どもの心をゆがめてしまう原因の一つになっている」と説いていました。
例えば、凶悪犯の幼少期は家族が顔を合わせない生活をしており、家族との触れ合いが少なかったり、離れた個室などで過ごしていたケースが多いと書かれていました。
衝撃でした。子どものころに住んだ家が人格形成の土台となり、人生にも大きく関わる場所となる。
「生涯の中で一番高額なものをつくっている」こと以上に、人生に大きな影響を及ぼすものをつくっていることを再認識しました。
それと同時に、空間と人の心と行動との関係をより深く知りたいという気持ちが芽生え、「空間デザイン心理学®」を学びました。
人は、環境や目に入るモノ、空間や雰囲気などに影響されるため、部屋を変えれば心理も大きく変化します。健康や人生の満足度、幸せにまで影響を与えていいます。なので、あなたが今、どんな気持ち・心理でその部屋で過ごしているかが、「幸せな空間」に一番大事だと考えています。
例えばソファの向きや配置を変えるだけでも家族のコミュニケーションの質は変わります。だからこそ、空間づくりに心理学は必須だと考えています。
心理学を基にした空間づくりを紹介していきます。
「集まりたくなるリビング」とは
▲皆でゴロゴロできるソファーは思わず座りたくなる(引用/モーブル社のドロシー)
①居場所がたくさんあって、室内が明るく、リラックスできる空間
②すべて「自然に」がポイント。「自然と」目が合い、「自然と」会話が弾む家具の配置。
③家族の心理的な距離が近く、互いの存在を感じられる空間
[文・イラスト]
まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹で暮らす。http://ielie.net
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1893号・2022年4月15日紙面から掲載