光にゆらめく瑞々しい感性|アートを持ち帰ろう(12)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2022年3月25日更新

光にゆらめく瑞々しい感性|アートを持ち帰ろう(12)

文/本村ひろみ

光にゆらめく瑞々しい感性

晴れやかな日の床の間に飾って


卒業シーズン。花束を手にした笑顔の学生たちを見かけると、甘酸っぱい思い出が呼び起こされいろいろな感情が湧き起こる。

「あの頃の私は日々何を考えていたのだろう」。考えていたことは忘れてしまったけれど、記憶の風景はフレアのかかった写真のようにおぼろげに心に残っている。

この時期は卒業や修了の作品展が開催される。勢いのある新しい何かに出合える期待感を持って会場に出かけると、空間にあふれた熱量に“若さ”の意味を改めて知る。若さは一斉に花咲く春のよう。まばゆく、そこにいるだけで温かい気持ちになる。


ピュアな目でシンプルに

沖縄写真デザイン工芸学校の「卒展」に出かけた。

5人の卒業生のどの作品も瑞々(みずみず)しくてほほ笑ましかった。おもわず足が止まったのは景色から浮かび上がる“色”にフォーカスした上原利菜の作品「Feel the color」。ピュアな視線でシンプルに切り取られた風景はどこか懐かしい。

作品の解説に「すべての人が同じ『色』を見ているとは限らない」と記されていた。偶然、会場にいた上原から作品の解説を聞くことができたが、真っすぐ私へ向かう彼女の力強い目に圧倒された。写真はフィルムの独特な空気感が好きだと話してくれた上原は、この春から東京六本木にあるスタジオに就職が決まったそうだ。輝く瞳で「これからは人物も撮っていきたい」と語ってくれた。彼女がこの先どんな表現をみせてくれるのか楽しみだ。

そんな新人フォトグラファーが撮った「奥武島の大漁旗」を、晴れやかな日に床の間に飾りたい。障子越しのやわらかい光のなかで若い感性のゆらめきを覚えておくために。



「奥武島の大漁旗」
旧正のころの夕暮れ時、地元近くの海の風景。作品はすべて1600ミリ×1080ミリ。価格未定。


「しめ縄」浮島通り
お正月から時間がたっても飾られていたしめ縄にユーモアを感じて撮影。風景のなかのオレンジ色とイエローが際立っていた。


「シーサー」
シーサー単体だけではなく、民家の塀やパパイアの木を入れることで空気感と色を意識する撮り方に。
 
作家近況
フォトグラファー・Rina Uehara
https://www.instagram.com/ri_film.20/?hl=ja




もとむら・ひろみ
那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」でパーソナリティーを務める
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1890号・2022年3月25日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

キュレーター
本村ひろみ

これまでに書いた記事:36

ロマンチストなラジオDJ
那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学 造形芸術研究科修了。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2(毎週 日曜日 19時~20時)」でパーソナリティーを務める。

TOPへ戻る