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2021年4月30日更新

[特集]自然がリビング

家の中で居ることの多いリビング。本を読んだり、横になったり、ボーッとしたり。それを大自然の中でやってみるのはどうだろう?名護市源河の森の中にあるツリーハウスを紹介。自然をリビングにしちゃおう!

原生林が残る名護市源河の森の中にあるツリーハウス。(株)ツリーフルが手掛けた。アカギの木と一体となっている。2021年6月下旬から、同社が提供する宿泊コテージの付帯施設として開業予定だ


名護市源河の山奥にSNSで話題のツリーハウスがある。(株)ツリーフル代表取締役の菊川曉さんが、ここの大アカギに「ほれ込んで」土地を購入し、2013年から計画をスタート。6人のスタッフでツリーハウス3棟と、オープンスペースなどを建築した。地上の宿泊コテージの付帯施設として、ことし6月下旬から開業予定だ。


木と一体になる

1.スパイラルツリーハウスの内部。大アカギの幹が貫く。360度どころか上下も緑に囲まれ、宙に浮いているような感覚。木の上ながら冷房も完備。簡易トイレもある


全方位 緑に囲まれる

大きなアカギの上に建つ「スパイラルツリーハウス」=表紙、写真6。地上から床部まで約10㍍あり、一般的な3階建てくらいの高さにあたる。「トム・ソーヤーの冒険」を思い起こさせる外観は、見ているだけでワクワクする。

らせん階段を上り、室内に入るとさらに圧巻。360度どころか上も下も全方位が森。緑の中に浮いているような感覚だ。

木の上に建ち、自然と一体となれるのがツリーハウスの魅力。アメリカやヨーロッパでは建築が盛んで、プロのツリーハウスビルダーがいて、専用の建材も販売されている。㈱ツリーフルの菊川曉さんは、海外のツリーハウスを巡ったり、プロビルダーの本や動画を見て作り方を学んだ。

「日本にもツリーハウスはあるが、うちで手掛けるハウスは、土地と接する柱がない。つまり100パーセント、木(ホストツリー)に支えられている」と話す。

ツリーハウス専用のボルトを幹に打ち込んで荷重を支える=3=ほか、専用ベルトを上部の幹に複数取り付けて建物をつっている=2。

だからこそ「ホストツリー探しは時間がかかった。建物を支えられるほど立派な木は、山奥にしかない。あちこち探し回って名護市源河でこのアカギに出合った。周りの木も、足元を流れる清流も良い。ここだ! と思った」

土地を購入して、㈱ツリーフルを設立。6人のメンバーで設計・施工を手掛ける。

「安全性が最も大切。何重にも策を施している」。例えば施設内の階段は3本の柱で踏み板を支える=4。「1本が壊れて、さらにもう1本が壊れてしまっても安全が保てる。NASAが掲げる安全基準である『1fail operative 2fail safe(一つ故障が起きても性能を継続、二つの故障が起きても安全を保つ)』を意識して設計、施工している」。
 
2.スパイラルツリーハウスの屋根部。ハンモックやテーブルが用意されている。幹の上部にはスリングベルトが設置され、ハウスをつっている/㈱ツリーフル提供
 
3.ツリーハウス用の建材「TAB」。幹に打ち込んで、下からハウスを支える
 
4.階段の踏み板は3本の柱で支える。「リスクを分散し安全性を確保している」


5.(株)ツリーフルのスタッフで、ツリーハウス造りの「実動部隊」。左から来座麻耶さん、山田秀一さん、坂尾菜都美さん、小瀬廉さんと草刈りを担当するヤギのドナ


土を占領しない

6.アカギの木と一体となった「スパイラルツリーハウス」。幹をぐるりと囲むらせん階段が名前の由来。地面に柱はなく「この大アカギが100パーセント、ハウスを支えている」と菊川さん


動植物の邪魔をしない

先の「スパイラル―」に続き、昨年には「トロフィー」というツリーハウスも完成した=8。「日本の伝統的な鼓構造をモチーフにした」。室内は畳敷きで、茶室のようだ=10。ロフト部が寝室になっている。「スパイラル―」も「トロフィー」も、簡易トイレやエアコンを備えている。

9本の木にまたがるオープンスペースも作った=11。

なぜ、それほどまで「木の上」にこだわるのか。「今はもう、人間のために木を伐採する時代ではない。土地を占領するのも違う。自然と共生できる新たな空間を提案したかった」

地上の宿泊施設「エアロハウス」も高床式で、地面から最大3・5㍍浮いている=7。設計は東京の建築家・村井正さんが手掛けた。シンプルな箱型で、移動させることも可能だ。

オープンスペースも含め、「構造物は地面から1・2㍍以上、離すようにしている。建物の下に草が生え、野生動物が通る道を残したい」と菊川さん。自然に対する姿勢に共感し、BEGINの島袋優さんもツリーフルの株主に名を連ね、背中を押す。

コンセプトは「サステイナブル(持続可能)なリゾート。石油、石炭、ガスなどの化石燃料を使わずに電気を使用。使用量よりも多く太陽光で発電し、持続可能な社会を構築する」と熱を込めて語る菊川さん。

自然と人、どちらか我慢するのではなく「気持ちよく共存するのがベスト。それを、源河から世界へ発信したい」と話した。
 
7.4月に完成した地上の宿泊施設「エアロハウス」。東京の建築家・村井正さんが手掛けた。地面から延びる3・5㍍の柱の上に建物がある。エアロハウスの宿泊客のみツリーハウスを利用できる
 
8.センダンの木の上に建つ「トロフィー」。階段はクワの木が支える。鼓から発想を得た形。屋根は特殊加工を施した和紙製
 
9.エアロハウスの内部。インテリアデザインはデザイナーの小市泰弘さんが手掛けた


10.「トロフィー」の内部は畳敷き。12角形の室内に合わせ、ピザをカットしたような形の畳は「自分たちで作った。かなり大変でした」

11.オープンスペースは9本の木にまたがる。高いところで8メートルほどある。木製のらせん階段も見どころの一つ

 インフォメーション 
各施設の見学、宿泊を含め開業は6月下旬の予定。オープニング情報は㈱ツリーフルのホームページなどで確認を。

住所/沖縄県名護市源河2578
HP https://treeful.net/
インスタ @treeful.treehouse

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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1843号・2021年4月30日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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