狭所点検用ドローン 県内初の実証テスト|気になるコト調べます![67]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2020年11月27日更新

狭所点検用ドローン 県内初の実証テスト|気になるコト調べます![67]

再生可能エネルギー事業やドローン事業を行う㈱糺(ただす)の森と、建物管理の㈱国際ビル産業は10月30日、狭所(きょうしょ)点検用ドローンの実証テストを西原町棚原にある橋の下で行った。ドローンを使うことにより、配管や煙突、天井裏といった人が入りにくい場所の、低コストで安全な点検が期待される。

特集・企画

タグから記事を探す

調査の様子。ドローンが排水溝の中をライトで照らしながら飛行し撮影している


 ドローンで低コスト・安全に点検 

直径40センチ以上の空間ならOK 狭所点検用ドローンは、配管や煙突といった狭い場所を飛行し、点検・調査のための映像を撮影する機械。今回使った機体は、暗い場所でも撮影できるよう高感度カメラやライトを備えているものの、その他の機能を絞ることで200㌘以下にまで軽量化されている。

ドローンを操作する、糺の森沖縄支社の宮内利基支社長は「軽い分、風の影響を受ける屋外での飛行は不向きだが、屋内なら直径40㌢以上のスペースがあれば飛行可能」と話す。

その後、撮影した映像を解析。配管内や壁面の堆積物や劣化の様子などを確認できる「三次元データ」、全てを点で表すことで亀裂などの正確な位置や長さを把握できる「点群データ」、地図のように全てのポイントが真上から見える「オルソデータ」が作成される。「点検報告書などの作成に役立つほか、データとして残せるため、今後の点検時に過去のデータと比べることで異変を察知しやすくなる」

宮内支社長によると、狭所点検用ドローンの実証テストは県内初。今回は、西原町にある橋桁の裏側や排水溝の中などを撮影した。

事前に同橋の点検業務を行った、国際ビル産業建物調査診断部の富山泰成部長は「従来は人が目視で確認しながら点検していたため時間がかかり、有毒ガスの可能性などの危険を伴うこともあった。ドローンを使うことで安全に作業できるだけでなく、時間や人件費、人的ミスの削減にもつながる」と期待する。

宮内支社長は「コスト面や人手不足が課題となり、老朽化が進む下水道などのインフラ点検が追いついていない現状がある。点検を効率化し、それらをカバーしていけたら」と力を込めた。


狭所点検用ドローン。機能を絞ることで軽量化している​


撮影した映像。その場ですぐに確認できる。この映像を解析し、三次元データ、点群データ、オルソデータが作られる ※上の映像と、下の各データは別地点のもの


三次元データ
動画をつなぎ合わせて三次元化したもの。配管内や壁面の堆積物・剥離の様子など、映像を見返すことなく全体の状況を確認できる



点群データ
全てを点で表したデータ。天井裏の配線など、立体的なものの長さを正確に計測できる


オルソデータ
全地点を真上から見たデータ。1地点から見た時のように、端の方が凹凸の影に隠れたり、ひずんだりすることがないため、ひび割れなどの正確な位置や長さが分かる


 狭所点検用ドローンによる点検の特徴 
・直径40センチ以上のスペースがある屋内なら飛行可能 なので、人が入りにくい配管や煙突、天井裏、床下な ども安全に調査できる
​・撮影した映像は解析され、「三次元データ」「点群デー タ」「オルソデータ」を作成。正確な調査ができる ・調査時間や人件費を削減できる

住宅改修時の事前調査にも

住まいでの活用も見据える。例えば、リノベーションなどの改修前。図面が残っておらずに、既存住宅の天井裏や床下など見えない部分の構造が分からないことがあるほか、つり天井や老朽化が進行している建物なら人の重さに耐えられない可能性もある。

そんなとき、これまではマイクロスコープなどで構造や現状などを確認していたが、ドローンを使えば簡単に正確なデータが手に入る。宮内支社長は「見積もりの精度が上がるとともに、劣化やシロアリ被害、腐食がないかなども確認できる」。

また、マンションやホテルのロビーなど、長期間にわたって足場を組むのが難しい場所でも有効。エレベーターやマンションの地下で地震の揺れを和らげる免震・防振性能、地震による被害状況の確認などにも使えるという。

狭所点検用ドローンによる点検事業は、すでにスタートしている。問い合わせは糺の森沖縄支社(電話=098・943・7602)。

気になるコト調べます!一覧


取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1821号・2020年11月27日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

これまでに書いた記事:224

編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

TOPへ戻る