漆の食器 普段使いする豊かさ|アートと暮らす[1]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2020年10月9日更新

漆の食器 普段使いする豊かさ|アートと暮らす[1]

[アートと暮らす|文・写真 青木嘉一郎]このコーナーでは、アートショップを営む青木嘉一郎さんに工芸やアートを日常に取り入れる面白さを教えてもらいます。


漆器作家・山本進也さんの漆の食器を愛用。ナスやネギ、タケノコなどの野菜の絵があしらわれているのが特徴で、その絵は型紙を作って描き、型紙は1度しか使うことができない。そのため、同じ絵でもわんごとに違う、一点ものになる

アートと暮らす

中学を出た後、劇団に入り、大道具などの裏方を経て、23歳で舞台監督になった。国内外の公演に参加し、名をはせる役者らの舞台に関わって一期一会の貴重な経験をした。今から約40年前、宮城美能留さんを中心に結成された沖縄歌舞団の海外公演で舞台監督を務めたのをきっかけに、沖縄へよく来るようになった。「将来はここに住もう」と思い続け、2016年に移住した。

移住前は静岡県の富士山の麓で妻と共に企画アートギャラリーを約30年間営んだ。日常の暮らしにアートを取り込んでいくとワクワクしてくる。連載を通してそのワクワクを伝えると共に、読者の皆さんにもアートと日々の暮らしをミックスし、いろいろと工夫してみてもらえればうれしい。

メニューを考える楽しみ


朝食時のみそ汁わんとして毎日食卓に並ぶ。一般的に漆器の製作は彫師と塗師で分担して一つの作品を作るが、作家の山本さんは、原木の削り出しから全40工程ほどを1人で行う

横浜で暮らしていた時、駅へ向かうところにオシャレなカフェがあって、そこのオーナーと親しくなった。厚い無垢の木のカウンターに出てくる作家もののコーヒーカップと漆の茶たく。外を通る人を眺めながら、数年通いつめた。静岡に引っ越す前、オーナーにそのコーヒーカップと漆の茶たくをセットで譲っていただけないかとおねだりをした。「カップはいいけど茶たくはダメ」と言われて残念ながらあきらめた。

静岡で企画ギャラリーをやるようになり、その漆の茶たくの作家が静岡県の西伊豆町に住んでいることが分かった。うちのギャラリーで個展を開いてほしい旨を伝え、数年後に実現した。それから1年おきに10回ほど個展が開かれた。作家といろいろ話す中で、「お祝いの時だけ使わないで、普段使いで使ってほしい」との言葉が印象に残った。

私たちも個展のたびに少しずつ購入させていただいた。朝食にはわんにみそ汁を入れたり、大きなわんにはうどんやそばを入れたり、作家の言葉通り、毎日のようにその作家が作った漆の器を使っている。何とぜいたくなことか。そして「次は何を作って、このわんで食べようか?」という気になる。いろいろと工夫しようとすることが楽しく、また食事もおいしくいただくことができる。


ふた付きの器には茶菓子などを入れて


同じ作家のスプーンも普段使い。食事で使ったわんは、水でじゃぶじゃぶと洗い、普通の食器と扱い方は変わらない


 
あおき・よしいちろう/1947年、川崎市出身。舞台監督として、78年「沖縄歌舞団太陽の燃える島」にも携わる。静岡県で妻・容子と企画ギャラリーを運営し、2016年に移住。北中城村のレストラン沖縄物語内の「アートショップ蓉(よう)」で、作品の展示販売を行う


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1814号・2020年10月9日紙面から掲載

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