沖縄県主催 第8回ティーダフラッグス2019|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

建築

2020年1月31日更新

沖縄県主催 第8回ティーダフラッグス2019

県内若手建築士を対象とした設計競技「第8回ティーダフラッグス2019」(主催・沖縄県)。今回は中城公園内で人気の遊具広場に整備する、休憩スペース付きトイレの提案が求められた。今月15日に作品プレゼンテーション・最終審査が行われ、金賞に渡久山設計の平良和礼さんが輝いた。学生賞には琉球大学大学院の仲川凜さんが選ばれた。

遊具広場の憩いのトイレ

薄い材で軽やかな表現
県主催「ティーダフラッグス」は、40歳以下の県内建築士が同じ課題について提案設計で競い合う。最高賞の金賞受賞作品は実際に建築される予定で、これまで浦添大公園の管理事務所や名護城公園ビジターセンターなどが完成している。

8回目となる2019年度の課題は中城公園内、親子に人気のトランポリン遊具がある広場のトイレ施設の提案。誰もが利用しやすく、遊ぶ子どもたちを親が日陰から見守れるスペースもあるトイレが求められた。

1月15日、県立博物館・美術館で、1次審査を通過した7作品のプレゼンテーションと最終審査が行われた。金賞を受賞したのは(株)渡久山設計の平良和礼さん(38)。柔らかいカーブを描く超薄肉プレストレストコンクリート(HPC)の屋根をいくつも重ね「森に浮かぶ雲をイメージ」。HPCで軽量化したトイレボックスを三つ、敷地勾配の低い方から多目的、男子、女子と並べて配置。それらトイレと遊具との間に見守りスペースや休憩所を設けた。審査員は「分散型で視線が抜け、薄い屋根も相まって軽やか」と講評。課題敷地は遊具そばの園路を挟んだ広い芝面となるが、あえて敷地全体を使わずトイレを園路側に寄せた計画は、「休憩スペースが十分にとれないのでは」との質問に対し、平良さんは「公園トイレで最も大事なのは防犯と視認性の確保。遊具に近づけ見守りやすさを重視した」と答えた。

銀賞はスタジオジャグ1級建築士事務所の天久日向子さんが受賞。トイレスペースと休憩スペースをV字の屋根でつなぎ、中庭を設けた。安全な中庭や配置計画のバランスのよさが評価された一方で、ボリュームの大きさが課題となった。銅賞は(有)アトリエ・門口の大城良介さんら。敷地四隅に広場を設けた考え方が評価された。

 金賞 「森にうかぶ雲のなかみち」

トランポリン遊具側からトイレ正面を見たイメージパース


遊具(左)との間の園路に近づけ、親が子どもたちを見守りやすいよう配慮した

敷地の傾斜に合わせ重ねた軽やかな屋根で、大地に憩いの影と浄化を与える雲を表現。建物のボリュームを抑え景観に溶け込むよう配慮した。トイレはボックスで分散させて見通しと風通しを高め、トップライトで光を取り込むことでトイレ内の明るさも確保した。工場制作できるHPCを使うことで、工期やコストの縮減を図った。さらに軽量化により極力、地盤を傷つけないよう環境にも配慮している。

【受賞コメント】提案では多様な計画案、在来工法での表現も検討したが、森に寄り添い、子どもたちに優しく印象付けるイメージを表現するためHPCを採用。県産材でリユースしやすい環境共生型も目指した。周りの自然や隣接する遊具になじみ、子どもたちが楽しい気持ちになれ、誰もが安心して使えるトイレの提案ができた。ぜひ実現できればと思う。

平良和礼さん(38)(株)渡久山設計


 

若手建築士が提案

コストに厳しい目
実際に建築されることを念頭に、各作品とも審査員からコストに厳しい目が向けられた。例えば子どもトイレの設置など、必須要件以外の提案を盛り込む時は、どこかでコストの調整をとらなければならない。審査員らは「提案内容がよくても、全体的なコストとの兼ね合いが取れていなければ、実際に整備する時には削られてしまい、結局はコンセプトが生かされなくなる」などと、若手の育成も兼ねて苦言を呈した。

全体講評で伊礼智審査員長は「どの作品もデザインレベルが高かった。建物だけでなく、周辺の環境や景観、植栽にも目を向けてほしい」と広い視点も求めた。

学生でも実務者並み
学生賞に選ばれたのは琉球大学大学院の仲川凜さん。光、影、風の自然要素を程よく取り込む屋根とトイレ配置で、「沖縄の自然をポジティブに感じられる空間」を提案した。

審査員からは「実務経験者と思わせるような計画で、プロポーションもいい。あとは広場全体との関係性やトイレ内部にも目を向けて」と、エールが送られた。

同設計競技の作品パネルは県ホームページで紹介されている。

 学生賞 「自然に活かされる空間」


幅を持たせて屋根を重ねて強い日差しを遮りつつ反射させて光を取り込んだことで、屋根の下には濃淡の違う影ができる空間をつくった。壁はトイレブースだけと最小限
にして風の通りをつくり、自然要素と人々との間
を取り持つ空間にした。
【受賞コメント】プロポーションを褒められてとてもうれしい。「屋根をかけたら心地いい場所だろうな」と発想を広げていき、「自然に活かされる」という芯を貫いた作品になった。審査員からの指摘は今後の課題。来年も挑戦したい。

仲川凜さん(23)琉球大学大学院



「第8回ティーダフラッグス2019」で入賞した若手建築士、学生(前列)と審査員を務めた建築士ら

 入賞者 
金 賞…「森にうかぶ雲のなかみち」平良和礼さん(渡久山設計)

銀 賞…「新たな賑わいを生む『ひとつながりの弧』」天久日向子さん(studio jag1級建築士事務所)

銅 賞…「回廊の庭」大城良介さん、塩真光さん、城間築さん、大城拓也さん(アトリエ・門口)

学生賞…「自然に活かされる空間」仲川凜さん(琉球大学大学院)

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1778号・2020年1月31日紙面から掲載





 

建築

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2115

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る