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2020年1月17日更新

病と向き合い対話する空間|ロンドン住まい探訪[9]

文・比嘉俊一

オープンハウス・ロンドン②

患者の居場所つくった造園家
前回に引き続いて「オープンハウス・ロンドン」について。多くの建築を見る機会に恵まれたが、その中でも感銘を受けた建築の一つをご紹介したい。「Maggie's centre(以後、マギーズセンター)」という施設である。創設者は造園家であったマギー・K・ジェンクス。彼女自身、余命宣告を受けたがん患者だが、患者の居場所が社会にないことに気付き、当時入院していた病院敷地内の小屋に、同じ病気に直面した本人、家族、友人、専門家のための「がんと向き合い対話のできる場」をつくったことから始まった。

マギー氏は1995年に他界するが、彼女の思想は建築評論家であった夫に受け継がれ、多くの人々の共感を得て、現在は英国だけでなく東京にも建築されている。共通の思想=下=のもと、異なる設計者にて空間がつくられているのが興味深い。

▼マギーズセンターの建築の考え方
〇自然光が入って明るい
〇安全な(中)庭がある
〇空間がオープンである
〇執務室からすべてが見える
〇オープンキッチンがある
〇セラピー用の個室がる
〇暖炉がある、水槽がある
〇一人になれるトイレがある
〇280平方メートル程度
〇建築デザインは自由
(Maggie's Tokyoウェブサイトより)

思想がつなぐ社会と建築
私が見学したウエストロンドンのマギーズセンターの設計者はリチャード・ロジャース。前回お伝えした「ロイズ保険組合本社ビル」と同じ設計者である。敷地は背後に大病院、前面2面は道路に接しているが、軒の深い屋根とぐるりと回されたオレンジの高い塀が周囲から受ける影響を抑えるとともに、プライバシーを確保し落ち着いた環境をつくる上で重要な要素となっている=下写真

マギーズセンター(ウエストロンドン)​

マギーズセンターの外観



沿道との境界部分

開放的な吹き抜けの天井、自然光を十分に取り込む大きな開口部、中庭の緑が一体的に感じる施設の内部空間は、利用者間のつながりを感じ、心地よく滞在できる場となっていた=下写真 。床が土間となっているのはロンドンならでは。靴を脱がなくても気軽に入れる空間というのも悪くないのかもしれない。

写真を見ていただけると、故マギー氏の思想を感じることができると思う。この建築はロンドンで多くの建築賞を受賞しており、デザイン性にも優れて社会に開かれた建築のあり方を考えさせられる。このような建築との出合いが「オープンハウス・ロンドン」の醍醐味(だいごみ)なのである。


開放的な吹き抜けから中庭を望む



一体感のある空間は利用者同士のつながりを生む
 

 

ひが・しゅんいち/1980年生まれ。読谷村出身。琉球大学工学部卒業後、2005年に渡英。ロンドンでの大学、設計事務所勤務を経て、16年に建築設計事務所アトリエセグエを設立。住み継がれる建築を目指す

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1776号・2020年1月17日紙面から掲載

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