相続
2018年3月2日更新
今日から始める相続計画「これからの相続将来予測が肝」
[Vol.12]文・亀島淳一|(株)シナジープラス代表 幸せ相続計画推進協会代表理事
分析基に慎重に判断 偏りなく幅広い選択肢から
2015年4月から3年間続いた当連載も今回がラストです。日頃たくさんの方の相続のお悩みに接している立場から、最終回も心を込めてお届けいたします。最後もやはり、「親子三代で財産を失わないために」今、何をしておくべきかをお伝えします。
計画的な資産運用を
目まぐるしく変動する時代の中で、家族がもめない、財産を減らさないための相続計画には、資産価値の将来予測が重要であることを繰り返しお伝えしてきました。そのためには緻密な分析が必要であること、公正証書遺言や家族信託契約も適宜見直しをするべきであることなどを併せて覚えておいてください。
大切な相続財産を守り、次の世代へと引き継いでいくためには、将来予測を基に資産価値・収益率の維持や向上などの戦略を立てていかなければなりません。何もしなければ、よく言われるように親子三代で財産を失ってしまいかねません。
保有財産から生まれる収益については金融商品・生命保険を使った資産運用計画なども考えられます。現状のままだと保有リスクが高くなる恐れがある不動産には投資計画も必要でしょう。不動産については、市場分析判断(人口減少・少子高齢化・単身化・各相場)に加えて資産活用分析判断(最有効活用)と投資分析判断(売却か修繕か投資額の適正化)に基づき、保有か売却か改善かという判断も必要になります。
すでに何かしらの活用の提案を受けている場合は、提案者の不動産会社や建築・設計の専門家の方に、市場分析・資産活用分析・投資分析を踏まえた提案をしていただくようお願いしましょう。
例えば土地活用の例で、賃貸アパートを建てて返済が終わるまでの収益より、土地を売却して得た資金の半分を1.5%程度の複利運用で金融商品や生命保険で運用した時の方が、最終手取り合計額が多く残るようなこともあります。金融商品や生命保険は解約すればすぐに現金化できるので流動性もよく、人口減少や少子高齢化、単身化が進むエリアで不動産の活用をするよりはるかにリスクの低い資産運用になります。
子どもたちの重荷になるようなことのないように、最適な方法を求めて慎重に計画していきましょう。
海外への投資当たり前に
これからの相続は、保有資産をいかに効率よく増やしていくかがポイントになってきます。それには、土地活用だけが選択肢ではありません。
資産運用計画では、海外不動産や海外金融商品・生命保険などを利用した運用も見据えておいた方がいいでしょう。海外への投資はリスクが高いように聞こえますが、生産人口の多い国、中間所得層が増える国などは将来の経済成長が期待できるため、リターンを考えれば保有資産の一部を海外へ投資することが当たり前の時代になってきています。
賃貸事業、生命保険、金融投資など、特定の方法に偏るのではなく、色眼鏡なく分析してさまざまな選択肢の中からご家族に最適な方法を探していきましょう。
これからの相続は、将来のさまざまな環境変化に合わせた各家族の資産形成と相続計画が重要になってきます。皆さまのご家族が大切な財産を親子三代で無くすのではなく、増やし、価値を高めて、子や孫まで未来永劫(えいごう)繁栄していく事を心からお祈りしています。
私たちも引き続きセミナーなどを通じて正しい相続知識を伝え続けていきます。小学生から始めるお金についての勉強、20~40代は資産運用、50~60代は老後資金計画、祖父母世代は次世代への財産の渡し方など、さまざまな世代の方々がお金や資産について勉強できる機会を設けていく予定です。
当連載はひとまずお別れとなりますが、資産を守ることや増やすことに関心を持ち続けていただけたらと思っています。3年間のご愛読ありがとうございました。
2月24日に開かれた亀島さんの相続セミナーのようす
本連載執筆者の亀島さんが講師を務めた相続セミナー「相続の基本と家族信託」が2月24日、南風原町で開かれた=写真。18人が参加し、メモを取りながら熱心に耳を傾けていた。
前半、相続の基本について亀島さんは「相続前に分け方を決めておくことが重要」と繰り返した。もめる原因は「分け方が決まっていないから。しっかり決めておけばもめない」と力を込めた。元気なうちに分け方を決めて、その理由を伝えることの重要性を解説し、「分け方を公正証書遺言に残しておくこと。そして、なぜそういう分け方にしたかという理由(付言事項)を書いておけば、もらう側も納得できて、もめにくくなる」と語った。後半は「家族信託」について。財産を守ることを目的にした「成年後見制度」とは違い、財産を預かった人(受託者)が財産の管理、運用、処分をすることができる制度で、当連載でも反響が大きかった。亀島さんは、家族信託を用いた認知症対策や共有名義不動産のトラブル回避、資産運用などに活用する方法を紹介した。
最後には、「家族信託は柔軟に活用できる制度。もめない相続計画の選択肢の一つとして覚えていてほしい」と結んだ。
相続勉強会(全3回)「知ることから始めよう」
実は、相続でもめている7~8割のご家庭が、相続税がかからないご家庭です。
「相続なんてまだ先の話」「財産が少ないから関係ない」と事前の対策をしなかったためにもめてしまったケースは多いもの。「もめない相続」「減らさない相続」にはどうしたら良いのか、「相続計画をするにはどうしたらいいのか」とお悩みの方も、相続について知ることから始めませんか? 相続のプロが基本から応用、今注目の家族信託についても分かりやすく教えます。定員は12人。早めにご予約ください。
講師/亀島淳一(シナジープラス代表取締役)、
仲根佑亮(シナジープラス幸せ相続計画推進課課長、家族信託専門士)
日時/①4月7日(土)午前10時~午後3時10分
(テーマ/step1相続とは・step2遺言と贈与)
②4月14日(土)午前10時~午後3時10分
(テーマ/step3相続税・step4さまざまな節税方法)
③4月21日(土)午前10時~午後3時10分
(テーマ/sstep5資産活用と相続まとめ)
場所/シナジールーム(中城村南上原1021 ララプリモ2階)
費用/1万5000円(税込み・ランチ付き)
定員/12人(申し込み先着順)
※事前に電話かFAX、Eメールのいずれかにてお申し込みください。
申し込み先/電話=098・963・9266 FAX=098・963・9267
メール=souzoku.info@synergy-plus.co.jp
文・亀島淳一
(株)シナジープラス代表
幸せ相続計画推進協会代表理事
かめしま・じゅんいち/身内の相続トラブルを機に相続を学ぶ。相続の幅広い専門知識と豊富な実務経験をもとに、行政やメディアなどの依頼による講演も行っている。電話=(098・963・9266)
http://www.synergy-plus.co.jp/
<過去記事一覧>
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1678号・2018年3月2日紙面から掲載
この連載の記事
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
これまでに書いた記事:351
編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。