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2018年1月5日更新

今日から始める相続計画「家族信託で財産を守る」

Vol.10
前々回から解説している「家族信託」は、受託者が本来の所有者に代わって資産の管理・運営・処分などができることが最大のメリットです。今回は、相続財産に不動産が多く相続税も課税される見込みで、借地や築古アパートなどを持っている方、納税資金の不足が懸念されるような方に適した家族信託について説明します。

「整理組み替え型」からスタート 資産増も可

前々回から解説している「家族信託」は、受託者が本来の所有者に代わって資産の管理・運営・処分などができることが最大のメリットです。今回は、相続財産に不動産が多く相続税も課税される見込みで、借地や築古アパートなどを持っている方、納税資金の不足が懸念されるような方に適した家族信託について説明します。


なぜ家族信託が有効か

例えば、相続計画の途中で不動産所有者であるお父さんが認知症や病気になるとどうなってしまうでしょうか? お父さんの判断能力がなくなると、もう誰もその財産を動かすことはできなくなってしまいます。
その状態で相続が起きれば、相続税の節税もできていない、納税資金の準備も出来ていない、という厳しい状況下で相続税納付期限の10カ月が迫り、慌てて現金を準備することになります。
そうすると、本来残しておくべきなのに、売りやすい・利益を上げやすいということから「運用する財産」や「守る財産」を売却せざるを得なくなります。
しかも、10カ月という期限内に現金に替えなければならないため、本来高く売れるはずの不動産を安く売却してしまうことも多くあります。  このようなことが、不動産オーナー親子が三代相続するうちに財産が無くなってしまう原因となってきました。
そこで、有効なのがお父さんに代わって受託者が資産の管理や運営、処分ができる家族信託です。


まずは財産の分析から

家族信託は大変便利な仕組みですが、構築するのには費用もかかりますので、まずは財産分析を行ってご家族の相続計画に本当に必要かどうかを判断します。
具体的には、一つ一つの不動産について、相続税評価額と収益性(利益を上げやすいか)の比較、そして流動性(売却に時間がかかるか)を分析して成績を付けてみましょう。
相続税評価額が高い、収益性が低い、流動性も悪い不動産を「整理する財産」として分類していきます=図①。
その「整理する財産」の中でも、成績の悪い(収益性が低い、流動性も低い)財産は売却に時間がかかることが予想されます。
しかし、万が一、不動産を所有しているお父さんが認知症や病気なっても、受託者の権限で財産の売却を進めることができます。
相続財産の圧縮により相続税が下がり、売却したお金で納税資金も準備できます。なにより、大切な「運用する財産」や「守る財産」が無くなるのを防げます。


カスタマイズも可能

資金に余裕がある時は、資産運用を進めて分ける財産を増やしていくことを考えてみましょう。相続計画の中で増やした財産は、相続トラブルを防ぐことにも役立ちます。整理組み替え型から資産運用型の信託に発展していくパターンです。
家族信託はケースごとにカスタマイズが可能でさまざまな使い方があります。
整理組み替え型でスタートして資産運用型に発展したり、そこから収益性などの悪化が見られれば、再び整理組み替え型に変化させたり、家族の状況や不動産収益、市場(人口減少・少子高齢化等)の変化によっても信託した不動産の立ち位置が変わります。
分析を怠って安易に組んだ家族信託が結果的に財産を減らすことも少なくありません。不動産特有の価値減少を予測し、どれを家族信託に組み入れるべき不動産なのかをきちんと考えましょう。




備える財産
相続税の納税資金用に準備しておく財産   

守る(引き継ぐ)財産
実家や収益物件など人手には渡せない財産

整理する財産
貸地や築古アパートなど収益性や流動性が低い財産


運用する財産
節税や資産運用に活用できる財産



相続で財産を減らす例
財産の所有者であるお父さんが認知症になってしまうと、不動産は売却や運用などができなくなります。その後、お父さんが亡くなって相続が起きるとどうでしょう。相続税の納付期限である10カ月以内に現金を用意するため、売りやすい財産から売却せざるを得ません。となると残しておきたかった「守る財産」や「運用する財産」を売却することになり、築古アパートや貸地など運用しにくい「整理する財産」だけが残ることになります。



家族信託をし、円滑に相続できた例
お父さんが元気なうちに、「家族信託」をし、財産を息子に託します。これで、お父さんが認知症により判断能力が不十分になった後でも、受託者である息子は財産の売却や運用ができます。計画的に「整理する財産」を現金化して相続税の納税資金も準備しておけば、相続が起きても慌てずに済みます。相続財産を圧縮しておけば、相続税の減税にもつながります。




2月に亀島淳一さんセミナー
「相続の基本と家族信託」


執筆者の亀島さんによるセミナー「相続の基本と、今注目の家族信託」(主催・タイムス住宅新聞社)」を2月24日(土)、南風原町立中央公民館で開催します。今回も紹介した「家族信託」について詳しく知るチャンスです。 

  • 日時/2月24日(土)午後2時~同4時(受け付けは午後1時30分~)
  • 場所/南風原町立中央公民館(南風原町字喜屋武236)
  • 料金/2000円(資料代込み)
  • 定員/20人

※事前に電話予約をお願いします。
タイムス住宅新聞社 企画開発部
098-862-1155
受け付けは平日午前10時~午後5時



文・亀島淳一
(株)シナジープラス代表
幸せ相続計画推進協会代表理事

かめしま・じゅんいち/身内の相続トラブルを機に相続を学ぶ。相続の幅広い専門知識と豊富な実務経験をもとに、行政やメディアなどの依頼による講演も行っている。上級相続アドバイザー、全米不動産経営管理士(CPM)、全米不動産投資顧問(CCIM)などの資格も持つ。
電話/098-963-9266
http://www.synergy-plus.co.jp/



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1670号・2018年1月5日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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