今日から始める相続計画「家族信託」こんな例|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

マネープラン

相続

2017年12月1日更新

今日から始める相続計画「家族信託」こんな例

Vol.9
「家族信託」は、元気なうちに財産を信じる人に託す(信託する)ことで、委託者の判断能力が不十分になった後でも、受託者は家族のために財産を管理運用・処分することができます。また、財産の権利を所有権と受益権に分けられるのも特長です。しっかり分析した上で「家族信託」することで、相続計画に役立ちます。今回は五つのケースを紹介します。

相続

タグから記事を探す

認知症対策や家族守るために



「家族信託」は、元気なうちに財産を信じる人に託す(信託する)ことで、委託者の判断能力が不十分になった後でも、受託者は家族のために財産を管理運用・処分することができます。また、財産の権利を所有権と受益権に分けられるのも特長です。しっかり分析した上で「家族信託」することで、相続計画に役立ちます。今回は五つのケースを紹介します。​



ケース① 認知症対策や収益不動産の分割対策に

お父さん(=委託者)が元気なうちに信託契約によって財産の名義を長男(=受託者)に移し、長男には受託者の役割として財産の運営・管理・処分ができる権限を与えます。
お父さんは財産から生まれる収益を受け取り続けることができ、長男が勝手なことをできないような制約を設けることもできます。お父さんが認知症になるなどして判断能力に問題が生じた場合、通常では財産を動かすことができなくなりますが、こうした信託契約を結んでおけば、長男は財産の運営・管理・処分を続けることができます。
お父さんが亡くなって相続が起きた時、信託契約によって不動産の名義と収益を分離しているため、名義は受託者たる長男がすべて預かり、収益を平等に相続人で分けることもできます。
※収益分割対策をする際には10年・15年と不動産収益が減っていくことも考え、信託契約に組み入れる不動産と組み入れない不動産の見極めも大切です。



ケース② 共有名義不動産のトラブル回避

過去の相続で土地A、B、Cは3人きょうだいの共有名義となっています。相続後、きょうだいはそれぞれの土地に建物を建てました。きょうだいに相続が起きると共有名義は子どもたち世代に相続されます。こうして共有名義人が増えると、建て替えや売却の際にさまざまな問題を引き起こす原因となります。
そこで、土地Aに建物を所有している長男を受託者、きょうだい3人を委託者とし、信託契約を結びます。受益者はきょうだい3人です。次男や長女が亡くなった際、受益権をそれぞれの子どもではなく長男に渡す契約をしておけば、受託者(長男)=受益者(長男)となり信託契約は消滅し所有権が一本化されます。同様の契約を土地BとCでも行えば、それぞれの家庭に土地の権利をまとめられ、土地と建物を安心して引き継げます。



ケース③ 資産管理+運用

お父さん以外の家族で法人を作り、お父さんが所有している収益不動産とまだ利用していない土地をその法人に託す信託契約を結びます。委託者・受益者はお父さんです。受益権は将来、子どもたちに引き継がれますが、利用していない土地からは収益が生まれません。そこで法人で土地に収益物件を建て、収益が生まれるようにします。
法人が信託財産とは別に独自に収益物件を建てているので、そこから生まれる収益は受益権ではなく法人の売り上げとなります。そこからお父さん以外の法人役員が役員報酬として収益を受け取れることになります。法人では資産価値の向上、売却や取得などを戦略的に行い、収益を増やしていきます。資産管理+運用に適しており、柔軟な運用や分け方ができます。
※収益の税務には所得税と法人税が絡むので気を付けましょう。



ケース④ 子どもの将来を考えて

一人娘に障がいがあります。夫婦が亡くなった後のことが心配です。そこで、信頼できる親戚を受託者として財産を託し信託契約を結びます。この時点での受益者は夫婦です。そして夫婦が亡くなった後の受益者を子どもにしておくことで、将来、子どもが不自由なく暮らしていけるよう財産を使うことができるようにします。



ケース⑤ 大切なペットを守る

Yさんは、自分が先立った後のペットのことを心配しています。そこで、信託契約によってペットが生きている間に必要な飼育費を信頼できる人(受託者)へ預けます。自分が先立ったとしても、受託者からペットを飼ってくれる人へ定期的に飼育費などを渡していくことができます。ここでの受益者はペットになります。


★以上は家族信託の一般的な使い方です。次回は相続計画に生かす家族信託として、四つの分類をもとに信託のメリットを最大限生かした事例を紹介します。



文・亀島淳一
(株)シナジープラス代表
幸せ相続計画推進協会代表理事

かめしま・じゅんいち/身内の相続トラブルを機に相続を学ぶ。相続の幅広い専門知識と豊富な実務経験をもとに、行政やメディアなどの依頼による講演も行っている。上級相続アドバイザー、全米不動産経営管理士(CPM)、全米不動産投資顧問(CCIM)などの資格も持つ。
電話/098-963-9266
http://www.synergy-plus.co.jp/



今日から始める相続計画|記事一覧
<過去記事一覧>


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1665号・2017年12月1日紙面から掲載

相続

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:350

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

TOPへ戻る