相続
2025年3月7日更新
人口減の離島 急がれる対策|どうするその空き家⑫
文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)

文/山入端 学
(全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部事務局長)
全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学さんが、空き家問題の背景や沖縄の現状、具体的な活用方法を紹介。今回は離島地域の急速な人口減少に伴う空き家問題や課題解決に向けた取り組みを紹介する。
人口減の離島
急がれる対策
先日、離島地域の問題を問う新聞記事の特集で「空き家の活用進まず」という見出しに目が留まりました。町並みを保全するための国の厳しい規制が、新築や修繕の大きな妨げになっていることや地域調査では空き家率が35%を超えるものの、所有者・管理者アンケートの回答では、8割近くが「賃貸入居者や売却先の募集はしていない」、その理由としては「年に何度か利用している」「仏壇や家財道具など捨てられないものがある」「権利者の相続問題で自分だけでは決められない」ということでした。急がれる対策
高齢化や税収減
負のスパイラル
離島地域の直面している課題は深刻です。移住や定住を促すだけでは加速する人口減少を到底防ぐことはできません。急激な人口減少、若者の都市部への流出、地域住民の超高齢化などにより、地元消費の減少や地域経済の縮小を招き、さらに自治体の税収減で財政が厳しくなり、行政サービスが縮小します。また、公共交通機関の維持が困難になり、高齢者の移動手段が制限されます。
さらに高齢化により医療・介護のサービス需要は増大するものの、人手不足のため十分なサービス提供が困難になることが予想されます。過疎地域ではインフラ維持が困難になり、限界集落が増加します。
「空き家の活用」は、個人の財産の問題ですが、地域の住宅ストックを考えると地域の大きな問題でもあります。
「空き家」を放置することで、さらなる人口減少を招き地域経済が衰退、生活困難を理由にした若者の流出など負のスパイラルが起きます。伝統文化の継承がなされず最終的には「あなたのふるさとが消滅」するのです。対策が急がれます。
支援法人の指定
地域で取り組む
空き家の相談では、さまざまな課題が浮き彫りになります。また、課題解決には数カ月も期間を要するケースも多く、各専門家によるアドバイスが必要となります。ネット上では「空き家すごろく」などの名称で各家庭の「実家をどうする?」という悩みや起こりうることをチャートで選択別に紹介しているので参考にしてみてはどうですか。
空き家問題は、これからますます本格化してきます。所有者が空き家の活用や管理について相談などができる環境が十分でないことや、多くの市区町村で人員が不足し所有者への働きかけが十分ではない-などの実態があります。そのため、市区町村が、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人、社団法人、会社などを「空家等管理活用支援法人」に指定。所有者への相談対応や、所有者と活用希望者のマッチングなどを行うという制度が2023年月に施行されました。
1年余り経過した24年12月末現在、全国では40を超える市区町村が法人指定を行っておりますが、沖縄県内の市町村における法人指定は1件もないのが現状です。
この制度で市区町村は空家等管理活用支援法人を指定し官民連携することで、国が用意する「空き家対策総合支援事業」の支援を受けることができ、図のような空き家の「除却」「活用」「支援法人による業務」、その他の活動を大きく推進することが可能になります。今後の積極的な制度活用を期待したいものです。

※国土交通省ホームページから抜粋
スペシャリスト
育成の資格試験
(一社)空き家アドバイザー協議会では、各種専門家で組織した会員はもとより、地域の空き家課題のスペシャリスト育成のため各種資格講習試験を実施しています。
「空き家課題トータルコンサルタント」は、基礎的なスキルを習得、トータルで課題に対応できるスキルを学ぶことができ、「サスティナブルなまちづくりプランナー」では持続可能な地域づくりに向け、潜在的な観光資源の開発など空き家活用の応用事例の知識を得ることができます。気軽にお問い合わせ下さい。

やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部
電話=0980・43・1613
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2044号・2025年3月7日紙面から掲載
第2044号・2025年3月7日紙面から掲載