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2016年5月6日更新

シンプルで豊かに|三愛企画設計

Tさん宅は鉄筋コンクリート造2階建て。間口約8メートル、南北に細長い敷地をムダなく生かすため、中央部に階段を設けた住まいは爽やかな風と光が心地よい。

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細長い敷地 ムダなく生かす

Tさん宅 RC造/自由設計/家族5人


打ち放しの壁に、天井の白とダークブラウンの窓枠で温かみを加えた2階のLDK。東側の開口部=左奥=から心地よい光と風が届く。左手前は小上がりの和室
 


家事も趣味も楽しく

沖縄県本島中部、沖縄市の住宅密集地に建つTさん宅は、コンクリート打ち放しの2階建て。車好きのTさんが車の整備に熱中するガレージの脇を抜け、敷地の中ほどにある玄関へと向かう。

室内に入ってまず目に留まるのは、ガレージがのぞけるスリット窓。「子どもたちはよく、窓越しに作業をしている夫に話しかけています。家にいるとき、夫はガレージにいることが多いので」と夫人は笑う。

1階には水回りと夫婦室。家族が集うLDKは、見晴らしの良い2階の南側にある。東側に大きく開いた掃き出し窓からは遠くまで続く街並みが見渡せ、吹き込む風も爽やか。「以前住んでいたアパートが見晴らしも風通しもすごく良かったので、同じような環境がほしかった」。南面の出窓に、季節の花や飾りをあしらうのが夫人の楽しみだ。

キッチン脇に設けた小上がりの和室は、子どもが勉強をしたり、遊びや昼寝にと大活躍。東西、北の3面にあるベランダが家事効率アップの手助けに。「季節や風向きによって洗濯物を干す場所が変えられるので助かってます」。
 

温かみ感じる内装

3人の子どもが成長し、アパートが手狭になったことから、校区内にあった親戚の土地に家を建てることに。気になる住宅が載った新聞を長年ファイリングしていた夫人は、「その多くは同じ建築士さんが手掛けた建物で、その方に設計をお願いしました」と話す。

車の整備が趣味というTさん念願のガレージのある住まい。夫人は、コンクリート打ち放しの壁を生かしながら温かみを感じられるよう内装に気を配った。白い天井、ダークブラウンの窓枠や引き戸。洗面と子ども室は、かわいらしい壁紙で明るく楽しい空間に。「子どもたちは家中を走り回って楽しそう。アパートのころは階下を気にしてなかなかできなかったので」。

これからの楽しみは、現在勉強中の庭づくり。夫人は「白い小花を庭いっぱいに咲かせたい」と、夢見る庭の情景に思いをはせた。


ダイニングからキッチンと和室を見る。和室の収納の一部は将来、仏壇も置けるようオープンスペースに。廊下の突き当たりに子ども室がある​


キッチン。カウンターの一部に設けられた収納棚は家族が通る廊下に面しているため、郵便物の一時置き場として活用。子どもたちの本も限定して置く​


コンクリート打ち放しのシンプルな外観。道路(写真左手)に面した南側にガレージ、敷地の中央に玄関を据え、細長い敷地を生かした


1階の洗面室と浴室。洗面室はポップな壁紙で明るい雰囲気に。壁からせり出し出窓のように仕上げた収納が重宝している。浴室の外にはコートがあり、窓を開け放てば湿気もこもらない


玄関。右側のスリット窓からガレージがのぞけるようになっている



Tさん夫妻のこだわり​

①Tさん念願のガレージ。風雨で車が傷むこともなく、整備作業にも集中できる。


②ダイニングを華やげるペンダントライト。手先の器用なTさんが組み立てた


【自立促す子ども室】
③将来2部屋に仕切れる子ども室にはあえてベッドや家具を置かず、布団で寝起きしている。「おもちゃを散らかしたままでは寝られない。布団の上げ下げは子どもたちで。お片付けも含め自分でやる習慣が身に付けばと」と夫人。

 

ここがポイント
公私分け動線短く

住宅が密集して建つなだらかな坂の途中にあるTさん宅。敷地の南北は道路に接し、東西には住宅が近接する変形地。東側に出っ張った一部は段差があり、駐車スペースとして活用するため、住居は間口約8メートル、奥行き約25メートルの細長い土地に建てる必要があった。

設計を手掛けた一級建築士の仲宗根将信さんは、
①間口の狭さを意識することなく快適に暮らせる間取りと動線、
②周囲の視線を遮りながら光と風を十分に取り込むこと、を重視して豊かな空間づくりを目指した。

①ではまず、道路に面した南側にTさんの希望したガレージを配置。その奥、敷地の中央部に玄関を据えた。1、2階ともに、玄関脇に設けた階段を挟んで北側にプライベート、南側にパブリックな居室を配置。「階段を境に公私をゆるやかに分けることで、家事、生活動線をコンパクトにしました」。

東に開けた景色を生かしながら風と光を取り込むため、LDKは2階南側に配置。②の観点から東側には掃き出し窓の大開口を設け、南、西側の窓は小さめに。外観のアクセントにもなっているリビング南側の出窓は、道路に面する部分はすりガラスを用いて視線を遮り、両サイドをガラス張りにして光を取り込む。

1階中央部には、ガーデニングや憩いの場としても活用できる中庭を設けた。中庭をコの字に囲むように夫婦室、水回り、階段を配置することで光と風を循環させる。

2階のキッチン横に設けた和室は小上がりにし、下部を収納に。キッチンの並びには家事室と物置、1階には倉庫と収納もたっぷり用意した。


[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども3人
敷地面積 :278平方メートル(約84坪)
1階床面積:74平方メートル(約22坪)
2階床面積:102平方メートル(約30坪)
建ぺい率 :36%(許容60%)
容 積 率:55%(許容160%)
用途地域 :第一種住居地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計 :三愛企画設計 仲宗根将信、大城勉
構 造 :与儀建築工房
施 工 :(有)沖忠建設
電 気 :(資)ゼネラル電設
水 道 :スイド建設(株)

[設計・問い合わせ先]
三愛企画設計
098-934-8530
http://www.sanai‐architect.com
写真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1583号・2016年5月6日紙面から掲載

 

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比嘉千賀子

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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