お住まい拝見
2021年5月28日更新
[沖縄・お住まい拝見]住まい小さく 車庫大きく|LITTAI space works
[さまざまな木で室内にぬくもり]
キャンピングカー用として6坪の車庫を設けるために新築した、名護市の幸地さん(61)。建物は21坪とコンパクトながら内装に木をふんだんに使い、屋外のテラスでは地域との良い関係を築く。
愛車のために新築
幸地さん宅
補強CB造/自由設計/家族3人
「キャンピングカー用のガレージが欲しかったから」と幸地さんが家を建てた理由は明快だ。2LDKの平屋にはキャンピングカーが余裕で入るガレージが備えられており、幸地さんの愛車がきれいに収まっている。
室内はさまざまな種類の木としっくいで覆われ、ぬくもりを感じる。ガレージの隣にあるLDKは、ラワン材の天井にチーク材の床、壁の一面にはレッドシダー(米杉)が使われている。そこに設けられた窓からはガレージの車も見え、幸地さんの顔もほころぶ。
LDKの南側には、庭に面したテラスがある。夫人(55)は「近所の人が野菜を持ってきてくれるときなど、ちょっとユンタクするときに重宝しています。屋外ということもあって、兄弟や友人、知人が気軽に寄ってくれるのがうれしい」と笑顔。テーブルやいすが置かれ、さながら第2のリビングだ。幸地さんも大きなシンメーナベでイカスミ汁やハイケイ汁を作るなど、腕をふるうことが増えたという。
外観。きれいに整えられたアプローチや庭には、ヒメキランソウやハクチョウソウ、ウインターコスモスなど小さい花を咲かせるものを中心に、夫婦の好きな植物がいくつも植えられている。建物の裏には菜園もあり、夫婦は「小さいけれど食べきれないほど収穫できるし、季節も感じられる」と楽しんでいる
ガレージ側から見たLDK。勾配天井になっており、左手のハイサイドライトを開ければ、効率良く風が抜けていく
気軽に立ち寄れる家に
北海道旅行でレンタルして以来、キャンピングカーに魅了された幸地さん。「キャンピングカーで日本一周」の夢を抱くようになり、「人生を後悔しないため」にキャンピングカーの購入を決意した。
しかし、車が大きくて以前の家の車庫には入らなかった。そこで家を売却し、近くの土地を購入して新築することに。夫人は「自由な発想をする夫だけど、良い方向にいくことが多いので反対しませんでした」と楽しんだ様子。
設計は、夫人が「木をふんだんに使った雰囲気が好きで、何度も見学会に通った」建築士に依頼した。長女(18)が巣立つことも見据え、「ガレージは大きく、住まいはコンパクトに」と要望した。
暮らし始めて1年半。コロナの影響により、日本一周にはまだ出発できていないが、庭や菜園で季節を感じたり、地域と交流を深めたりと生活は充実しているという。
夫人は「家の中を風が吹くように、誰でも気軽に立ち寄れる家であり続けたいですね」。おおらかな夫婦のもとに訪れる風は途切れることがなさそうだ。
寝室。脱衣室と浴室を寝室に組み込むことで、それぞれの廊下を省き、寝室のスペースを確保した。中央の扉を閉めると、完全なプライベート空間となる
ガレージ。長さ538センチ、幅192センチ、高さ229センチの大きなキャンピングカーが悠々と入る
ガレージ。奥には収納があり、アウトドア用品のほか、日用品なども収められている。年に1回、全部出して「要・不要」を分けることで整理している
ガレージの収納にはキッチンからもアクセスできる
大きな窓で明るいトイレ。ここも壁面に木を使った
ここがポイント
寝室に浴室で一挙両得
幸地さん宅の敷地は約70坪の、いびつな形をした変形地。その中で居住スペースとともに広いガレージも確保する必要があった。
そこで建築士の仲地正樹さんは、シンプルかつ機能的に部屋を配置。まず、6坪のガレージと水回りを西側に設け、居室部分への西日の影響を軽減させる緩衝帯とした。次に、日常的に過ごすLDKや玄関は南に開き、明るく居心地のいい空間に。
北東側には寝室。「朝日が気持ちいいだけでなく、直射日光で蓄熱するタイミングが朝しかないので、夜、眠る頃にはどの部屋よりも過ごしやすくなる」と説明する。
さらに、家族しか使わない脱衣室と浴室は、寝室の一部に組み込んだ。「脱衣室・浴室のための廊下を省き、その分、寝室を広くした。コンパクトな空間の中で公私を分けることにもつながった」
南から入った風は、LDKにある片流れの勾配天井を伝って、北側のハイサイドライトから抜けていく。また、天井の中には通気層があり、暖められた空気が自然に排出されることで、上からの熱の影響も軽減。夫婦は「夏場でも熱気がこもる感じは全然しない」と効果を実感している。
内装は夫人の要望で、木としっくいを多用。壁の一部には落ち着いた色合いのレッドシダーを使った。照明は「レトロっぽいものがほっとする」と夫人が選んだものを採用。収納にもこだわり、特にキッチンのカウンターは「持ち込みの家電などに合わせて作ってもらったので使いやすい」と夫人は喜んでいる。
テラス。靴を脱いだり、メンテナンスをしなくて済むように、デッキではなく土間にした
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人、猫2匹
敷地面積:232平方メートル(約70坪)
1階床面積:90平方メートル(約27坪)
建ぺい率:38%(許容40%)
容積率:38%(許容200%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:補強CB造
設計:LITTAI space works
仲地正樹
施工:長山建設
設備工事:(株)松電
◆問い合わせ
LITTAI space works
電話0980-51-9027
Instagram@littaispaceworks
撮影/矢嶋健吾 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1847号・2021年5月28日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。