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2019年11月22日更新
着工から1カ月半 200万円以上|気になるコト調べます![55]
建物の老朽化や、実家を2世帯住宅にするなど、近年、増加傾向にある建物の建て替え。その際にまず必要になるのが既存建物の解体工事だ。浦添市にある解体業者は、「一般的な一戸建てで、費用は200万~300万円ほど、着手から解体を終えるまでの期間は1カ月半~2カ月ほどかかる」と話す。
解体工事にかかる日数と費用の相場
内装から細かく解体 廃棄物は分別して処分
アスベストあれば時間と費用上乗せ
解体工事を手掛ける会社の担当者によると、解体工事は、現場調査から始まり、見積もり、工事と進められる。しかし、見積もりのあとすぐに工事が始まるわけではなく、家主は建物の中をカラにする、業者は市町村への道路使用許可手続きなどを行う必要がある。「家主が忘れがちなのが、電気やガス、水道を止めておくこと。特に電気とガスはもれると危険なので、各業者に連絡して、電線は建物からはずし、プロパンガスは撤去してもらわなければならない」
工事に入るとまずは、天井、壁、床などの内装材をはがし、躯体(骨組み)だけの状態にする。これは、資源の再利用を促進する国の方針に合わせて、木材や鉄、プラスチックなどをそれぞれ分別して処分するためだ。「部屋数や広さによって必要な日数は変わるが、30坪の平屋で約2週間。天井を張っていなかったり、コンクリート打ち放しの内装などであればもっと早い」
リノベーションなどで躯体を再利用する場合、ここで工事は終わる。費用は50万~100万円、部屋数によってはそれ以上かかるという。
アスベストが見つかった場合は、専門業者が除去するため、さらに時間と費用を要する。「築30年以上の建物の場合、量の違いはあるものの、アスベストが使われているケースが多い。費用は量によって異なり、20万~100万円程度。期間は1~2週間ぐらいかかる」
躯体だけになったら、2週間ほどかけながら、特殊な重機で少しずつ解体していく。コンクリートの中の鉄筋もできる限り分別するため、ソフトボール程度の大きさまで細かく砕く。1坪当たりの解体費用は1.5万~2万円ほどで、2階建てなど規模が大きくなれば、コストも上がる。
そのほか、塀や植栽などの外構の解体や、2階建て以上・隣家との距離が近い場合などは建物全体をシートで囲む養生も行う。「解体工事は1週間ほどでできると思っている人が多いが、実際には意外と時間がかかる。必要な費用や時間は、RC造でも木造でもそれほど変わらない」
狭い路地沿いは地域と協力を
注意したいのは、古い集落など、狭い路地にしか敷地が面していない場合。重機が入れず、手作業での解体になってしまうため、時間も金額も膨らんでしまう。予算内に収めることが難しく、あきらめるケースが多いという。担当者は「隣接する2・3軒ぐらいで一緒に解体すれば、重機が通れるほどのスペースができたり、費用が抑えられることもあるかもしれない」と話す。
また、意外と多いのが「どうせ壊すなら」と家具や家電を置いたままにするケース。「処分費用は施主が負担することになる上、時間もかかってしまう。施主自身で処分した方が費用も時間も節約できる」。つり下げ式照明のカバーなどもはずしておいた方が良いという。
庭の木を残したいという場合、庭と建物の間に重機が作業できるほどの十分な距離がない限り、掘り出して別の場所で保管することになる。「運搬費や保管場所代が必要で、木の本数や大きさなどによるが、数万~数十万円かかる」。そのため特別な思い入れなどがなければ、「解体よりも、新しく建てる家に費用をかけたい」と処分を選ぶ人が多いという。
最後に担当者は「解体業者を選ぶ際は、数社から見積もりを取ってから選んで」とアドバイスした。
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取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1768号・2019年11月22日紙面から掲載
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。