防災
2019年10月4日更新
何よりもまず119番|みんなの防災計画[7]
文・長堂政美
実際に災害が起こった時、どのような行動を取ればいいのかー。今回は救急・火災編。いずれの場合も、発見したら、まず119番通報することが大切だ。尊い人命と貴重な財産を守るため、救命措置と初期消火も同時に行う。
■災害が起こったら②(救急・火災編)
分担して通報・救命・消火
拠点出動体制
消防では、消防署や出張所などの待機している場所から火災・救急現場に向かうという「拠点出動体制」をとっています。
そのため、平常時であってもすぐに駆け付けることはできず、救急車の場合、現場到着時間は全国平均で8.5分となっています。
ましてや、付近が騒然となる建物火災なら、救急車よりも大型の消防車で出動することになり、到着するまでに時間もかかります。
自宅が火災に遭っている被災者からすると、消防車が来るまでの数分間が、1時間にもなるような感覚に追い込まれる事態となります。
1秒でも早く救急車や消防車が到着できるよう、傷病人や火災を発見したら、何よりもまず119番通報をしましょう。
深呼吸してから通報
大切なのは、万が一、119番通報をしなければならない事態に陥ったとき、付近にいる人たちが協力・分担して、「通報」「応急手当て」「初期消火」をすること。自分しかいなければ、通報後、消防署員の指示に従ってください。
11番通報する際は、まず、深呼吸を2回ほど行ってから落ち着いて話してください。過去の通報に「火事です。すぐに来てください」という言葉を残してすぐに電話を切ってしまうということがありました。これではかえって時間を要してしまいます。焦らずに、場所や状況などをしっかり伝えるようにしましょう。
■119番通報 ※火災や傷病人を見つけたら、ただちに通報する
①火災か、救急か、はっきりと伝える
②火災なら何が燃えているか(例:建物、車両、原野など)伝える
③救急なら、骨折、出血、呼吸していないなどの状態を伝える
④住所や番地、目標物などを確認し、できるだけ正確な場所を知らせる。「○○小学校の裏」など、近くに大きな施設、公園がある場合はそれも参考になる
⑤通報者の氏名、電話番号など連絡先を伝える
⑥移動しながらの通話はとぎれる場合があるので、立ち止まって話す
⑦車で走行しながらの通話は危険。必ず停車して通話する
⑧通話が終わっても、しばらくは電源を入れておく。消防から確認 のためにかけることがある
■救急救命
①心肺蘇生法や自動体外式除細動器(AED)の使い方など、応急手当ての方法を学んでおく(消防署で応急手当て講習 会を行っている=下写真)
②コンビニや公共施設などで、AEDが施設内のどこに設置されているか確認しておく。特に夜間でも使用できるコンビニは要チェック
③普段から、事故、急病などの現場に遭遇したときの手順をイメージしておく。地元の防災訓練に参加し、実際の現場を想定しながら応急手当ての体験をしてみるのも有効
④「呼吸をしていない」「今にも呼吸がとまりそう」という場に居合わせたとき
①救急車が1秒でも早く着くよう、直ちに119番通報する。「AED を持ってくる」「心肺蘇生法を行う」という手順も同時に行う必要 があるため、周囲の人に大声で応援を頼む
②救命措置の際、道路を走る車との事故など二次災害のおそれがな いよう周囲の安全を確認
③傷病者に近づき、反応(呼吸の有無、胸の動き)を確認して救命措置
④周囲に誰もいないときは、119番通報し、心肺蘇生法を行う。心肺蘇生法など応急手当てをするのが初めての人、または自信がないときは、119番を切らないで、消防署員から応急手当ての方法など指導を受ける(消防署では口頭指導という)。スマートフォンのスピーカー機能を使うと便利
■火災
①ホームセンターなどで消火器を購入し、自宅に設置する。万一、隣・近所で火事が起きたときに、それぞれの家庭から消火器を持ち寄って初期消火するのにも役立つ
②防災訓練などで、消火器の使い方を学んでおく=下写真
③出火したときに警報音などで 知らせてくれる住宅用火災警報器を設置しておく
④火災を発見したら、ただちに119番通報する
⑤消火器は初期消火のためのものなので、台所の一部やゴミ箱が燃えているときなどに使用する。炎が部屋中に広がるなど初期消火の域を超えていたら、危険なので、初期消火せずに安全な場所に避難する
⑥特異な例として「バックドラフト現象」がある。室内で火災が発生すると、酸素があるうちは火は大きくなるが、酸素が少なくなると 火は消えたようにくすぶった状態になる。このとき、出入り口を開けたり、窓を壊すと、酸素が一気に供給され、火が爆発的に燃焼する。これをバックドラフトという。外から火は見えなくても、素手 で玄関の扉や窓ガラスに触れ、熱ければ建物内の火は不完全燃焼状態でくすぶっているものと判断し、消防車の到着を待つ。特に近年の建物は気密性が高いため、不用意に扉などを開けないようにする
⑦炎が確認できず、煙のみが上がっている状態で、玄関が施錠していなければ、逃げ遅れがいないか大きな声で呼びかけてみる。人がいたら、火が大きくなる前に助け出すチャンスがあるかもしれない
ながどう・まさみ/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長 098-923-4442
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1761号・2019年10月4日紙面から掲載