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2016年5月6日更新

「日本らしく」帝国ホテル設計に込めた思い|ライトの有機的建築に学ぶ[1]

環境に調和する「有機的建築」を提唱・実践し、世界の建築界に影響を与えたフランク・ロイド・ライト。本連載では、ライト建築に詳しい建築家、遠藤現さん(50)が、気候・風土、生活に合わせた建築の考え方を紹介する。

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建築の真理「文化敬う」


ニューヨーク市の郊外に建つライズリー邸(1949年)森の中の傾斜地に溶け込むようなたたずまいは、自然環境との調和を唱えるライトの有機的建築を体現している/写真


今から100年ほど前、旧帝国ホテルを設計するために日本を訪れた一人のアメリカ人建築家がいました。20世紀建築界の巨匠と呼ばれたフランク・ロイド・ライトです。近代建築の主流である、世界中どこでも同じ様式の建物をつくるインターナショナルスタイルに対し、ライトはそれぞれの地域の文化や気候風土を踏まえた「有機的建築」を提唱し実践しました。
 

西欧の借り物に嘆き


ライトと日本建築の出逢いはシカゴ万博の会場に建てられた、平等院鳳凰堂をモデルにした日本館でした。障子や襖(ふすま)を開け放つことで、室内と外部が分け隔てなく連続する日本建築の空間は、若き日のライトを魅了し、その後の設計に多大な影響を与えたと言われています。

アメリカの広大な平原にふさわしい開放的な空間作りのヒントは、ヨーロッパの厳しい冬や、隣国の侵略に備えた窓の小さい閉鎖的な住宅ではなく日本建築にこそあると確信したのです。

来日したライトは西欧様式の建物が立ち並ぶ街並みを見てがっかりし、「日本には伝統的な素晴らしい建築様式があるのに、なぜ西洋の借り物の建築ばかり作るのか」と嘆きました。
 

神社仏閣の空間構成


一つの文化の中で、長い年月をかけて培われた様式には、その土地にふさわしい建築の真理が含まれていると考えたライトは、日光東照宮や京都などに足を運び、日本に古くからある建物を実際に見て、その設計意図を理解しようと努めました。

その成果が、中央にホール、手前に中庭があり、それらを包み込むように両翼に客室が展開される、まさに日本の神社仏閣の空間構成を持った帝国ホテルでした。

ライトはこのホテルは「日本の“ミカド”への捧げ物である」と述べて、日本文化への敬意を表したのです。




現在の帝国ホテルに展示されている模型/写真

 

[執筆]
遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

 
『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<1>
第1583号 2016年5月6日掲載

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