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2017年3月3日更新

架け橋のような曲線美|ライトの有機的建築に学ぶ[11]

アメリカ西海岸のサンフランシスコ市街からゴールデンゲートブリッジを渡り北上すると、丘と丘の谷間に橋を架けたような巨大な建物が姿を現します。ライト生涯唯一の公共建築がこの郡庁舎、マリンカウンティ・シビックセンターです。

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ライト唯一の公共建築 「マリンカウンティ・シビックセンター」

架け橋のような曲線美


建物は丘の間に架けた橋の様に見える。半円形の部分はオフィスの窓


90歳でなお第一線に

マリンカウンティ・シビックセンターを設計した1957年にライトは90歳を迎えましたが、前年にはグッゲンハイム美術館を手掛けるなど、その建築に対する情熱は一向に衰えを見せていません。
カリフォルニアの青空に溶け込むような色のかまぼこ屋根の下には、行政のオフィスが連なり、シンボリックにそびえ立つ黄金の尖塔は換気塔の役目を果たしています。
中央の丸屋根の下はドーム型の天井を持つ図書館で、そこを中心に建物は120度折れ曲がって、その先は裁判所になっています。
最上階である3階の、吹き抜けを挟んだギャラリーを建物の南端まで歩くと、丘の斜面一面に広がる花畑へと出ることができます。
吹き抜けの下の入り口階には植栽がありますが、ライトの原設計では天蓋が付けられていなく、自然の雨の恵みが植物を潤すように考えられていました。谷間に吹く強い風のため、現在ではトップライトで覆われています。


幻の設計 庁舎に名残り

同年,ライトはバクダッドでの設計にも取り組んでいて、その内容は劇場やプラネタリウム、美術館、野外市場、大学なども含んだ、都市計画に匹敵する広大なものでした。
ライトは現地でイラク国王とも面会しましたが、直後に革命が起きて政権が転覆し、美しい鳥瞰図まで完成していた計画は幻となってしまいました。遂に実現することのなかったバクダッドの建物は、同時期に設計されたこの庁舎のデザインにその名残りを見いだすことができるのです。
 


トップライト部分は原設計では開放されていた


入り口階の吹き抜けの下に設けられた植栽には、自然光が降り注いでいる



[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<11>
第1626号 2017年3月3日掲載

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