RC造編③ 魅力とメリット|構造のはなし[11]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

建築

2017年2月24日更新

RC造編③ 魅力とメリット|構造のはなし[11]

家づくりの代表的な構造体について、専門家が分かりやすく解説する。RC造編3回目は、RC造の魅力とメリットについて。建築士の根路銘安史さんは、「コンクリートの密度を高めるほど、強度と耐久性のある品質の良いコンクリートになります」と話す。

建築

タグから記事を探す

揺れ少なく強靭で安心


自由な形のコンクリート住宅。屋上緑化や、地面の高低差をうまく利用可能


大正時代に導入
沖縄のコンクリート建築は、大正時代に建築技手の清村勉によって導入されました。台風に強く耐火性がある事、木造に比べてシロアリの被害が無いことで、学校建築や公共質屋、役場等の公共建築から採用されていきます。その後は、戦後の米軍基地建設に携わった職人などによって、コンクリートは急速に、民間にも広がっていきました。

設計と施工の分離
米軍での発注システムは、設計事務所が図面を描き施工会社が施工し、現場の施工監理を設計事務所が行うというものですが、その設計施工の分離が民間の住宅でも採用されてきました。
そのため沖縄では、住宅を建てる時はほとんどが設計事務所に依頼します。県外の住宅は、工務店に依頼したり、ハウスメーカーの展示場にて住宅を選ぶことが多いようです。
その違いにより、沖縄の住宅は、オーダーメードな鉄筋コンクリート造が多く、いびつな敷地の形状や、高低差を建物で吸収するプランなど、自由な形が魅力とメリットになっています。また、車社会の沖縄では、家族に数台の車が必要となり、駐車のためのピロティが造れるのもコンクリート造のメリットです。さらに庭が造れない狭い敷地では、菜園や芝生の遊び場等として屋上緑化することも可能です。
やっぱり一番の魅力は、台風時の安心感です。木造や鉄骨造に比べて建物の揺れが少なく、気密・水密性があります。コンクリート住宅の強靱で安心なイメージが県民に根付いています。
しかし、コンクリートがまだ珍しかった昭和の中頃までは、石のお墓みたいなコンクリートの家には住みたくないというお年寄りも多くいました。コンクリート住宅は、蓄熱しやすく冷めにくく暑い印象が当時はあったと思います。
それでも今は、ルーバーや花ブロックなどで外壁を二重にすることで、室内に直射日光をいれない工夫や、通風の配慮、屋根や壁の断熱材、省エネガラスなど、熱を取り込まない省エネルギー住宅へと進化しています。

表現方法はさまざま
構造体の地肌を見せる打ち放しにも、普通型枠や塗装型枠、杉小幅板など、使う型枠の材料次第でコンクリート表面をいろいろなテクスチャー(質感)に変えられます。また、塗装や石、タイルを貼るなどすれば、自由な形、色、質感と、さまざまな表現が可能です。
この半世紀で、沖縄の建築物、社会基盤はコンクリートにより大きく変化してきました。これから私たちは、島しょ県としてのごみ問題や、自然環境問題、沖縄らしい地域性や文化を育む社会、景観等を考慮した住宅づくり、まちづくりへと取り組むためにコンクリートを上手に大切に使用する必要があります。


ピロティ住宅。アプローチとなるだけでなく、半屋外スペースとして駐車したり、多用途に使用される


屋上緑化住宅。花壇や菜園で植物や野菜を育て、芝庭ではアウトドアでのランチやお茶を楽しむ
 


ダブルスキン(直射日光や風よけのための二重の外壁)住宅。外壁と外皮の間にできたスペースは、物干しや室外機置き場、犬のスペースなど、サービスヤードとして利用

◇ ◇ ◇

執 筆 者ねろめ・やすふみ/アトリエ・ネロ代表。一級建築士、専攻建築士。高品質なコンクリートづくりに取り組む。

構造のはなし一覧


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1625号・2017年2月24日紙面から掲載

建築

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る