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2017年2月3日更新

らせん状の鑑賞空間|ライトの有機的建築に学ぶ[10]

フランク・ロイド・ライトが晩年に設計した、かたつむりのような渦巻き形の「グッゲンハイム美術館」はニューヨーク5番街の一角にあります。周りの四角いビル群と全く異なる印象を与えるその美術館は、奇抜なデザインを競う近代建築の先駆けといっても良いかもしれません。

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理にかなった渦巻き形「グッゲンハイム美術館」

らせん状の鑑賞空間


天窓のデザインが室内の壁面に美しい陰影を映し出している/写真
 

段差のない ゆるい勾配

白いかたつむりのような「グッゲンハイム美術館」の外観は一見、奇をてらったように見えますが、内部の空間構造から導き出された必然性のある形態であり、見た目が派手なだけの建物とは一線を画しています。
ライトは、大自然の造形に学ぶ有機的建築を信条としていましたが、この美術館の展示スペースは貝殻の中のように、らせん状に作られています。
来館者はエレベーターで最上層まで上がり、そこから全く段差のないゆるやかな勾配の床を歩いて、美術品を鑑賞しながら1階のロビーまで降りてくることができます。
ライトが意図したのは、都市の限られたスペースの中で、階段で各階を移動する必要のない、連続した鑑賞空間を創造することでした。
 

声や水音 優しくこだま

外光が柔らかく差し込む吹き抜けの下にあるロビーには、小さな噴水とベンチがあります。ベンチに腰をおろすと、噴水の水音とドーム状の天窓に反響した人々の話し声が、優しく館内にこだまして、いつまでもそこに座っていられるような穏やかな雰囲気を感じられます。
この建物の欠点を強いて挙げるなら、美術館自体のデザインが優れているため、生半可な美術品では建築に負けてしまうというところでしょうか。
独特の空間は映像作品のロケにも使用されており、映画「メン・イン・ブラック」「ザ・バンク堕ちた巨像」などにも登場しています。
開館から半世紀以上がたつ今日でも、この「グッゲンハイム美術館」は展示された芸術作品だけでなく、ライトの建築作品を鑑賞に訪れる人たちでにぎわっています。
 


対面が見えるギャラリーは、先にある展示物を期待させる演出効果もある/写真


渦巻きの外壁の角度は何度も変更され、その度に構造計算がやり直された/写真




[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<10>
第1622号 2017年2月3日掲載

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