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2016年10月21日更新

「道しるべ」つくる 建築家の守備範囲|楽しい!ものづくり 沖縄未来建築塾2016より⑦

去る9月21日、ホテルムーンビーチに泊まり込みで第4回沖縄未来建築塾を開催しました。講師は東京を本拠地にカンボジアの首都プノンペンにも事務所を構える川辺直哉さん(川辺直哉建築設計事務所代表)。氏の活動に際する多角的な視野・視点や、従来の建築家像を超越する価値観の在り方などについて話していただきました。

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第4回沖縄未来建築塾で、講師を務めた川辺直哉さん(左写真)、参加した生徒たちは川辺さんが今まで手掛けた建築物をスライドで見ながら話に耳を傾けた

◆不自由を楽しむ
平均年収が東京の10分の1程度であるカンボジアでは、規格品を少人数で取り付け施工する効率的な手法は対建設費の観点から好まれない。
人件費が安いため、例えばある床を施工する場合においては、カットされた自然石やタイルを一枚一枚、人の手で施工していく方が費用を抑えられ一般的だ。同様に壁についてもコンクリートブロックを一つ一つ職人(日雇いで働く人々)が積み上げていく。
また資材についてもカタログから選定した物が現場に準備されない(メーカー側が勝手に品番を変えてしまう)など、現場監理の中で苦慮することも多い。
だが、「ある意味、クリエーティブだな」と思う。限られた資材、工法に伴う不自由さを逆手にとれば、置かれた環境の中で何ができるのかをポジティブに楽しむことができるからだ。

◆「ローカル」と「グローバル」
「ローカル」と「グローバル」を考えたとき、多くの人はローカルを「地方」、グローバルは「世界共通」とイメージするだろう。
しかし、ある主体(個人・地域)の土着性・独自性を評価する場合、それはローカルともグローバルとも成り得る。主体の立っている状況により、相互に入れ替わり、混ざり合い、変化するものだと、海外で仕事をするうちに分かってきた。

◆建築に至るまでの道を「建築」
とあるまちづくりワークショップに参加したときのこと。建築家にとってものづくりの主体はクライアント(この場合は参加者)であり、意義や興味、目的を明確に保持するためには、参加者の主体性が不可欠となる。
ワークショップの進行役として建築家の存在がある訳だが、なぜ私(建築家)が呼ばれたかを考えた。ハウスメーカーに「図面をもらう」ことが家づくりだと思っている人々の固定観念を打開することがミッションだと思った。
「無」から形のあるものを生み出すのは非常に時間や力を使う。参加者への負担を減らすため、町に呼び込みたい人物像を仮設定して、どういう施設や建物が必要か考えてもらった。
「何がいいのか?」「何を大切に考えるのか?」など船頭として導き出し、各参加者の意図をくみ取りながら課題の所在を明らかにしていった。
建築家はコミュニケーション力とともに、ニーズをくんで「道しるべ」を提示するためのコントロール力とデザイン力が必要。
それを踏まえ、「建築家は活動(業務)プロセスも建築しなければならない」ということを伝えたい。


(公社)日本建築家協会(JIA)沖縄支部 文・美濃 祐央(建築家)教育研修・実務訓練委員会委員
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1607号・2016年10月21日紙面から掲載

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