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2016年8月19日更新

気候・立地・素材 適した選択に苦慮|楽しい!ものづくり 沖縄未来建築塾2016より⑤

建築家の育成を目的にことし6月から開かれている「沖縄未来建築塾」(主催/日本建築家協会沖縄支部)2回目の授業が7月26日、那覇市久茂地の総合資格学院沖縄校で開かれた。沖縄建築賞の正賞受賞者やコンペ経験の豊富な建築士が受賞作品を通して、これからの沖縄建築について語った。


若手建築士や、その卵らは先輩たちが手掛けた作品の話に熱心に耳を傾けた

◆夕日眺めつつ 西日対策
蒲地史子氏「名護城公園ビジターセンターSubaco」

名護湾を望む展望台の全面改修の依頼。夕日を眺められる癒やしのスポットにするため、沖縄の強い西日を受けながらも快適な空間を造ることがカギとなった。
対策の一つは、西側と南側は複層ガラスを入れて暑さ対策をすること。また、午後の強い日差しを遮るため縦スリットの再生木可動樹脂ルーバーを入れた。樹脂ルーバーは台風時に窓を守る役割も果たす。
外壁は焼き杉にした。時とともに変化していくことが自然と調和することだと考えた。
「Subaco」の仕事はコンペに勝って得た。通常の業務で自信を得るのは難しい。コンペに勝ったことは自信につながった。通常の施主との仕事とは違い、要望が少し遠いところにあって環境や構造などいろいろなことが客観的に見られるのが面白かった。

◆深い庇と大きな開口 低気密な家
畠山武史氏「海をのぞむ家」

自宅を建てるにあたり、東側に海が見える敷地を生かして東西方向に平行な間取りにし、東側に大きな開口を設けた。開口の両側にはあえて壁を設けて、海以外の余分な景色を切り取った。
ダイニング、リビング、テラスはひと続きながら高低差を設けて、それぞれの場所から海の景色を邪魔しないようにした。違うレベルでの景色が楽しめるし、高低差があることで空間に広がりが生まれる。
この家は一切断熱材を使っていない。深い庇で西日を遮り、大きい開口で積極的に風を取り込んでいる。さらに天井を高く取って屋根からのふく射熱が人に達しないうちに、風で外へ押し出されるようにした。
低気密ゼロ断熱の家だが、住み心地はいい。昔の木造瓦屋もそれに近いと思う。今後の沖縄の建築のヒントになるのではないか。

◆薄いコンクリートで境界面軽く
細矢仁氏「まんまる子どもクリニック」

沖縄に来た当初はコンクリートだらけということに驚き、ここにしかない街並みの面白さを感じた。ただ、建物の素材として、コンクリートは厚い。境界面を重く感じることがある。
ならば薄くしてみようと、那覇市宇栄原の「まんまる子どもクリニック」では超薄肉PC(プレキャストコンクリート)を使った。壁が薄くなれば、境界面が軽くなるし空間を広く使える。外と中の仕切りも薄い方が、軒下やアマハジなどの中間領域が生きてくる。古いものに新しい素材を混ぜることで新しい平面や風景ができる。
僕は今まで、さまざまなコンペに挑戦してきた。勝てなくてもアイデアはたまっていく。引き出しができていく。それが次の依頼へつながると思う。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1598号・2016年8月19日紙面から掲載

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