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2016年12月2日更新

ひし形基調に祈り表現|ライトの有機的建築に学ぶ[8]

ライト後期の様式である「ユーソニアンスタイル」は、正方形など一つの形を基準にプランを作り上げます。1951年に竣工したユニテリアン教会は、ひし形を基準に「祈り」を表現。光と影にまで演出が効いた、珠玉の建築物です。

差し込む光 映る影まで計算「ユニテリアン教会」

ひし形基調に祈り表現


会堂のシルエットが芝生の緑の上に映ることもライトの演出の一部/写真

 

合掌模した勾配屋根

ユーソニアン様式では平面図に多角形の補助線を日本の畳割りのように引いて、それに沿って壁を配置します。ユニテリアン教会では一辺4フィート(122センチ)の正三角形を二つ組み合わせたひし形が用いられています。
建物の中心となる会堂には、ひし形の先端部分にガラスが60度で組み合わされた高い開口部があり、その上に急勾配の屋根がかけられています。
のちにライトはその著述の中でこの造形を、祈る時に合掌した手を模したものだと解説しました。
こうした屋根形状とすることで教会建築に付き物の尖塔が不要となり、緩い高低差のある敷地と一体の単純で美しい外観ができあがったのです。
 

信徒の心通わす仕掛け

会堂の内部は大きな窓を背にして牧師の講壇があり、その後方には反響板を頭上に取り付けた聖歌隊のロフトがあります。
会衆席のベンチは全て正面を向かずに60度で対面していて、お互いの顔を見ながら礼拝ができ、信徒たちの一体感を高める配置となっています。
ユニテリアン派の活動初期から参加していた両親を持つライトもまた教会員の一人で、新しい教会の建設費を集めるための講演を自ら行いました。
建物の壁面を彩る石積みは、信徒たちが48キロも離れた石切り場から運んできたものです。
アプローチである駐車場側の軒先は頭をぶつけそうなほど低く、こうべを垂れて敬虔な気持ちで会堂に入ると、勾配天井の先にあるガラス窓から厳かに光が差し込んできます。見事な演出は、まさにライトの独壇場であり、地域の人々の祈りの場にふさわしい空間を創出しています。

 


会堂内部は北向きの窓からの外光によって柔らかく照らされる/写真


建物全体は東西方向に延びて、西側の教室や牧師室へと続く/写真
 




[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<8>
第1613号 2016年12月2日掲載

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