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2016年10月7日更新

量産化と美しさ兼ねる|ライトの有機的建築に学ぶ[6]

現代建築にも大きな影響を与えるアメリカの建築家フランク・ロイド・ライト。「落水荘」以降の後期に手掛けたのが、ローコストかつコンパクトな「ユーソニアンハウス」だ。価格を抑えるため材料や工法に工夫を凝らした。

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寸法や工法を統一 「ユーソニアンハウス」

量産化と美しさ兼ねる


道路から見上げたライズリー邸。敷地の傾斜に沿って建てられ、周囲の景観に溶け込んで見える/写真



新婚のライズリー氏が夫人と共にタリアセンを訪れたのは1950年のこと。少ない予算に恐縮する二人でしたが、ライトは新居の設計を快く引き受けます。
建物は予算に合わせて最初に必要な部分だけを建て、子どもたちが生まれた後に子ども部屋が増築されました。
「ライトさんは世間で言われている傲岸不遜なイメージからは程遠く、親身になって我々の相談に応じてくれた」とライズリー氏は語ります。

 


大きな暖炉のあるライズリー邸のリビング。窓際の間接照明が天井を柔らかい光で照らしている。/写真

 

ローコストな住宅

日本での仕事を終えた1920年代から、ライトはより広い社会層に向けて住みよい住環境を提供しようと、「ユーソニアンハウス」というまったく新しい様式を実践し始めます。
それまでの「プレーリーハウス」が比較的裕福な施主を対象としていたのに対し、ユーソニアンハウスは材料の寸法や工法を統一して、施主自ら工事ができる工夫がされました。建物を支える板張りや石積みの壁は、そのまま天然の仕上げ材となり、近代的な量産化やローコストも見据えながら、デザイン的な美しさも兼ね備えています。
来日する以前から、ライトは畳割りのように1辺120センチの正方形を基準として平面を計画していましたが、日本建築を間近に見たことでその確信を深め、帰国後は全ての図面に正方形の基準線が引かれるようになりました。またライズリー邸のように正三角形や、その発展形であるひし形、正六角形を基準としたプランも作られています。



外部のテラスから眺めた外観。深くて低い軒が、大地と一体となった印象を与えている/写真

 

今でも快適 ライズリー邸

ニューヨーク市街から北へ車で小一時間ほど走った森の中で、今でもライズリー氏はライトが設計した自邸に暮らしています。
ユーソニアンハウスは全米に200棟近くが建てられ、ライトが作り上げた理想の住環境の快適さを物語るかのように、その多くが現役の住宅として人々が実際にそこで生活しているのです。

 


[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<6>
第1605号 2016年10月7日掲載

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