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2025年1月17日更新
所有不動産の情報を書き残す「住まいのエンディングノート」|全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部
空き家が増加し、社会問題にもなっている。所有する建物を空き家にしないためには「この家をどうしてほしい」のか、子や孫に伝えることが大切。その一助となるのが「住まいのエンディングノート」の活用だ。同ノートの内容などを全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学事務局長に聞いた。

書くことで状況を整理
親から譲り受けた家や土地だが「仏壇だけが残る家をどうすればよいのか…」「売却したいけど、よく知らない人と共有名義になっているみたい」など扱いに困っている人は多い。
そんな中、「不動産」に特化したエンディングノートが続々発行されている。一般的なエンディングノートより、所有不動産(土地・住まい)の情報を書く欄が充実していたり、相続系の制度が紹介されていたりする。
昨年6月には、国土交通省・日本司法書士会連合会・全国空き家対策推進協議会が、無料でダウンロードできる「住まいのエンディングノート」を作成した。山入端さんは「不動産の情報を記入できるだけでなく、関連する制度や法律の情報も豊富で、専門団体ならではの内容。書いてみることで自分の所有する不動産の内容や、将来的にどうしてほしいのか、そのためにはどんな資料や手続きが必要なのか、頭を整理したり、家族と話し合ったりするきっかけになると思う」と話す。

思いを次世代に伝える
同ノートは、所有不動産の所在地や共有者の氏名・連絡先、その不動産を貸している場合は借り主の氏名・連絡先などを記入できる。また、その不動産を「どう処理したいか」という欄があり「除却・売却など自由にしてよい」「貸すのは構わない」「その他」などの項目にチェックを付けて意思表示できる。
「沖縄は先祖代々の土地や建物を持つ人も多い。それを自分の一存だけで処理するのは難しい場合もある。先代が思いを明確にしておけば、子や孫も助かるはずだ」と山入端さん。
ほかにも、住宅ローンなどの借入金や家財について記入する欄や、家系図の記入欄もある。「親戚が多い沖縄では、家系図は重要ポイント。書くことで、相続人や共有名義人などとの関係が把握できる」。親に書いてもらうのが難しければ「『私のエンディングノートを書きたいから、いろいろ教えて』というスタンスならハードルが下がると思う」とアドバイスする。
大事なのは「早めに書くこと。頭も体も元気なときにという意味もあるが、収入があるうちの方が、取れる対策が多い。思い立ったが吉日。エンディングノートを書きながら状況を整理し、相続の準備を始めてほしい」と力を込めた。
住まいのエンディングノートの内容

相続において、家系図は大切だ。特に沖縄は、「親戚付き合いが密接で親族も多い。だが、若い世代はつながりが薄かったり、世代間でギャップも出てきている。だからこそ、しっかり書き残しておくことをすすめる」と話す。

山入端さんが「ここも重要」と語る項目が「諸条件」の確認。諸条件とは「隣地境界・越境物など、近所の人と申し合わせ事項がある」「建て替えについて制約がある」などで、売却したり、建物を建てるときにトラブルになりやすいポイントだそう。しっかり確認しておこう。

所有または借りている土地や建物の情報を記入できる。普通のエンディングノートに比べて、共有者の名義や連絡先、貸主の名義や連絡先など細かく記入できるのが特徴だ。
県内の空き家件数と空き家率の推移

総務省が5年ごとに発表する「住宅・土地統計調査」によると、県内の空き家は増加を続けており、2018年には6万7900戸だった。空き家率は10.4%で、10件に1件は空き家という状態だ。
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国土交通省、日本司法書士会連合会、全国空き家対策推進協議会が作成した「住まいのエンディングノート」。所有する不動産の情報を記入できるほか、住まいに関する制度などが掲載されている。国土交通省のホームページからダウロードできる
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000054.html
教えてくれた人

やまのは・まなぶ/1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
取材/徳正美
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2037号・2025年1月17日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。